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お偉いさんが語る2030年

 今から君に案内する場所は、2030年。つまり未来だ。

 君は我々に対し、多くの批判を投げかける。
 しかし、だ。我々とて君と同じく、より良い世界を作ろうとする願いを持っている。

 そこは我々が望む全てが実現した世界。我々、権力者と呼ばれる少数の人間が、苦労と努力の果てに辿り着いた世界。

 誰もが幸福を享受する理想郷そのものさ。
 当然、君も気に入ってくれるだろう。

 「ようこそ、素晴らしい新世界へ。」

全てがタダで使える

 いつだったかは忘れてしまったが、世界経済フォーラムの場を借りて、素晴らしい未来の構想を発表したんだ。

 これがとても好評でね。わざわざ頑張った甲斐があったものだ、と当時は嬉しくなったものさ。

 っと、君に我々の世界の素晴らしいポイントを教えてやろうかね。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100291106.pdf(外務省のHPのPDF)

    まず、人々は何も持たない。

 だってそうだろ?

 何かを欲しがるから、持とうとするから争いごとが起きるんだ。
 持つ人間がいるから、持たざる貧しい人間だらけになってしまう。

 だから、この素晴らしい新世界では私有財産は廃止されることになった。

 生活に困らないかって?

 ははは…そうだった、君は古い人間だから知らないのか。

 レンタルできるんだよ。
 車も、泊まる部屋も、食事も何もかもが。

 君にとってそれは買わないと手に入らないのかもしれないが、我々の世界ではタダなんだ。無料で全てを借りれるのに、どうしてわざわざモノを持たないといけないんだ?

 おいおい、こんな序盤でビックリしないでくれよ。まだまだたくさん良いところがあるのに、ココで息切れなんてもったいない!

人間は資源になる

 人間というものは素晴らしい。
 今となっては電力源となり、その上、食料としても活躍しているのだから。

 我々は我々自身を資源とするだけでない。さらにその先、人の可能性を開発することに成功した。
 

広がる人類の可能性


 まず、女性は妊娠の苦しみから解放された。

 必ずしも、子孫を残すうえで卵子は必要ない。代用品を作ることはそこまで難しくないのだ。

 我々は念じるだけで、コンピュータを操作できる。
https://bicr.atr.jp/img/Bionics_MK.pdf

 我々は死を知らない。なぜなら、そんなものはとっくに克服したからだ。

 いかなる場所でも、なすべきことをなせるように。我々は、我々のための空間を作ることにした。

 我々は、現実と仮想空間の両方が融合した世界にて生活している。
 お陰で環境に負荷をかけず、いくらでも人の欲望を振るえる世界に住むことができるのさ。

戦争を防ぐために


 いつの世も忌み嫌われた戦争。そんなものは、この素晴らしい新世界には存在しない。
 兵士なぞなくとも、敵の脳みそを攻撃するだけで相手を無力化できるからな。

 それか、脳のニューロン等に刺激を与えて、敵を遠隔操作。そうやって、未然にトラブルを避けることもできるだろう。

 加えて、我々の世界ではAIが発達している。だから念の為に、ロボットに市民の安全を守ってもらっているのだ。

 彼らはとても従順で、24時間いつでも活動してくれるからな。

 いや、そもそもではあるがね。戦争が始まってから、物事に対処するのはとってもナンセンスだろ?

 だから我々はプライバシーを捨てることにしたんだ。
 我々の思考は常に見張られている。
 もちろん、寝てる時も例外じゃない。

人類の助手とタッグを組んだ

 我々は、我々のために働く存在を生み出すことに成功した。彼らはよく働いてくれているよ。

現金がなくなった。

 現金?ああ、そういえばそんなものもあったね。久しく忘れていたよ。

持続可能な社会を作った

 我々の生活によって生まれた、数々の社会問題はすでに解決されたよ。・・・これの実現には本当に苦労したね・・・。


人口削減に成功した

 地球温暖化、環境破壊。そういったものは我々の生活により、どうしても生じてしまう弊害だ。
 だから我々はこの美しい地球を守るために、我々人類の数を5億人まで減らすことにした。

 幸いにも、このプロジェクトは成功したよ。おかげさまで、持続可能な我々の世界を作ることができたのさ。

我々は未来で待っている

 どうだ?2030年の世界は。

 プライバシーや私有財産こそないが、君の目にはきっと希望溢れる美しい世界に映っただろう?

 これはあくまで可能性のお話だ。
 君はまだ、2030年に辿り着いていないからね。

 だから我々は、祈りながら待っているよ。この素晴らしい新世界に、君がたどり着けることを。

あとがき

 頭おかしい権力者の脳内がどうなってるのか、想像しながら書いてみた。

 そろそろ夏が近づいてきたし、冷や汗をかくには良い季節やしね?
 少しでもゾッとしていただけると幸いかな。

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