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近畿大学 図書館司書 『図書・図書館史』合格レポート 2024年4月入学


【設題】

日本または西洋のどちらかを選び、それぞれの時代(古代、中世、近世、近代以降)の図書館発展の特徴をコンパクトに要約し、かつ私見(400字程度のまとめ)を述べてください。

【レポート】(2,098字)

1.はじめに
 図書及び図書館の歴史は、紙や電子媒体による記録媒体や現代の図書館の形態に至るまで様々な変遷があった。ここでは西洋における図書・図書館史を述べる。

2.西洋の図書・図書館史
(1)古代
 古代の図書館はメソポタミアやエジプトで設立され始め、王朝の権威・富の威光や学術研究に強く関連し、一部の人しか利用できなかったが、ローマでは奴隷から貴族まで誰でも利用できる図書館が設立された。
 世界最古の図書館は、紀元前7世紀頃のメソポタミアのアッシリア帝国首都ニネヴェに置かれた王立図書館である。図書は楔形文字が書かれた粘度板で、主題別に分類されていた。紀元前3世紀にはエジプトでアレクサンドリア図書館が建設され、文化・学問の中心地となった。ここでの図書は植物を原料としたパピルスに記録され、ピナケスという総合目録も作成された。蔵書数は70万巻で、現在の文庫本換算で1万4千冊程である。一方でパーチメントの冊子形式の図書を4万3千巻収集したペルガモン図書館も置かれた。ローマでは調査研究用の図書館の他に、公共浴場に娯楽用の公共図書館が設置され、4世紀以降はキリスト教の図書館が設立されていった。
 
(2)中世
 中世ヨーロッパの図書館はキリスト教の修道院に設置された。当時の修道院は学芸や文化を後世に伝え、大学発生の拠り所としての教育機関や写字生による図書の写本といった図書生産の役目を担った。
 6世紀頃に設置されたモンテ・カシーノ修道院図書館では、キリスト教関係の図書に加え、ギリシャ・ラテンの古典文学の写本が収集された。イタリアのヴィヴァリウム修道院図書館は宗教・非宗教問わずに図書を収集し、宗教以外の著作も写本を作る義務が戒律に設けられた。当時の図書は羊皮紙本が使われ、書写に時間がかかるなどの理由から修道院図書館の蔵書数は平均で200~300冊であり、写本の中心地であったボビオ修道院では蔵書数は700冊以上だった。
 中世後期には大学が出現し、学問活動の中心になっていった。13世紀に創設されたソルボンヌ大学は1000巻以上の蔵書数を有し、学問研究の場として主題別や学科別に分類されていた。図書が貴重なこの時代では、数百から数千冊あれば多い方で、本は鎖で繋がれていた。公開用図書館も設立されるようになったが、実際の利用は修道僧や学者など一部の知識階級に限られていた。

(3)近世
 近世はグーテンベルグによる活版印刷術の発明と製紙法のヨーロッパへの伝播により、図書は安価で大量に生産されるようになった。そのため、図書の貸出が活発になり、保存方法も箱や書見台から書架に並べられるようになった。
 ローマ教会を頂点とした支配体制に市民階級が不満をもっていた中、印刷された聖書や聖書中心の新教を立ち上げたルターの論文が読まれるようになり、宗教改革が進んだ。宗教改革によって、これまでの伝統的権威の象徴である修道院の図書館は破壊されたが、差し押さえられた修道院が町に移されて市立図書館になり、それらが王侯たちの文庫になることで後に大学図書館へ発展した。また、16・17世紀に出現した新教の教会図書館は、布教を目的とした大衆向けの通俗図書館として利用された。
 
(4)近代以降
  近代以降の欧米諸国では王立図書館や修道院・大学の図書館から一般公開される公共の図書館が設立され始め、公立図書館へ発展した。また、図書館学が発展しはじめた時代でもある。
 フランスでは王室図書館が国民に開かれ、フランス革命を経てフランス国立図書館へ発展した。1815年には蔵書数が50万冊以上であった。イギリスは18世紀に大英博物館図書館が一般公開された。18世紀後半に会員制図書館が登場し、後に公共図書館法が制定された。アメリカではイギリスと同様に会員制図書館が発展し、1848年のボストン公共図書館を皮切りに公共図書館が普及していった。1876年にはアメリカ図書館協会が発足し、次第にレファレンスサービス等も広がった。
 現代の図書館は無料で誰でも利用できることが当たり前となり、膨大化した資料や情報が電子化され、図書館間での連携などがすすんでいる。
 
3.まとめ
 現在のような誰にでも無料で公開される公立図書館への発展には、社会情勢の変化と情報媒体の変遷によって長い時間がかかった。現代では情報媒体は紙から電子化し、情報量も格段に増加している。時間や場所にとらわれずに情報にアクセスしやすい一方、フェイクニュースなどの虚偽情報が含まれていたり、情報リテラシー格差によって情報を正しく理解・活用できない人もたくさんいる。
 これからの図書館は、資料の収集・保管・貸出や情報提供のサポートに留まらず、あらゆる人々が正しい情報を活用できるように、今の時代に合った情報探索方法や情報リテラシー向上のための利用者教育が必要である。また、インターネット技術普及による時間や場所にとらわれずに人と繋がれる時代だからこそ、図書館が地域のコミュニティセンターとして、老若男女・様々な背景をもつ人たちがその場で直接的な情報の伝達・交換による交流の促進も重要だと考える。

【参考文献】

佃 一可 『図書・図書館史』 樹村房 2012.4.25
三浦 太郎編著 『図書・図書館史』 ミネルヴァ書房 2019.8.20
千 錫烈編著 『図書・図書館史』 学文社 2014.2.28
原田 安啓 『図書・図書館史 此処に無知終わり、「知」始まる』 学芸図書株式会社 2012.6.27
スチュアート・A・P・マレー 『図説 図書館の歴史』 原書房 2011.12.10

【講評】

提出お疲れ様です。
設題のポイントをしっかり押さえ、西洋の図書館史を大変分かりやすくまとめられています。特に初期の図書館が限られた特権階級のためのものから、現代の誰でも自由に使えるものに変化してきたことを理解している内容であり秀逸でした。グーテンベルクの活版印刷技術の与えた影響が社会を変えたことをしっかり理解していて好印象です。また参考文献も充実しており、詳しく学習したことが参考文献情報と内容から伝わってきます。そして私見も納得できる内容でした。
この調子で引き続き頑張ってください。

【感想】

筆者は歴史が好きなので、テキストを読むのが楽しかった科目です。

テキストをまとめるだけなので、レポート自体も難しくはないので、日々のレポート提出の休憩として取り組んでいました。

レポートの返却は驚異の翌日!そして講評もお褒めの言葉をいただき、感無量でした。

他の科目のレポート返却まで待っているそわそわ期間、再提出となってしまった時、科目週末試験前は、この講評を見て自信を取り戻していました笑

【返却日数】

1日 4/1提出・4/2合格


※注意
レポートの丸写しはしないようにお願いいたします。
皆さんの参考になれば幸いです。

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