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子ども向け番組とは思えないハイセンスなアーティスト布陣に圧倒される邦楽コンピの大名盤『ポンキッキーズ・メロディ』。

邦楽のコンピレーションアルバムとして無類の強度を誇る『ポンキッキーズ・メロディ』。

1995年に発売されたこのアルバムは、フジテレビ『ポンキッキーズ』の番組内で使用されていた楽曲をコンパイルしたアルバムである。

まずはそもそもの番組についてだが、フジテレビ『ポンキッキーズ』は、『ひらけ!ポンキッキ』の後続版組として1993年に放送が開始された子ども向け番組である(この説明いる?)。私が特に夢中になっていたのが、メインMCからピエール瀧と安室奈美恵が退いて、BOSEと鈴木蘭々の二人態勢となった97年頃からである。

当時小学校高学年ぐらいだった私は、ミスチル狂の姉、ハマショー狂の父、郷ひろみ狂の母を擁するごくごく普通の家庭に育った素直な男の子だった。家族だんらんの居間のブラウン管にはミュージックステーションやHEY!HEY!HEY!が映されていて、CDの売上ランキングや音楽番組のゲストはミスチルとTK界隈とヴィジュアル系勢で埋め尽くされいた時代で、私自身も子どもながらになんとなーくどんなミュージシャンが人気で、どんな音楽が流行っているのか「オリコンベースで」認識し始めていた頃だった。もちろんまだスチャダラパーの「ス」の字も、電気グルーヴの「電」の字も知らなかった鬼ごっことドラクエ三昧の幼少期である。

そんな中で私は、身なりがランドセルから学ランに変わった「やや大人のおともだち」になってからも、「子ども向け番組のはずなのに得体の知れない魅力を持つ」ポンキッキーズを毎週楽しみにしていた。もちろん同級生には内緒で。

私の一番のお気に入りは大江千里の『夏の決心』という曲で、特に夏休み期間のポンキッキーズでは毎週の時報みたいに流されていたが、全く飽きずに「いい曲だなー」と思って聴いていた。他にも素敵な曲のオンパレードだったのだが、反面「あんまり売れてないミュージシャンの曲ばっかりだなー」という印象も持っていた。今考えれば恐ろしい無知と誤解だが。

20歳を過ぎて、わかりゃしないのにカッコつけてシュトックハウゼンとか聴いちゃったりするような名実ともに「大人のおともだち」となっていた私は、『夏の決心』を聴き直したくなって、嬉し恥ずかしで『ポンキッキーズ・メロディ』を購入したのだが、その豪華すぎるアーティストのラインナップに思わずのけぞったのである。

「子供騙し」という後々のツッコミの余地や隙の無い、完璧な情操教育を目指して制作された丁寧でプロフェッショナリズム溢れる楽曲の数々。


そもそも安室ちゃんと鈴木蘭々はまだわかるけど、メインMCに当時まだ何処の馬の骨かもわからなかった(笑)BOSEやピエール瀧を抜擢していたセンスの高さも含め、今振り返って考えても異常(もちろん良い意味で)な番組ある。

そして当時、言語化できなかった謎の魅力を感覚だけで感じ取り、学ランを着たままジャカジャカジャンケンをしていた中学時代の私の「良いものを感じ取るセンス」は、やはり間違っていなかったのだ、と、『ポンキッキーズ・メロディ』を聴いて鼻高々となったのである。

そんなわけで、音楽ファンもたじろぐ『ポンキッキーズ・メロディ』収録曲の数々を順不同でご紹介。

歩いて帰ろう / 斉藤和義

現在の知名度からは考えられないけど、私の幼少時代はまだ「知る人ぞ知る」ミュージシャンだった斉藤和義が歌うポンキッキーズのオープニングテーマ。「誰にも言えないことはどうすりゃいいの」みたいな子供の頃は大人向けすぎてあんまり意味がわからなかった歌詞も体に染み付いて覚えてしまっているミレニアル世代共通のテーマソング。


夏の決心 / 大江千里

たぶんポンキッキーズの楽曲の中でも一番の知名度と人気を誇る一曲。
曲素敵、歌詞もっと素敵。聴くと懐かしくてウルウルしちゃう。女の子と海行きたい。


ロックン・オムレツ / 森高千里

森高千里について、「オバサンになっても結局メチャクチャ美人な元アイドル」程度の認識でいる人は、考えを改めてもらいたい。何周も回ったコアな音楽ファンにはその凄さを今更説明するまでもないけど、森高千里はギターもベースもドラムもピアノも大体の主要な楽器の演奏をこなす上に、作詞の大半を自らが手掛けてきたというとんでもない「アーティスト」です。
※貼り付けはLiveバージョンです。ジャケ写の脚が綺麗過ぎて鼻血出る。


ポポ (Radio Edit) / 電気グルーヴ

番組中では機関車イメージのMVが印象的だったけど、石野卓球曰く「ACID」がテーマの曲。子ども向け番組でそれはダメだろ(笑)!でもその緩さと寛容さが90年代っぽくて最高!


夢のヒヨコ / 矢野顕子

YMOの面々や松任谷由美ですらその才能に恐れおののくニューミュージックの女帝も楽曲提供。
子供の頃のやわらかい印象と、実際の邦楽界での神聖不可侵的ポジションとのギャップが魅力の矢野さんのピヨピヨピピピ。


地球をくすぐっチャオ! / ニキリナ with 渡辺貞夫

ナベサダ作曲という、子ども向け番組向けにしては有り難みの無駄遣い極まりない一曲。
いまいちピンと来ない若いサブカル勢をフックするために家系図で言えば、菊地成孔←大友良英←山下洋輔←渡辺貞夫みたいな感じ。とにかくとんでもない人です。


パレード ('82リミックス・ヴァージョン) / 山下達郎

ここまでで十分お腹いっぱいなのにさらにシティポップの帝王まで登場する。めっちゃ爽やかでさりげなくてオシャレな曲。子供にこの良さがわかるのか?って思うけど、実際なーんか心地いい曲だなーって子供の頃に聴いてたんです。さすがタツローヤマシタです。楽天カードプレゼンツです。
※タツローヤマシタさんはまだ楽曲配信を解禁してないのて貼り付けません。どっかで聴いてみてね!

Child's days memory / 米米CLUB

これまでの濃ゆ過ぎるメンツを見ていると何なら正統派すぎて見劣りすらしてしまう米米CLUB。ノスタルジックなのにポジティヴバイブスで、石井さんの声が心地良いめっちゃ良い曲です。



98年に発売された『ポンキッキーズ・メロディ2』ももちろんオススメ。
バイオレンスなご意見番ではなく本格派シンガーとしての和田アキ子を堪能できます。

さあ冒険だ /和田アキ子


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