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近畿大学 図書館司書 『図書館情報資源特論』合格レポート 2024年4月入学


【設題】

公共図書館が地域資料を収集するのはなぜかを考え、地域資料サービスの実践例やデジタルアーカイブ化について自分の言葉で論じてください。

 

【レポート】(2,095字)

1.序論
 地域資料は住民による地域の理解や課題解決の助けとなり、将来に記録を残す上で、公共図書館が果たす役割は大きい。ここでは、地域資料の概要と実際の事例から公共図書館の果たす役割を述べる。
 
2.本論
 図書館では、地域資料の収集と保存だけでなく地域住民に対して一般公開し、活用されてこそ意味がある。本論では、地域資料の収集目的と地域資料サービスの事例について述べる。
 
(1)公共図書館による地域資料の収集
 地域資料は、図書館法第3条の「郷土資料」と「地方行政資料」の図書や記録等のことで、地域資料の収集には、同法第3条第一項でその地域の事情や住民の希望に沿った図書館サービスのために収集することが根拠として明文化されている。ここでの「郷土資料」は民間の出版社や団体が発行した情報資源のことで、「地方行政資料」は国や自治体が作成した情報資源のことであるが、現在は2つあわせて「地域資料」と呼ぶのが一般的である。(藤原,P77)
 地域資料の範囲は、地方自治体の行政区分内だけでなく、隣接する自治体や隣接県、国内外の友好・姉妹都市など、文化圏や経済圏として関係する地域の情報など幅広い。また、地域資料の種類も様々で、印刷資料では、図書、小冊子類、地図、一枚物、新聞・雑誌記事等があり、非印刷資料では、手書き資料、写真・絵画、動画等の記録フィルム、音声資料、展示資料がある。
幅広い分野と様々な媒体の地域資料はその地域の歴史や特色の調査、現在の地域の特徴や行政サービスの理解といった、住民やコミュニティと行政を結びつけたり、住民・地域課題の解決や後世に歴史や文化を継承していくためにも、誰もが利用できる公共図書館での地域資料の収集は重要である。
 
(2)地域資料の収集手段とその事例
 地域資料の収集手段は、報道記事や雑誌、関連施設、出版情報、古書目録の他、住民からの情報もある。(藤原,P90)住民と協力した収集事例として、大阪市立図書館の「思い出おこし」という事業がある。市内の昔の様子を知りたいという要望が多い一方、図書や写真などの記録は残っていない現状があった。そこで時代や場所、投稿者自身の情報を用紙に記入して、市民の記憶に残っている場所の様子を募っている。記入された情報は、図書館員が図書館資料を用いて補足情報を追記して公開している。(吉井,P74) 
 住民と図書館が協力して、過去の地域の様子を後世に知らせる取り組みであり、図書館が地域コミュニティの場となっていると言える。
 
(3)地域資料のイベント活用事例
 地域資料を活用した事例として、新宿区立角筈図書館の「『江戸名所図会』であるく柏木・角筈~江戸時代の名所・旧跡を探訪~」というイベントを挙げる。新宿区の今と昔の姿を知り、地域の理解と愛着がもてるよう、『江戸名所図会』から柏木・角筈地域の名所を探索するという内容である。柏木・角筈地域の5ヶ所を図書館が作成した資料を元に歩いて回った。イベント開催後には、イベント時の写真や配布資料、地域資料紹介コーナーを設置した。(吉井,P73)
 地域資料と参加型イベントの開催にて住民に対して地域を身近に感じさせる事例である。
 
(4)関連機関との協力事例
 歴史的な資料の収集や保存、展示には、関連機関による連携が重要である。出水市の市立中央図書館と出水市歴史民俗資料館の事例がある。出水市では、中央図書館と歴史民俗資料館が併設され、1階が図書館で2階が資料館になっている。石器や土器類などの考古資料や愛宕神社の『三十六歌仙絵額』、第二次世界大戦中の軍服・海軍旗などの歴史資料、古文書、生産・生活道具の展示がある。展示に際して、フロアの温度・湿度や照明などの調整を資料館の学芸員と協力している。(吉井,P188-P189)
 
(5)デジタルアーカイブとその事例
 図書館や博物館、公文書館では、所蔵資料をデジタル化して保存・整理するとともにホームページ等で公開され、デジタルアーカイブとして、電子資料を保存・公開している。(馬場,P83)他のデジタルアーカイブと協力した事例に鳥取県立図書館の「とっとりデジタルコレクション」がある。資料保存と地域文化の再認識や活性化につなげるため、鳥取県立図書館、鳥取県立公文書館、鳥取県立埋蔵文化財センター、鳥取県立博物館が所蔵する資料をデジタル化してインターネット上で公開している。2021年3月に運用開始し、同年9月から「ジャパンサーチ」からもデジタルコレクション所蔵資料の検索ができるようになった。(吉井,P63)
 関連機関との協力・連携により、貴重な資料をデジタル化して住民に利用されている事例である。
 
3.結論
 公共図書館による地域資料の活用によって、地域住民が地元への愛着をもち、コミュニケーションを生み出す場となることがわかった。しかし、自治体の財政難による予算削減や非正規図書館員の増加・専門家不足など、公共図書館による地域資料の保存や収集、サービス継続が難しくなっている。地域の情報を後世に伝えるためにも、関連機関と協力して住民との関わりを増やしていくべきである。

【参考文献】

吉井 潤、『事例で学ぶ図書館情報資源概論』、青弓社、2023.8.24
岸田 和明編著、小山 憲司ほか著、『改訂 図書館情報資源概論』、樹村房、2020.3.26
馬場 俊明編著、『図書館情報資源概論 新訂版』(JLA図書館情報学テキストシリーズⅢ:8)、日本図書館協会、2018.11.20
藤原 是明編著、『図書館情報資源概論 人を育てる情報資源のとらえかた』、ミネルヴァ書房、2018.9.10
宮沢 厚雄、『図書館情報資源概論 新訂第4版』、理想社、2018.3.31

【講評】

地域資料の収集する意義について、記述できています。また具体的な図書館事例を示しながらわかりやすくまとめている点を評価します。

【感想】

図書館情報資源特論は図書館情報資源概論とともに、レポートの返却日数が長いレポートなので早めに出すことをおすすめします。筆者は36日かかりました。

図書館情報資源概論の時と同じように、参考文献では『事例で学ぶ図書館情報資源概論』を一番利用しました。科目週末試験などでも使ったので、よく図書館から借りてました。

図書館情報資源特論のテキスト自体は薄く、内容も地域資料に特化しているので、とっつきやすいと思います。概論と特論はセットで取り組むと良いと思いました。

【返却日数】

35日 4/1提出・5/7合格


※注意
レポートの丸写しはしないようにお願いいたします。
皆さんの参考になれば幸いです。

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