僕らの青春!令和に生きる君の青春にも!明るく楽しく時に切なく、色褪せない魅力を放ち続けるHermann H.&The Pacemakers(ヘルマン・エイチ&ザ・ペースメーカーズ)!
若い頃、カラオケでよく『アクション』を歌っていた。
アクション(2002)
ヘルマン・エイチのヘの字も知らない友達が、カラオケに行くたびに「あの曲歌って」と私にリクエストしてきた。
そのくらい、ボーカルギターの岡本洋平の書く歌詞は魅力的である。
「文章」や「感想」や「気持ち」ではなくちゃんと「歌詞」を書いている。しっかりとメッセージがある上に語感も抜群で、これぞ才能、と唸ってしまうソングライターである。
特に有象無象、色物流行り物が跋扈していた2000年代の日本のオルタナロックシーンでは、ぼんやりした散文詩とか言葉遊びが過ぎてメッセージ性が丸ごとすっ飛んでいたり、逆にメッセージ性に重点を置き過ぎて聴き馴染みが悪かったり説教くさかったりする曲やバンドが大半だった中で、平明だけど奥行きのある表現ができる彼のバランス感覚。後々に出身大学を知って「あぁ、やっぱり」となった。
ヘルマン・エイチ&ザ・ペースメーカーズ(Hermann H.&The Pacemakers、以下ヘルマン)は、1998年に慶應義塾大学のサークルで結成された6人組のバンドである。インディーズにて2枚のミニアルバムとマキシを発表後、2001年にシングル『言葉の果てに雨が降る』でメジャーデビュー。
まず第一にヘルマンの特筆すべき点は、一切の楽器を持たずにコーラスしたり踊ったりするだけのバンドメンバーである「WOLF」こと若井悠樹の存在である。
ハッピー・マンデーズのBEZとか電気グルーヴのピエール瀧とか、初期プロディジーのリロイみたいな感じの「担当楽器:パフォーマー」よろしく「担当:WOLF」として若井を擁していたヘルマンは、前髪重めで伏し目がち系のバンドが全盛だった2000年代には珍しい根アカのパーティーバンドとして独特の存在感をはなっていた。
PINKI'S ROCK SHOW(2002)
エアコン・キングダム(1999)
言葉の果てに雨が降る(2001)
Runaway Song(1999)
オーロラ(2003)
ラッキーボーイ(2003)
サマーブレイカー(2002)
ほぼ全ての楽曲で作詞作曲を手掛ける岡本は茅ヶ崎出身で、同郷の桑田佳祐からの影響を口にしており、結成時のバンドメンバーの数もサザンオールスターズと同じ男女混成6人組だったこともあってデビュー当時は「ポストサザン」と評されたりもしていたようだ。
明るく楽しく時に切なく、ポップに振り切ったエネルギッシュなスタイルという点で確かにサザンのメンタリティを受け継いでいる印象だが、ヘルマンの音楽性そのものはガレージ/モッズサウンドがベースで、同時代だと初期〜中期のBOaTとかダブルオー・テレサなんかと近い、多様な音楽ジャンルをハイブリッドしたギターロックである。
2003年に英語詞の作詞を担当していたギターの平床が脱退し、2005年に一旦活動を休止するが、2012年にベストアルバムを発表して活動を再開。岡本氏の闘病を乗り越え、現在も活動中である。
若い頃から大好きなバンドだったけど、大人になると明るさや楽しさを自発することの難しさを心底理解し始めるから、ヘルマンの持つ陽気なバイブスは当時のリアルタイムよりも大人になった今の方が刺さったりする。
大昔から、ミュージシャンに限らず古今東西さまざまなクリエイターやパフォーマー達が肝に銘じてきた「泣かせるよりも笑わせる方が断然難しい」という格言を踏まえても、ヘルマンのようなバンドの有り難みとバイタリティは「疲れ切った僕ら」に染みる。
私が若い頃よりも疲れることの多いであろう今の若者にも、きっと染みる。
是非。
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