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日本MMA VS 世界

先週の日曜日に超RIZINとRIZIN38が二部構成で開催された。

メインとなる試合の結果はどれも多くの人が予想していたものと同じようなものになった。

それは同時に日本のMMAが世界に対抗出来るだけのクオリティを保てていないことの証明にも繋がるものだった。

キム・スーチョルVS扇久保博正では過去にTUFで準優勝している扇久保が、敗戦という結果ではあったものの他団体のチャンピオンを相手に質の高いMMAの試合を行なっていた。

ただやはりそれでも全体的な試合内容を顧みると、世界の壁を痛感せざるおえないものだったと思う。

しかしそれ以上に技術力の差を感じたのが、RIZIN38のメインイベント、「堀口恭司VS金太郎」だった。

技術力の格差 

「史上最強のメイドインジャパン」と呼ばれる堀口恭司は日本を代表する総合格闘技のスターだ。その実績は言うまでもなくトップクラスである。

また、それに加えて彼は世界のMMAの発展を体現する象徴でもある。

ATTに拠点を移してから長い間最高の環境でMMAの練習を積み上げて来た堀口恭司が同じ日本人の選手と対戦することで世界との差がより明確に浮かび上がってきた。

対戦相手の金太郎は直近の試合では思うような結果を出せていないが、フィジカルと強力な打撃を武器とする身体能力の高いタイプの選手だ。

なので当然組み力も強くテイクダウン際の攻防での強さや倒れた後に起き上がるスピードの速さなどにも優れた面がある。

それは組技の練習に力を入れ始めてから尚更良くなっていった。

しかし世界側に立つ堀口恭司にそこは何一つ通用しなかった。

今回金太郎は堀口恭司をよく研究し、一番の武器であるストライキングで勝負を仕掛けてフラッシュダウンを奪い一瞬だけその可能性を見せた。(あれは堀口恭司の打たれ弱さが悪化しているせいにも見えた)

しかし、MMAという点では話にならないくらいレベルが離れていた。

というのも金太郎はテイクダウンされてからガードポジションを維持する間もなくマウントポジションを取られている。

1ラウンド目は早めに立てたが、2ラウンド目もタックルに対応出来ずテイクダウンされると、あっさりとマウントのポジションまでパスされた。

そしてパウンドで腕を上げさせられると素早く肩固めの形に入られて、あっという間に極められた。

指導者と競技の融合

金太郎も国内の選手が相手だったらあんな簡単に極められることはなかっただろうし、まずあの展開にすんなり持ち込ませることは出来ないだろうと思う。

それだけ世界レベルの堀口恭司と国内で活躍する金太郎との間には技術的な差があった。

かつて堀口はATTへ移籍する前に日本のトレーニング環境では柔術・レスリング・空手など、それぞれの競技をしっかりと身につける為には、それぞれに練習するジムを変えなくてはならない不便さがあると語っていた。

ATTではそれが一箇所にまとめられていて、それぞれに専門のコーチがついている。しかもそれが1人ではなく複数人いるので、より質の高い練習を得ることができる。

しかし、今の日本にはその環境も各スキルを専門的にコーチングする指導者の数も足りていない。

もし日本にもATTのようにそれぞれの専門的なコーチが多く在籍するジムがあって、MMAの様々な局面をピンポイントに吸収出来る環境があったら技術力は大きく向上していただろうと思う。

ただ、その為にはスペシャリストを業界から引き抜いてそのコーチングだけで生活できるだけの資金的なサポートをする力が必要になる。

しかし海外に比べると日本では総合格闘技自体の人気がそこまで高くないので、MMAのマーケット規模も小さく、それを実現するだけのマネージング能力も乏しい。

なのでそれぞれのジムがそれだけの対応を取ることは非常に難しい。

けれど多くの格闘技技術を習得し混ぜ合わせ、総合的に調和の取れた選手が力を持つ総合格闘技において、各競技が融合した環境は必須になる。

それが準備できないと世界との実力差は大きくなっていく一方になり、RIZINでも外国人選手に各階級を食い荒らされていくような状況になるだろう。

ただそれは一朝一夕で用意できるような体制ではないので、一度は海外勢の波に飲まれるという事態がやって来ると思われる。

そのような状況下でも、現在少しずつ若い日本のファイターが世界に向かって羽ばたいているので、国内のMMAを育てる環境にも徐々に革新的な向上を取り入れ、更なる成長を促して欲しいと思う。



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