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例えば宿題を効果量の側面から見ると。

効果量のコーナーもぼちぼち続けていきたいところです。
効果量が何なのかは前回の記事をご覧ください。

今回はもう少し具体的に効果量の数値的な側面と具体を書きたいと思います。

効果量を数値化すると。

こちらの図をご覧ください。


効果量のイメージ

オレンジ色が何もない状態の正規分布としましょう。
紫色は効果量が及ぼした後のもので,d=1であれば1標準偏差分ずれ,d=0.5の時は0.5標準偏差分動くということになります。
本書ではd=0.4以上が「望ましい効果量」とされていますが,詳しいことはぜひお読みください。

前回も少しふれたとおり,効果量が小さいからいいというわけではないですし,数値が違うとどれほど変わるのかのイメージも沸きづらいので,次の宿題を例にもう少し具体的に見ていきたいと思います。

宿題を効果量で表すなら。

まず本書では効果量の大きさを
d=0.2 小
d=0.4 中
d=0.6 大
 という考えで論を進めています。

本書では宿題が学力に与える効果はd=0.29とされており,もう少し具体的に言うと,
宿題のないクラスと比べて,宿題のあるクラスの学習者の方が1年多く学習することに相当する程度に学力が高く,学習速度は15%早いと解釈できます。または,宿題を課されたクラスの62%は,課されなかったクラスの生徒の学力水準の平均を上回ることになります。
※ちょっとこれは難しいのですが,全部書くわけにはいかないので,詳細は本をお読みください。
しかし,また他の表現をするのであれば,この効果量は肉眼では感知できない程度のもので,およそ180cmと182cmの身長差に等しいともいわれています。

ですので,本書ではd=0.29であれば,効果量は小としているわけですね。
もちろん,やらないよりはやった方がいいんですよ。

ちょっと一呼吸。

この結果だけ見れば,
「宿題はなくてもよいのでは…」
と思うかもしれませんが,「いる・いらない」の両面から考えてみましょう。

もし「いる」と考えるなら。
効果量だけ見れば小さいのかもしれませんが,「宿題をする」という行動には学力に影響を及ぼす他の側面がたくさんあります。
例えば,非認知能力でいうのなら,
・目標へ向けて働くグリットや自己制御
・小さな意味でいうところの時間的展望 など
直接的にではないにしろ,他の面が育つことで,結果,学力にもいい影響をあたえるということは十分に考えられます。
そう考えられるなら,宿題の取り組み方に一工夫が必要そうですよね。

もし「いらない」と考えるなら。
小さな効果量なので,自分が苦しんでまで必死にする必要はないのかもしれません。例えば,宿題をしない子にがみがみ接してしまって関係が悪化してしまうようなのであれば,小さな効果量である宿題を一回置いておいてもいいかもしれません。
ですが,忘れていけないのは,小さいなりに正の効果量であることは変わりないですし,宿題をするという行為に付随する他の行動には別の価値がくっついてくるので,何をどう狙ってするかによって,宿題の価値も変わってくるということです。


ちなみに私は,葛原先生の「けテぶれ」にお世話になっているので,宿題は課しています。

環境によって,何が絶対なんてここで言えるはずもないので,可能な範囲で目の前の子どもたちひとりひとりと向き合って,いい形を模索できるといいですよね。

今回もお読みいただきありがとうございました。
誰かの「よりどころ」になりますように。

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