銀座の恋の物語 5
薄暗い通路のぼんやりとした人影・・・
「あっ!?」と声を上げた片野だった。
片野 「俺も ちょっと行ってくるね!!」
俺 「知り合いなの??」
片野 「うん・・・・」
そう言って 立ち上がった彼・・・
結構 慌てているようだった。
「あの人 知ってる???」
隣に座っているアケミちゃんに聞いてみた。
アケミ 「ええ・・・ 片野さんの会社の社長さんよ!!」
俺 「えっ!?」
(世界有数の金属メーカーの社長さん???)
どおりで焦る訳だ。
俺 「あの社長さんも この店に良く来るの??」
アケミ 「はい! 役員クラスの方が良くいらっしゃいます」
さすが 王家の谷・・・、客も上級??? ぶひょ!
アケミちゃんとの話もそぞろに 片野達の様子を窺う俺なのだった。
初めは社長が小声で片野に囁いていた。
それに頷く片野・・・
そのうち表情が和らぎ 笑顔に変わった。
彼にとって良い話だったらしい・・・
その間 5分ぐらいか?
丁寧に頭を下げながら社長を見送っていた。
ニヤニヤしながら戻って来た片野・・・
俺 「あの人 社長さんだって?? 何かいいこと言われたの???」
片野 「うん まあ・・・」
俺 「トップシークレットか???」
片野 「そっ そうだな・・・ 社外秘だな!! ガハハハハハハ・・・」
その後・・・
またママも戻って来て エジプト話に花が咲いたのである。
で その数か月後・・・
ネットの経済ニュースに片野の記事が有った。
次期社長に片野氏!!
30人ぐらいの役員達の中でトップ5のポジションだったのだが、社長がホールディングのトップに移るのに伴い 片野が社長に抜擢されたのだった。
異例の昇進!??
もしかして・・・ あの時の立ち話は???
昇進の打診だったのでは・・・???
俺は たまたま行った『王家の谷』で 『島耕作の世界』の一場面に立ち会ったのかもしれない。
(完)
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