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シミュレーションを何度も繰り返す

さて前回は、「第11話 ホールディングス化と資本政策の立案時に注意すべき8つのポイント」から、それぞれのポイントについて深堀させた解説をしておりまして、いよいよ残すところあと4つのポイントとなります。

こちらは前回の記事


これまで説明させていただいたように最終的に資本政策を成功させるためには、いく通りものシミュレーションを行い、優先順位の高い資本政策の目標をより多く満たすパターンを選択していくしかありません。

この仮説と検証で、検証がシミュレーションとなり、これを何度も繰り返すことにより、資本政策の考え方で甘かった点や思わぬ落とし穴などの危険を見抜くことができるようになってくるのです。

もしも、あなたが経営者や経営企画室のスタッフだとして、このシミュレーションをきちんとしておかないと、渡したい株数を十分渡せない株主が出てきたり、想定していた株で株式を引き受けてもらえなかったり、譲渡ができなかったり、募集・売出しの価格や規模が思惑と違ったり、といった弊害が続発して対応に追われることになりかねません。

会社として資本政策を徹底的に考え、いくつかの選択肢に絞られた段階で、資本政策に利害関係のない専門家にみてもらうことも、念には念を押す意味で必要になります。

この「利害関係のない専門家」とわざわざ利害関係について限定しているのかについては、利害関係があれば、自らを利する資本政策を主張するでしょうし、自分が意図した方向にリードしようとすることもありますから、経営者や会社にとって最適な条件にならないケースを想定してのことです。

諸条件を勘案し、事業環境の変化に応じて若干の軌道修正ができるように、最終的には3つくらいのパターンに集約していくべきですが、その前には数え切れないシミュレーションをしてみることです。

資本政策上のいくつもの目標を満たすように、手法を組みあわせていくことは生やさしいことではありません。M&Aの世界も千三つ(せんみつ)といって1000のうち3つ成立すれば良い世界だったりしますが、3つのパターンに集約していくにあたって、やはり1000以上のシミュレーションは必要だと考えられます。

悪戦苦闘の末、知恵熱が出て寝込むくらい徹底して資本政策を考えるべきですし、自分自身の出来事に照らし合わしてみても夜中に歯ブラシを口にくわえたまま寝てしまうくらいの食らいつきがあっても良いと思います。


まず資金調達ありきは失敗のもと

未上場会社は何かと資金繰りに苦労しながら事業運営を行っていることが大半かと思います。そのため、銀行以外に外部から資金提供してくれる先があると、手放しに喜んで増資を実行してしまうパターンも多いのではないでしょうか。

たしかに、未上場のうちに多額の増資に応じてもらえることは、ビジネスモデルを認めてもらえたように思えて、経営者にとっては嬉しいことのように思うかもしれません。

しかし、資本政策の観点からみると必ずしも喜んではいられないのです。なぜかというと、安易に増資してしまうと、望ましい株主構成を実現できない諸悪の根源になる可能性があるからです。

いったん株式を発行し外部株主が入れば、簡単には株式を買い戻せませんし、業績不振の場合、外部株主が経営の重要事項について経営者に賛同してくれない急先鋒になることもありえます。

資本政策の重要な目標をどう実現するかを十分考えずに外部株主を入れると、株式を上場したあとの株主構成、経営支配権、創業者 利益、役員・従業員のインセンティブなどの目標達成がしにくい弊害を生じさせる原因になる場合がでてきます。

そのような弊害が生じたあとに軌道修正するための資本政策を立案しようとしても、手段が限られ、仮に手段があったとしても手続きや相手との交渉に多くの負担がかかるなど効率的ではない展開になります。

だいたいはそんな段階になってから相談されることが多いのですが、こんな状態からでは、打つべき手立てがあまりない場合が多いのです。

したがって、単純にお金が集まれば大成功と安易に考えず、株式を上場したあとの資本政策上のすべての目標を吟味したうえで資金調達を実行していくべきでしょう。たまたまうまくお金が集まりそうだからといって、必要以上の資金調達を行うのは言語道断です。

増資をするという事

増資には様々な手法とその背後にある目的があります。以下に主な点をまとめてみました。

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