生徒の成長を「可視化」する 塾に命を賭ける男(4)

なんやかんやで4回目まできたこの企画。
引き続き、生徒の気持ちの面に関する工夫を説明していく。

◾️勉強が苦手な生徒には、授業の前と後で同じ問題を解かせる
→私は小学生の勉強が苦手な生徒にはこのようなことを行なっている。なぜか。
それは、自身の成長を可視化するためだ。
授業の前はその日習う内容なので解けないが、授業後はその日習ったことを元にその問題を解くことができる。
こうして、生徒の成長を可視化させ、自信につなげている。

◾️答え合わせは定期的に
→問題集を解かせる時、一気に解かせるのではなく、細かく大問を区切って解かせている。
これは勉強の苦手な生徒が一気に問題を解くと答え合わせの際に×ばかりついてやる気が失われることを防ぐ目的だ。

◾️むやみに褒めすぎるな
→生徒は我々の思った以上に我々を見ている。やたらめったら褒めてもそれが嘘だと見抜かれてしまう。すると信頼が失われていく。
そのため、褒めるのはほどほどにしておくのが良い。私自身も褒めるのは本当に凄いと思った時だけだ。
あなたは、普段厳しい人に褒められるとめちゃくちゃ嬉しかった経験はないだろうか。あれは、普段褒められないから、褒め言葉1つ当たりの効果がつよいのだ。褒めすぎないことによって、たまに褒めると生徒は心から喜んでくれる。

他にも、生徒が理解できていない様子の時は言葉数を絞り頭を混乱させない工夫や、授業の後に宿題が出来るようにすると、宿題をやるために授業の内容を疎かにするのでしないようにしたり、と色々工夫していることはある。

まとめ

以上が現段階で私が行なっている工夫だ。何か参考になるものがあれば嬉しい。また、生徒1人1人にとって適切な指導法は異なる。だから、指導法に「これ」という正解はない、と個人的には思っている。

[今でも尊敬している先生について]
最後の回なので、少し脱線した話をしたい。
高校時代に出会った地学の先生の話だ。
その先生は齢60を迎えるベテラン先生だったが、素晴らしい先生で、緻密に計算された授業をしてくれた。
その先生は、「授業中に何度も生徒に問題を出し、その都度隣の生徒と話をさせる」という授業形式を取っていた。例えば、「示相化石と示準化石の違いを隣の人に解説して!」と指示をし、30秒ほど経つとやめさせ授業を再開する。
これには、およそ2つの狙いがある。
1つに、授業に集中させる目的がある。
隣の人と話すことで眠気は飛ぶし、寝ようとすると隣の人にバレてしまうので、容易には寝られない。それに加え、定期的に友達と話す時間があるので、ずっと先生の話を聞くよりも疲れが溜まりにくく集中しやすい。
そして、思考力を深める狙いもある。
ただ先生の言うことを聞くだけでは思考力は育たない。しかし、生徒に考えさせる時間を設けることで自分で考える力が育つのだ。
「生徒と生徒で話させる」ことにより、「先生から生徒へ」という一方向的な授業の持つ問題点を解決する素晴らしい授業だ。
また、その先生は厳しめの先生で、怒るとめちゃくちゃ怖い。そのため、生徒同士で話す時間から先生の話への移行の際、切り替えが上手くできていた。怖くない先生ならこの気持ちの切り替えが上手くいかず、生徒が話し続けるかもしれない。
つまり、その先生のパーソナリティと授業スタイルが完璧に噛み合っているのだ。
もしここまで狙ってやっているのなら、本当に凄いと思う。このような先生がもっと増えて欲しい。

このことから、先生の本当の評価と生徒が先生に対してする評価は異なることが多々あることが言える。優しい先生はそれだけで評価されるが、厳しい先生はどんなに工夫を凝らした授業をしても、それが理解されずに厳しいという理由だけで嫌がられることがある。
先生の本当の評価は生徒がするものではなく、見識ある同業者がするものだと考えている。

それともう一つ。
地学の先生は授業の構造を変えることによって、生徒の集中力を保っていたが、他にも構造を変えることにより、化学変化を起こしている授業がある。
それは、「ゆっくり解説」だ。
解説動画は、1人の人がつらつらと話していても聞いていて疲れる。ゆっくり解説は演者を2人にして解説と会話を織り交ぜることにより、飽きの来ない解説動画にしているのだ。
このように、構造を変えることにより聞く人の気持ちはいかようにも変化する。
是非活用したいものだ。

本当のまとめ

仕事には背骨となるような基本理念が必要だ。
私であれば、「生徒のみならず、保護者にも満足してもらう」という理念だ。将来就く別の職業でも基本理念を見つけて、全力で取り組みたい。
また仕事では、自分特有のパーソナリティをうまく活用することが大切だ。上で紹介した生物の先生は、「厳しそうにみられる、怖い」というパーソナリティをしっかり認識し、それを授業スタイルに反映させていた。
私のパーソナリティは、「人の心の動きを敏感に読み取れる」ことだ。
これは塾で授業をする上で、非常に役立っている。このパーソナリティを活かして、他の仕事でも活躍したい。
あなたのパーソナリティ・能力はなんだろうか。それを認識した時、仕事上で栄光を勝ち取れるかもしれない。

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