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【極超短編小説】納豆に手を伸ばしたときに始まった話の結末はボクに委ねられているのかな?③

 ボクはファミレスの彼の向かいの席に戻ってくると、
 「ごめん、ごめん待たせちゃって。で、納豆の彼女の話の続きは?」
 「さっきの電話、お姉さんからって言ってたけど、大丈夫?」
 「大丈夫、大丈夫。お願いします、話の続きを」
 彼は手許のメロンソーダをストローでズズッと啜ると、ひと呼吸おいて話し始めた。
 「スーパーを出た後、近くのコンビニに行ったんだ。納豆ないかなって思って。今晩は絶対納豆が必要だったから‥‥」
 「こだわるね納豆。今晩‥‥。ところでスーパーに行ったのはいつ?」
 「今日、午前中だけど」
 「確定だな」
 ボクはつい口に出してしまう。
 「確定?」
 「あぁ、何でもない。ごめん。話を続けてください」
 「コンビニで納豆見つけたわけよ。残り2個。ラッキーと思って手を伸ばしたら、スッと現れたオバサンがさ、両手で1個ずつ鷲掴みだよ。『あっ』て思わず言ったら、ニコッて笑ってそのまま行っちゃうわけ」
 「オバサン?」
 「そう、オバサン。豹の顔の付いたシャツ着て、パンチパーマのオバサン。なんとスーパーで最後の一つを持って行ったオバサン」
 「え~、オバサンの話~」
 と思わずテンションの下がったボクにスマホが振動して着信を知らせる。姉貴からだ。
 「ちょっとー、早く戻って来なさいよ」
 いつものちょっと怖い姉貴の声。
 「わかったよ、少し待ってよ」
 「お姉さんから?」
 「うん、本当にごめん。すぐ戻るから待ってって」
 ボクはそう言って、ファミレスを出る。姉貴と彼の成り行きを期待していたのに、『豹顔パンチパーマオバサン』の話になっちまった。
まあ、一応姉貴の話も聞いてみるか。

(つづく)
 

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