違うんですか? 違うよ~ の話し。
「おぉ~ また来たな」
と、一人の男が、大きな声でつぶやいた。
平成の前半、以前に勤めていた中規模会社での休憩所で6,7人の同僚とテレビを見ていた時の事になる。
皆が見ていた、ブラウン管のテレビではニュース番組では、日本列島に近づいて来る、台風について放送されていた。
沖縄付近はもうすぐ、暴風圏に入りその後は本州に向かってくる、進路予想になっていたので皆、少し心配そうにしながら、ニュースを見ていたのだった。
その台風は、画面の天気図には現在位置と予想進路が表示されていた。
皆も自分も、進路が気になって「本州に上陸しそうだな~」、「関東にも来るかな?」、「ここに来るのは 何曜日だろう?」などと話されている。
この頃の天気予報は 今ほど精度が良くはなく、違う結果になる事も多かったので、皆予報にもとづいて予想していた。
この天気予想は話のタネとしては 結構よかった時代で、「明日は雨が降るって」、「いや俺は信じない」、「○○さんの予想は結構当たるよ~!」とか言ったりして結構、コミュニケーションには役に立って便利だったとも言える。
そう話していると、休憩所のドアを開けて一人の後輩の男が入って来た。
その後輩は自分の一つ年下で、20代なかばで、ガタイはよく性格も結構、明るくて元気なので、よく目立つ存在、そのため、いつも話の中心になる面白い男だった。
そして、ニュースをしばらく見てから、大きな声でつぶやいた。
「おぉ~ また来たな」
それを聞いて、だれかが「そうだよ、また台風が来るよ」と知らせてあげた。
だいたいの皆は、(うんうん、そうだ、困ったな~)みたいなリアクションをしていた。
しかし、後輩のリアクションは少し違っていて、さらにまた大きな声でつぶやいた。
「俺は おまえを 覚えているぞ~~!」
それを聞いた自分は後輩に「何を?」
すると後輩が話し始めた。
「20号ですよね」
「こいつ、前に来た時にとんでもない被害を出したんですよ!」
「今度は油断しないで、気を付けなければ!」
皆、それを聞いて(??)となっているような顔をしていた。
そして自分が後輩に向けて話しかけた。
「何を言っているだ?」
「昔の20号と、この20号は違うだろう?」
すると後輩はキョトンとした顔つきで自分と皆に聞いた。
「えっつ?」
「そうなんですか?」
どうやら後輩は台風は常に30個がぐらいが,地球上に存在していて、あちこちに移動していると、思い込んでいたらしい。
普段、ニュースや天気予報は見ないでいて、見るのは周りの人が気にしている時だけらしい。
なので、台風に関しては日本のどこかに上陸して被害を出している時と、自分が住んでいる場所に、いつ来るかしか興味が無かったみたいだ。
だから通り過ぎて、天気が回復した後はニュース、天気予報を見ないので、その後に熱帯低気圧になって消えてしう事は知らないみたいだった。
そして、もちろん台風は毎年発生した順に番号がついている事も、知らないで生きてきた事がわかった。
これには皆、大笑いした事をよく覚えている。
中には腹を抱えている者もいて、とても楽しい休憩のひと時だった。
等の後輩本人は さすがにビックリした様子で「本当にそうなの?」と皆に聞きいて、状況を理解した後は苦笑いしながら笑っていた。
自分が、この出来事を思い出して思う事がある。
最近は情報が溢れているので、後輩のように間違った常識を長い間持ち続ける事は無いように、一見、思えるがどうだろうか?
なぜなら正確で役に立つ情報に紛れてデマやフェイクニュースも拡散されいるからだ。
しかも、ものすごいスピードで。
やはり、どんな時代になっても情報の入手と判断、そして大事なのは確認だと思う。
そのために重要で役立つのはコミュニケーションになるのではないだろうか?
それには多くの人と、正しいか、間違いかを確認したり、事の起こりを正すアイデアを生まれさせたり、出来る力、可能性があるからだ。
AIが進んでも、色々な事をツールで発信やリアルで語り合える世の中であって欲しい。
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