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近畿大学 図書館司書 『図書館制度・経営論』合格レポート 2024年4月入学


【設題】

「図書館経営の基本思考」における「未来思考」の5点について簡潔明瞭に説明した後、その「未来思考」を受けて、今後の専門職としての司書のあるべき姿を論じるとともに、それに伴う図書館運営のあり方を、貴方自身の考え方を含め論じて下さい。

【レポート】(2,031字)

1.はじめに
 図書館は資料の収集・貸出・保存だけではなく、情報センターとしてその地域の住民や地域の課題解決の場や地域コミュニティの場としての役割が公共図書館には求められ、社会ニーズも常に変化し続けている。図書館が利用者のニーズに応えられるよう、臨機対応に図書館の運営を行う必要がある。ここでは図書館経営の基本思における未来思考についてと今後の司書・図書館の在り方を述べる。
 
2.図書館経営の基本思考における未来思考
 図書館経営の基本思考には、利用者中心思考、建設的発展思考、中道思考、未来思考の4つある。その中で未来思考とは、将来の利用者に対して適正なサービスを保証するためにも、激しく変化し続ける高度情報化社会において質の高い未来を予測できる情報を収集し、未来を見据えた図書館政策を考えることである。その未来思考は、5つに区分することができる。
 
(1)文教政策情報
 国や地方自治体等の教育行政に関する情報のことである。教育や図書館政策に関連する法律の制定や著作権問題などの教育・文化行政、図書館建築・増改築時には建築基準変更など幅広い情報の十分に収集し、図書館の営戦略を考えていく必要がある。
 
(2)社会変化情報
 社会変化には、情報環境の変化、高齢化社会、高度学歴化社会、少子化社会が挙げられる。情報技術の発展に対応できるように柔軟な運営システムや組織のもと、施設・設備の整備や情報技術関連の専門職採用など、物的資源と人的資源を考える必要がある。また、高齢化社会に応じた設備やリカレント教育の機会を提供したり、高度学歴化社会に応じたレファレンス等の図書館サービスの質の向上、あらゆる人への生涯学習の推進に寄与するためにも公立図書館に求められるものは多岐にわたっている。
 
(3)図書館界の変化情報
 ここでの変化情報には、図書館関係団体の方針・方策、主体的・自律的変化、親機関からの変化がある。それぞれの図書館団体での決議方針や、各図書館自身による経営の合理化、親機関の方針は、図書館設備や図書館サービスに直接影響するため、常に情報収集が重要である。
 
(4)出版界・情報産業界の変化情報
 紙資料などから電子資料への資料形態の移り変わりによる出版界の変化は、予算編成、設備整備計画、備品達計画、利用方法、保存計画、利用指導に大きく影響する。
 また、インターネットにより情報のアクセスが容易になったものの、正しい情報かどうかの判断や情報の取捨選択が重要視されている。そのような状況下で、情報拠点としての図書館の役割を担い、知る権利を保障する公的機関として、中立的で客観的視点からの資料提供、多角的で有用な議論や正しい判断を助けられるような情報の提供などのニーズに応えるためにも、インターネット社会の動向に対応した図書館経営が必要である。
 
(5)マーケティング変化情報
 図書館を貸出サービスや学習室のためだけのような場にしないよう、利用者中心思考で社会的ニーズを読み取り、自館調査の実施による現状把握とマーケティング手法を活用して、図書館の運営を考える必要がある。
 
3.今後の司書と図書館運営
 社会情勢の変化と利用者視点からの図書館サービス向上のために求められる今後の司書は、①IT技術や情報リテラシーに精通した司書、②質の高い司書の育成・育成環境構築、③異なる背景を持つ司書の採用である。
 ①では、資料のデジタルアーカイブ化や電子媒体の拡充、図書館設備のデジタル機器の導入といった図書館サービス向上のためにも、情報技術を学び続けて情報技術の変化に対応できる司書が必要である。また、図書館のデジタル機器の利用案内や多くの情報から適切な情報を取捨選択できるような情報リテラシー能力があることも重要である。
 ②の司書育成は、地方自治体の財政難などによる非正規雇用の司書・図書館職員増加という観点から、専門的な知識・経験をもつ司書が今後少なる可能性が考えられる。利用者への直接的なサービスから図書館の運用まで幅広く、かつ専門的な経験を育成や研修制度構築により、新たな司書へ継承することが必要と考える。
 ③では、住民の多様化と高学歴社会の進む現代社会に応じた、外国語対応や特定の専門を学んだ司書を複数採用したり、今後の図書館経営のために民間でのマネジメント経験をもった司書を採用するなど、様々な視点から図書館サービスや図書館運用の改善を提言できるように図書館司書の多様化も必要である。
 
4.結論
 地方自治体の財政難による予算削減などにより、図書館を取り巻く環境は厳しい。利用者の要望を叶えるだけでなく、図書館を利用しない層へ図書館の魅力と重要性を宣伝し、利用者・利用頻度を増やして図書館の必要を住民が実感できれば、行政に反映されて予算にも反映されるのではないか。これまでは貸出業務や利用者の望に応えるといった受動的なサービスが多かったが、これからは積極的な図書館運営が求められている。

【参考文献】

文部科学省ホームページ、『これからの図書館像』

【講評】

学習・理解はできています。設題には二つの柱がありますが、後者の柱が弱目になっているのが残念です。前者の柱に「…簡潔に述べるとともに…」とあるように、後者の方にもっと重きを置くとさらに良くなったと思います。また、後者の柱では、巻末の参考文献から文中に効果的な「引用文」を入れ、引用文献としての活用があるとより良くなったと思います。なお、巻末文献のネット情報には、アクセスURL及びアクセス年月日も必ず記すようにして下さい。基本書誌事項になります。

【感想】

レポート自体は一発で合格しましたが、講評は少し厳しめでした。

この科目はテキストを読んでいても他の科目と内容が被らないところも多く、新しい発見があって勉強になると思いながら読んでました。

【返却日数】

11日 4/1提出・4/12合格


※注意
レポートの丸写しはしないようにお願いいたします。
皆さんの参考になれば幸いです

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