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フィンランドとサウナと認知症

観る将とサウナ

最近、将棋をよく観ています。
きっかけは、やはり藤井聡太さんという新しいスター棋士の登場です。
よく観るようになった時期は2020年の春です。
この年の4月は緊急事態宣言が出されました。
将棋観戦はコロナ禍で導入された在宅勤務生活での大きな楽しみでした。

藤井フィーバーのなか、観る将という言葉が出回りました。
将棋への関心は観る将への関心にもつながりました。
観る将のお一人としてお名前を知ることになったのが、お笑い芸人の高橋茂雄さんです。
私と同様、藤井フィーバーの影響下で、観る将になられたとネット記事では紹介されています。

そして、高橋さんは最近、ご結婚されました。
高橋さんは観る将として以外に、サウナ好きとしても知られており、新婚旅行ではサウナの本場フィンランドに行かれたそうです。

フィンランドのサービス付高齢者住宅とサウナ室

さて、私は介護業界で仕事をしています。
介護関連で昔、情報収集をして、最近たまたまこちらの記事を読み返していました。
フィンランドの介護・福祉について山崎摩耶さん(山崎さんの経歴はリンク先の記事をご参照ください)が説明しています。

グローバル化する介護とサービス付高齢者住宅/山崎摩耶氏【集中連載第2回】(週刊高齢者住宅新聞online 2019年11月21日)

視察をされたサービス付高齢者住宅については次のように記されています。

施設内はシンプルながら美しいデザイン、明るい色彩で飾られ、インテリアにも認知症への配慮がみられる。どのフロアにも「サウナ室」があり、単に身体の清潔や健康目的だけでなく〝社交も商談もサウナで〞というフィンランド人には不可欠だという。

“社交も商談もサウナで”とありますが、“高齢者住宅での生活もサウナで”なのですね。
お笑い芸人の高橋さんの新婚旅行の話と合わせて、フィンランドのサウナ文化という知識がしっかりと頭にすりこまれたと感じました。

サウナと認知症の関係

そして、フィンランドからはサウナと認知症の発症との関係について解析した研究も報告されています。
こちらの論文です。

Laukkanen T, Kunutsor S, Kauhanen J, Laukkanen JA. Sauna bathing is inversely associated with dementia and Alzheimer's disease in middle-aged Finnish men
Age Ageing. 2017 Mar 1;46(2):245-249.
doi: 10.1093/ageing/afw212. PMID: 27932366.

調査対象者
フィンランドのクオピオという都市で、2,315名の男性(42~60歳)を分析対象としています。

分析対象者の絞り込みのプロセスは以下の通りです。
調査候補者としてランダムにリストアップされたのが3,433名で、実際に調査に参加したのは2,682名でした。
このうちサウナ利用の情報が得られたのが2,327名。
ここから、サウナ利用がまったくないという12名を取り除いたのが分析対象の2,315(2,327-12)名です。

フィンランドのサウナについて
この論文ではフィンランドのサウナの特徴として
・湿度が10~20%で、空気が乾燥している
・温度は80℃~100℃が推奨されている
・ヒーターで熱せられた岩に水をかけることで、一時的に湿度を高める
と書かれています。

ネット記事では、日本のサウナと比較してフィンランドのサウナは「温度が低く、湿度が高い」ことを特徴とすると書かれていました。
サウナストーンにアロマ水をかけて蒸気を作る行為のことを「ロウリュ」や「ロウリュウ」と言います。
ロウリュウで蒸気を発生させてサウナ室の湿度と温度を上げることがフィンランドのサウナの特徴のようです。

結果(1)サウナの利用頻度別の認知症やアルツハイマー病の発症状況
この研究では2,315名の男性を約20年間追跡しています。
それぞれの男性の調査上の追跡を1984年~1989年より開始しています。
約20年の追跡におけるサウナの利用頻度別の認知症やアルツハイマー病の発症状況は下表の通りです。

※表は論文より私が作成。                                                                     

表の見方は1例を示すと、サウナの利用頻度が週に1回の601名のうち、約20年の追跡期間で59名(10%)が認知症に罹患し、34名(6%)がアルツハイマー病に罹患しました。
なお、この論文では認知症(dementia)とアルツハイマー病(Alzheimer’s disease)を区別して集計しているようでした。

結果(2)サウナの利用頻度別の認知症やアルツハイマー病の発症リスクの違い
この研究でのデータをもとに、サウナの利用頻度別の認知症やアルツハイマー病の発症リスクについての統計解析をしたところ、以下の結果が得られました。
・「週に1回」と「週に2~3回」の間には認知症やアルツハイマー病の発症リスクは統計上の有意差は認められない
・「週に1回」に比べて「週に4~7回」では認知症やアルツハイマー病の発症リスクは3分の1程度になる

上記の統計解析の結果は年齢、BMI、収縮期血圧、LDLコレステロール値、喫煙状況、アルコール摂取状況、心筋梗塞の罹患経験、2型糖尿病、安静時心拍数の認知症やアルツハイマー病の発症リスクの影響を組み入れて得られたものです。

結果の解釈に対する留意点
サウナの利用頻度の情報がいつの時点のものだろうというのは気になるところです。
考察のところで、約20年間の追跡における追跡開始時点の1回の質問票にて測定されたものだと明確に書かれています。それゆえ、追跡期間中にサウナの利用頻度が変わった対象者もいる可能性があります。
それに言及したうえで、サウナが日常に根づくフィンランドで、利用習慣(頻度も含めて)が変わる対象者はそれほど多くないだろうと書かれています。すなわち、研究の結果に影響を与えるほどのサウナ利用習慣の変化は起こらず、大半の人はこの期間中、サウナの利用習慣が維持されているという前提でこの研究での分析が実施されていたと理解できます。

終わりに

そんなわけで、サウナの本場フィンランドでは“認知症のリスク要因の検討もサウナで”なのでした。
私は銭湯愛好家ではありますが、サウナはなかなか利用しません。
まったく利用しないわけではないので、今後、サウナに足を踏み入れた際は今回のインプットを思い返しながら、楽しみたいと思います。

<参考記事>

藤井フィーバー、指すだけではない将棋の楽しみ方(読売新聞オンライン 2017/06/15)
サバンナ高橋、将棋にドハマり中!ガチ「観る将」歴1年弱もプロ驚きの情報量「棋士の方のすさまじさに触れて好きになった」(AMEMA TIMES 2021/03/19)
芸能界きってのサウナ通・サバンナ高橋さんが3つのサウナの〝ヌシ〟になった理由(DIME 2022/08/06)
本場フィンランドのサウナで、日本名物の「ととのう」を探す(日経ビジネス 2022/05/09)
フィンランドと日本のサウナって何がちがう?フィンランド式サウナの魅力まとめてみた(SAUNA&co. 2023/01/05)
フィンランドサウナは何が違う?マナーや入り方、違いを詳しく解説(ofuro media 2023/03/15)
サウナで認知症リスク低下、本場フィンランドの報告(ダイヤモンド・オンライン 2017/01/27)
サウナ習慣で健康増進~認知症や心筋梗塞予防効果も期待(日本サウナ学会代表理事 加藤容崇医師)~(時事メディカル 2022/09/18)


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