【ご挨拶】モヨ・チルドレン・センター代表就任に寄せて
日頃よりモヨ・チルドレン・センターをご支援いただいている多くの皆様、温かいご支援とご協力に心より感謝申し上げます。
この度、モヨ・チルドレン・センターの代表を務めさせていただくことになりました「佐藤南帆(なみほ)」と申します。
代表就任にあたり、まず、モヨ・チルドレン・センター会長、故・松下照美さんへの心からの敬意と感謝を込めて、ここに想いを綴らせていただきます。
モヨの会長・松下照美さんは2022年2月15日、天国へと安らかに旅立たれました。76歳でした。
2020年に肺がんが発覚。長年活動していたケニアを一旦離れ、日本で闘病を続けておられました。最期は日本のホスピスにて妹様に寄り添われ、苦しむことなく息を引き取ったとのことです。
照美さんは1999年にモヨ・チルドレン・センターを創立し、20年以上ケニアの子どもたちに寄り添い、居場所を作ってこられました。
「ケニアの子どもたちと生きる」と覚悟を決め「いつかケニアに必ず戻る」と癌と闘っていた照美さん。
ホスピスのベッドの上で、モヨの子どもたちやスタッフを想い続ける姿を想像するだけで胸が張り裂けそうなほど痛くてたまりません。
正直なところ「モヨ・チルドレン・センターのために」と何か手を動かして仕事をしていないと心が折れそうです。あまりにも衝撃が大きく、想像していた何倍よりもつらく、悲しく、虚しく、少し止まって考えると涙が溢れてきます。
でも、止まっているだけでは何も進みません。悲しみに明け暮れるスタッフや子どもたち、私の姿を見て、照美さんはきっとこうおっしゃるでしょう。
「せっかく生きているんだから、一生懸命生きなさい」
だから私たちは前に進みます。照美さんの想いと共に。
前置きが長くなってしまいましたが、ここからは代表に就任した経緯、そして僭越ながら私の想いを綴らせていただきます。
少しでも多くの人に想いが届き、モヨ・チルドレン・センターを知っていただくきっかけを作ることができますように。願いを込めて記します。
長くなってしまいそうですが、どうかお付き合い下さい。
自己紹介
僭越ながらまずは、私自身について簡単に自己紹介をさせていただきます。
引き続き、RAHA KENYAでお仕事をさせていただきながら、モヨ・チルドレン・センターの代表の責務を遂行してまいります。
ケニア発のアパレルブランド社員として事業を展開しながら、モヨ・チルドレン・センターでソーシャルセクターの活動に還元していきます。
ビジネスと非営利活動、両輪を回しながら人生を進んでいきます。
照美さんとの出会い
照美さんと出会ったのは2018年6月のことです。
「ストリートチルドレンのサポートがしたい」と18歳の頃に描いた夢に、自分なりに近づいてみようと思い、ご経験がある多くの方々にお話を聞く中で、照美さんをご紹介いただきました。
日本で開催された照美さんのご講演で、モヨの活動を知りました。
講演が終わり、体は自然に松下さんの元へ。「ぜひ現地を訪問させて下さい」とお伝えしました。後日、仕事の調整をし、有給10日間を取得。メールで照美さんにご連絡すると「メール拝受。チケットを抑えて下さい」と連絡をいただき、すぐに航空券を予約しました。
そして、講演から3ヶ月後の2018年9月、導かれるようにケニアへ。モヨに到着し照美さんにお会いしました。
モヨに関わり続けると決めた日
初めてのモヨの訪問。たった10日間の滞在ではありましたが、衝撃と感動で心が震える日々でした。
ストリートでシンナー中毒となった子どもを保護。シンナーで視点が合わず、呂律の回らない幼い子どもにシャワーを浴びてもらい、綺麗なお洋服を渡し、ご飯を与え、温かい寝床を提供します。そして生活背景を情報収集するスタッフ。
小学校で性的な問題を起こし、児童局からの勧告で、別の更生施設で暮らすことになってしまった子どもを送り出す照美さんの涙。
ある子どもにはレイプ癖があり、若い女性は性的対象になりかねないから言動全てに注意をするようにご助言いただくこともありました。
全てが衝撃的でした。
一見、無邪気で天真爛漫な子ども達の生活背景には、想像もできないくらい深く暗い過去があると知り、溢れ出しそうになる涙を堪え、耳を塞ぎたくなることもありました。
10日間の滞在で一番印象的だったのは、モヨの卒業生 "C"の来訪です。
Cは当時、かねてからの夢だったサッカー選手になり、奥さん、子どもを授かりました。結婚の報告と祝賀会でモヨを訪れていました。
祝賀会で彼が言った言葉が今でも鮮明に覚えています。
「僕たちは暗い過去を持っている。でも過去を忘れて前を向いて生きていこう。それを教えてくれたのは照美さんだ」
力強いCの言葉に涙ぐむ照美さんの姿が今でも忘れられません。
暗い過去が原因でトラウマを抱える子たちや、問題行動を起こす子どもたちが、時には照美さんやスタッフの頭を悩ませることも多々あります。
そんな子どもたちに深い愛を注ぎ続け、母として教育者として根気強く、ひたすらに寄り添っている照美さんの志に衝撃を受けました。
「モヨと関わり続ける」と心に誓ったのはあの日でした。
自分にできることを
モヨへの初訪問から帰り、まず行ったことは、考え得る私にできること全てを照美さんに提案するということでした。
ウェブサイトの改修、SNSアカウント作成、照美さんの日本行脚中の移動手段やホテルの予約、日本での講演会企画...など、ただただできることは何でもやらせていただきました。
今考えたら、非常に鬱陶しかったと思います。「何かできることを!」と言いつつ、照美さんの仕事を増やしてしまうこともあったかもしれません。
それでも、照美さんはいつでもとても丁寧にメールのお返事を下さり、ご指導下さいました。
当時、照美さんのFacebookにこんな投稿があったのを思い出します。
非営利組織の運営や子どもの自立支援の経験はゼロ。看護師だったのにも関わらず、小児科の経験は短期間の実習程度しかない私。
「経験もない小娘が何をふざけたことを言っているんだ、現場のことなんて何も知らないくせに」と思われても仕方なかったと思います。
何の役にも立てない私の意見を取り入れ、何もできない私に「ありがとう」と何度も言ってく下さり、導いて下さりました。
その後、2019年9月に再び有給を取得し、2週間程度モヨを訪れました。2度目の訪問で、看護師を辞めることを決意しました。もっともっと長期間、モヨで学ばせていただきたいと思ったからです。
「念願のNGOでの長期的な活動ができる!」と意気揚々とモヨへ戻りました。しかし、照美さんが信念を貫き、どんなことがあっても受け入れ、力強く活動する姿をみて、「私にはそんな覚悟はあるだろうか」「自分の人生を捧げて打ち込めるのだろうか」と自信を失ってしまいました。
結局、モヨの現地は一旦離れ、RAHA KENYAでお仕事をさせていただくこととなりました。
「あなたがワクワクすることをやりなさい」
と、RAHA KENYAでお仕事するきっかけをくださったのも照美さんでした。
RAHA KENYAで働かせていただくことになった経緯を記したのはこちら▼
短い間、モヨを頼みます。
2020年6月、ケニアで肺癌が見つかった照美さん。コロナ禍で世界が騒然とする中、日本に緊急帰国し、精密検査を受け、将来ケニアに戻り子どもたちと暮らすため、日本で本格的に治療をすると決断をされました。
そして、治療の合間の2020年11月〜2ヶ月間、今後に向けてモヨ関係者の方々と諸々のご相談をするため、そして子どもたちとの時間を楽しむため、ケニアでのひと時を過ごしました。
私は2020年4月〜2020年11月にコロナウイルスの影響で日本に帰国をしていましたが、同年12月にケニアに戻り、RAHA KENYAスタッフとしてナイロビでの仕事を再開しておりました。
照美さんがケニアに戻っていた2ヶ月間にモヨに伺い、お話しをし、照美さんから「私がケニアに戻ってくるまで、現地にいるなみほさんに会計管理を頼みたい」とご依頼をいただきました。
照美さんがいない間、モヨは現地のケニア人スタッフが現場を運営します。しかし、大切なご寄付を扱う会計管理だけは、現地スタッフにお願いすることはできないと照美さんがご判断されたのです。
照美さんが治療に専念するため、日本に一時帰国された2021年1月から、モヨの会計管理を担当させていただくこととなりました。現地スタッフも、支える会代表の高塚さんも全面的に協力してくださりました。
ケニアでRAHA KENYAのお仕事をしながら、少しでもモヨの近くにいることができる。そして大切なお仕事を任せていただける。すごくありがたいことでした。
そして、子どもたちとスタッフといつも照美さんを祈り、想い、帰りを待っていました。
音信不通
照美さんは日本に帰国し、外来通院にて様々な治療に挑戦しておりました。
治療になかなか効果が見られず、2021年10月、照美さんの緊急入院が決まりました。
入院してからも照美さんは1本の指でパソコン操作しながら、ご支援者や役員会の皆様、現地スタッフにご丁寧なメールを送り続けました。そして、体調の良い時にはzoomをつないでミーティングをできるほどでした。
2021年11月、照美さんからのメールの返信が途絶えました。
化学療法の副作用が強くなり、パソコン作業が難しくなってしまったのです。それ以降、ご家族とこまめに連絡を取らせていただきながら、照美さんの状況をお伺いしていました。
「きっとすぐに良くなる」
と言い聞かせ、スタッフや子どもたちと祈り続けました。
あなたならできるよ。
照美さんがパソコン作業が難しくなってから、今まで照美さんがされてきた事務作業の諸々を私の方で代理で務めさせていただくこととなりました。
これからのモヨはどうなるのか。
照美さんはどんな想いでいるのか。
とても不安で、どうしていいかわからず、ただただ祈る日々。
「でもこのまま一人で悶々としていてはだめだ」とご家族にご相談をし、短い時間でもいいから、照美さんの想いを聞く時間をいただくことになりました。
こんなことを聞いていいのだろうかと戸惑いと緊張の中、照美さんとの電話をしました。
聞きたいことは以下2つ。
1. モヨ・チルドレン・センターの今後について照美さんが思うこと
2. モヨ・チルドレン・センターの運営について、私に対してどのくらい関わってほしいと思っているのか
私が投げかけた問いに対して、照美さんからのきっぱりとした答え。
1. モヨを大きくしたい訳ではないけど、長く続けられるようにしたい
2. 南帆さんに代表をやってもらいたい、人生をかけて関わってもらいたい
という言葉をいただきました。
迷いが、覚悟に変わる瞬間でした。
未経験で未熟すぎる私がモヨと関わっていいのだろうか...
ケニア人ではない私がモヨと関わることは正解なのだろうか...
私には何ができるのだろうか...
でも、関わり続けたい。
そんな迷いや葛藤がスッと消えました。
「あなたならいけると踏んでいるから。あなたなら大丈夫」
そんな力強い言葉をいただきました。
その後、緊急の役員会が日本で開催され、役員の皆様も快く承認下さいました。
こんなにも力不足な私を信じてくださる照美さん、ご家族の皆様、役員の方々がサポートして下さること、ただただ光栄で嬉しく、心の中で燃えていた小さな炎が、また大きくなったような気がしました。
残酷な現実
2022年2月15日、明け方朝4時ごろ目が覚めました。携帯を見ると、照美さんのご家族から照美さんの訃報を知らせるメールが入っていました。
しばらく、時が止まりました。
ただただ呆然とし、胸が苦しく、どう呼吸をしていいかもわからないほど、大きく深い衝撃でした。
照美さんのご様子はご家族からお伺いしていたので「先は長くないかもしれない」と覚悟をしていたつもりでした。でも、一方で、あの照美さんなら突然すっかり良くなって「ケニアに戻る飛行機を取ってください!」と意気揚々と依頼してくれるかもしれない、という期待もありました。
想像していた何百倍も事実は残酷で、悲痛で、虚しいものです。
立ち止まって深く考えてしまうと、心が深くえぐられるような気持ちで、自然と溢れてくる涙。目の前にあるやるべきことをやっていないと、心が折れそうです。
「モヨのために」と、今目の前にあるやるべきことをやる以外に悲しさを紛らわす方法はありません。
2022年2月19日。当初よりモヨ・チルドレン・センターの年次総会を開催する予定でした。そして、照美さんはその総会への参加を目指して、ケニアに帰りたいとおっしゃっていたのですが、それは叶いませんでした。
そして、創立者照美さんが不在の中、モヨの年次総会が開かれました。そして、役員会議長より
「照美さんのご遺志に従い、佐藤南帆をモヨ・チルドレン・センター次期代表に承認する」
と宣言をいただきました。
これからの未来に向かって
ここ数ヶ月、照美さんの仕事を少しずつ引き継がせていただき、モヨに関わる方々にご挨拶をするたび、照美さんが為されたことの偉大さと、深い愛情に触れ、畏敬の念は増すばかりでした。
「ケニアの子どもたちに未来を」と確固たる志を持ち、行動し続け、多大なる功績を残した照美さん。全く同じように生きることは難しいかもしれません。それでも照美さんの背中を追い続け、天国の照美さんに胸を張って生きることはできると思っています。
照美さんがいつまでも天国で安らかに微笑んでいられるよう、身を粉にしてモヨ・チルドレン・センターのために働きます。そして、続けていきます。
助けを必要としている子どもがいる限り、モヨ・チルドレン・センターは続いていきます。モヨ・チルドレン・センターがある限り、照美さんの名前と志は生き続けていきます。
スタッフと協力し、全力で守っていきます。だからどうかご安心ください。
全ては罪のない無垢な子どもたちの未来を共に照らすために。
モヨ・チルドレン・センター代表
佐藤南帆
ご協力のお願い
モヨ・チルドレン・センターを今後も継続的に運営していくことができるよう、どうかどうか一人でも多くの方にご支援いただけますと幸いです。
継続支援(マンスリーサポーター)はこちらからお願いいたします。
◉ https://congrant.com/project/moyochildrencentre/4262
単発のご寄付はこちらからからお願いいたします。
◉ https://congrant.com/project/moyochildrencentre/4257
いただいたご寄付は全てモヨ・チルドレン・センターの子どもたちのために大切に使わせていただきます。
モヨ・チルドレン・センターの今後のためにどうか、お力をお貸しください。
皆様の温かいご支援とご協力を心から宜しくお願い申し上げます。
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