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【02】診断前夜

 vol.021未公開インタビュー、今回は小谷さんの未公開分後半です。
こちらでは小谷さんが発達障害の診断を受ける前のことを語っていただいています。
 本紙の記事で、ご両親から「お前は障害者になりたいのか」と言われてしまったエピソードをご紹介しました。小谷さんにとってはかなり辛い言葉だったと思います。一方でご両親の言葉も、偽らざる気持ちだったのではないでしょうか。「障害者」という言葉に強く抵抗を感じ、認めたくないという人が少なくないのは想像できます、それが本人であっても、周囲の人であっても。そしてそれは、やはりそれを裏付ける知識の有無によって変わるのだろうなと、こういう類の話を聞くたびに感じるのです。


g:なんとか決まった就職先ですが、仕事となると部活動以上に仕事上の指示など、コミュニケーションが求められますよね。

小谷:そうですね。他の人にとっては普通であるし、わかって当然という意思疎通が私にとっては難しいわけです。

g:そういう状況で、感情が爆発してしまうことはなかったですか?

小谷:ま、確かにね。そういう気持ちもありますが、そんなことをしたら余計に非難されるという恐れがあるわけですよ。他の従業員の仲間意識が強くて、なんかハブられてるんじゃないかっていう状況だったので。

g:それは仕事でコミュニケーションがうまく取れないことに由来していると思いますか?「あいつ仕事できないんだよ」という感じで見られているというか。

小谷:まあ、そう言ってもいいでしょう。

g:そうであってもやはり「いや、明確に言ってくれればできるんです」とは言えない状況だった。

小谷:ま、ありえませんね。言ったところで否定されるだけですから。

g:言ったところで、次から改善しようとしてくれる人は誰もいなかったと。だったらもう謝っちゃおうと。

小谷:そういうことですね。

g:すみません、辛い話ばかり続けてしまって申し訳ないんですが。

小谷:いや、むしろそれを言える方が私はありがたいんですよ。そういった辛い状況を過ごしてきた発達障害の方って結構多いんです。転職回数二桁という人だって少なくないわけなんですよ。

g:だからこそ当事者会でいろいろな人の体験、経験を共有することで共感できると。当事者会では「なんで他の人は空気が読めるんだろうね」という感じなんでしょうか?

小谷:ま、そうですね。

g:今でこそ診断があるから、それに基づいて自分のことを説明できるでしょうけど、当時は説明のしようもなく「わからないものはわからない」としか言えなかったんでしょうね。

小谷:そういうことですね。


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g:小谷さんも転職を経験されていますが、就職難の時代もあり新卒時以上に苦労されたのではないですか?

小谷:正直言ってなりふり構ってはいられなかったので、とにかく理解者が誰1人いない状況でもがき苦しみながら、就職先を決めるしかなかったということなんですよ。 合うとか合わないとか、そんなことを言っていられない状況だったんです。

g:コミュニケーションも苦手なまま、何も解決しないままに再就職しても結果としては何も変わらない状況ですよね。

小谷:そうです、耐えるしかない。

g:自分でもわからない、周りの人も理解できないという状況がずっと続いたんですね。

小谷:ま、そうなりますね、うん。

g:中途で入った会社には、どのくらい勤めたんですか?

小谷:4年ぐらいはいましたね。なんか胸が痛むような感じがするようになって、ストレスによるものじゃないかという感じがしたんですね。なんか違和感があったんですよ。それで精神科に行ったのが2003年か4年、私が32、3歳ぐらいの頃だったんですよ。その時はまだ発達障害ってほとんど聞かれなくて、そんな言葉すらなかったくらいの時代だったんですね。なので「これ何が問題ですか」って聞いてもやっぱりわからず、ということなんですよ。それで結局心療内科ではわからない、じゃあカウンセリング受けてみたらと紹介してもらったわけなんですよ。でもカウンセリングを受けても「そんなんじゃうまくいかないよ」と一蹴されて終わりでした。

g:カウンセラーは職場の人に理解を求めなさい、という意見だったんですか?

小谷:もうそうなってる以上は、仕事場の人間に理解を求めるべきであるということで「説明してわかってもらうしかないよ」という話だったんです。

g:今更そんなこと言われたって、という話ですよね。ではその時は、そこで行き詰まってしまったんですね。

小谷:で、 そこで環境を変えたいなと考えて、私出身大阪府なんですが飛び出す形で首都圏に移ってきたんですよ。千葉県の農業法人に勤めて、体力的にはきつかったものの、少しはマシになってきたかなっていう感じはしたんですよ、環境としてはね。

g:関西と関東の違いというか、それまでほど強く言われることは減ったということなんですね。

小谷:それでもコミュニケーション面ではまだまだ難があったかな、っていう感じなので、起きていることとしてはそれほど変わらなくて。やっぱり指示がうまく受け取れないとか、そういうことはありましたね。


小谷さんの未公開インタビューはここまで。
自分でも自分のことがわからない、説明しても理解してもらえない。そんな状況がずっと続いてきた中で、発達障害の概念を知り診断がついたのは、小谷さんにとって大きな救いとなったでしょう。正体がわかれば対応できる、改善できるからです。本人も、周囲の人も。

次回からは施設長の佐藤さんにお伺いしたお話をお届けします。ご期待ください。

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