郁香

如何にも前へ進めぬから,後ろを振り返って後退りをしてみる.そんな人生.

郁香

如何にも前へ進めぬから,後ろを振り返って後退りをしてみる.そんな人生.

最近の記事

新天地

専攻配属 目を疑うような,信じがたい英弱を,持ち前の口から出まかせと外面の良さでカバーして編入試験に合格してから早3ヶ月. スキンヘッドのフランス人准教授がずかずかとやってきて,オーキド博士よろしく私にこう告げた. 「ここに(50名弱の)学部教員がいるじゃろ?好きなのをえらぶんじゃ」 無茶を云うでない.こちらとら入学2日目やぞ. いや,通常であれば学部3回生は進級の時点で指導教員が決まっているはずである.これは困った. 確か,あやふやな記憶を辿ると,面接では 「ポ

    • 狂喜乱舞

      ※この文章は,ビールでは飲み足りず様々なリキュールをひたすらに飲んだのちに手元もおぼつかぬまま書かれた文章です. エールビールが好きかもしれない。 なんだか軽やかでそれでいて苦味があって、ああ朗らかだ。 昨今の脳内多忙やつかあんまりお酒が飲めてなかったから、もうこれは反動でやけになってビールを買った。コンビニは初々しい新入生でごった返していて、見せつけるように、いや、自虐ネタの如く、ダメな大学生になるなよと先輩風を比良おろしの如く吹かせながら、カゴにビールを投げ入れたのだ

      • 喫猫

        猫を吸おう. 近年は分煙だ禁煙だなどと声高に叫ばれていて,いや私は愛煙者ではないから,別にそんなことは如何ってことはないのだが,そう,そんなこの令和6年に私はソリューションを提起するのである.猫を吸おう. 第一,あの毛でモサモサした腹に顔を埋めずにいられるものか.猫アレルギーだったり,犬派だったり,猫が嫌いな人もいるだろうからこればかりは仕方がないけれど,やっぱり猫好きとしては猫を吸わずにはいられないのである. この衝動感を丁度良く言い表すのであればキュートアグレッション

        • 謹賀新年

          新年を孤独に迎えた. いや,正確には孤独ではなくって,神田明神の参道で,多くの他人に囲まれて, 「ハッピーニューイヤー!!!!」 なんて,明日を,新年を祝う朗らかな歓声に包まれて. 「あぁ,明日が怖い」 なんて呟きながら,この世を離れられないでいる私は,そんな利己的な希死念慮とは裏腹に,この賑々しい神田明神に独りで参拝に来たのだ. 二礼ニ拍手一礼. 何を如何願ったかなんて,もうわからない. ただ, 「あぁ如何にかしてくださいな」 と,随分と抽象的に漠とした呻めきを,明日を

          閑話休題

          はやぶさ型ミサイル艇がもう退役もすぐで,後継なんかも決まっていないけれど兎も角退役なのだ,という話を聞いた.いや,まったく知らなかったわけではないし,あのミサイル艇は高速航行のためにアルミ合金で船体が作られているからもう通常の護衛艦のように耐用年数が長くないこともわかっていた. しかし,やはりそれでも改めてそういった話を聞いてショックだったのか,こう呟いてみる. 「嘘だ」 全く嘘ではないのはそれはもうわかったことだから,マジレスなんていらなくって,兎も角余市からも舞鶴か

          閑話休題

          学問の自由は、これを保障する。

          大規模な国立大学法人に対して,中期計画や予算などを決定する「運営方針会議」の設置を義務づけることなどを盛り込んだ国立大学法人法の改正案が,12日の参議院文教科学委員会で行われた採決によって自民・公明両党や日本維新の会,国民民主党の賛成多数で可決された. 丁度,このニュースがTwitter(Xなどというアルファベット一文字を我が物顔で使用して革新的な事業をやってますよ感を出そうとするイーろんに対して熱いヘイトをもって,ここはやはりTwitter)に上がり始めたころ,私は美容院

          学問の自由は、これを保障する。

          無為徒食

          ヘアアイロンの設定を180℃にして,縮毛したての少し軽くなった髪の毛を抑えるように巻いてみる.上手くカールが付かなくて,ああ,もう如何にもうまくいかない. 数日ばかりそんな具合だから,これにはもう何やってもダメっすわ,とばかりにげんなりしながらアイラインを引いてみる. おしゃれは自分のため,なんてそれらしい言い方をしておきながらどっかで褒めてほしい気がして,その浅ましさと無駄な期待に嫌気がさした.鮮やかな追憶と鈍い痛みを,寂寞でかき消すと,もうそれは濁り酒のような緩慢な甘

          無為徒食

          精神科医

          こう普段から自身のアイデンティティと融和する様な希死念慮を抱えていると,まあ否応なく精神科かメンタルクリニック送りになるもので,私と精神科との付き合いももう半年が経とうとしている. いや,正直あんまりちゃんと通院していないし,セカンドオピニオンどころかフォースオピニオン,と云う様な有様だったから真面な診断を真面に享受した覚えもないのであるが. とは云えど,やはりおっきくて良いところ(国立大)の病院にはいい先生もいたもので,専ら宮城にいる間にお世話になっている先生は随分と物

          精神科医

          同性婚

          ちょっと如何にもならない気がしたから,洋酒のボトルを空にしてしまおうと,1人で呑み会が開催された.SKYY vodkaのなんともアメリカンな平凡かつ単純な大味ウオッカに文句をぼやきつつ,Claymoreをロックで飲んで「これだよ!やはりスコッチウイスキーは素晴らしい!!」なんて叫びながら冗漫に過ごしていたら深夜の2時. 日々頭脳労働に勤しむ故なのか,随分と脳みそは元気で,エアブレーキを展開しながらアフターバーナーで加速しようとする戦闘機や,自転車のブレーキを握りながら無理や

          愛着障碍

          「恋人として好きになれない,誰かを愛することなんてできない」 これが別れたときの彼の言い草だったように覚えている. 如何にも納得ができないような気がしつつも,今まで誰よりも愛してきた彼の行動原理と人生の背景を想うと理性的に納得を許してしまう自分がいた. 正直なところ,どちらかが「お付き合いしてください」と杓子定規に則った告白をしたわけでもなく,何と無く好意を寄せていたのは確かだから,「別れた」と云う表現も可笑しいのかもしれないが,兎も角利便上できるだけ平易で直感的な判読性

          愛着障碍

          違憲判決

          2023年,10月25日.私のTLはいつにも増して賑やかであった. 最高裁の「令和2年(ク)第993号 性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄 却決定に対する特別抗告事件」の判決について、TLを這いずり回る法学クラスタの皆さんや、日々研鑽を重ねる法学の研究者が侃侃諤諤と議論を交わしていたのだ.皆さん,お忘れかも知れませんが,Twitterは「どこでもゼミ」みたいな秘密道具ではありませんよ. 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以後,特例法)の3条1項4号

          違憲判決

          自己保身

           大學の自己研鑽的な空虚にも思えるやうな授業を履修している.いや,これは一回生の時に真面目に受講をせずに遊んでゐた僕が悪いのだが,そんなことはもう十分に解つたことなのだから,もうよいのだ.件のその授業では「自己表現文」なんてものを學生に書かせることが慣例で,弊大學の生徒は歯に衣を着せぬ物言いをすれば「出来が悪い」から,随分と悩み呆けたやうにした後にテーマに沿つた苦し紛れの数行を書きだして逃げるやうに提出をするのが常であつた.  さて,僕がこの「自己表現文」とか云う課題を遂に

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