見出し画像

「専門性を持つ人材」が重用されるためには

(2022/11/16)

専門知識を身に着けた人材に高い報酬が支払われるようになるためには、企業がそうしなければ人材をつなぎとめられないと考えるような人材の流動性が存在することが必要。それと同時に、企業がそういった人材を活かして高い付加価値を生み出せるようなビジネスを行うことが必要。

流動性は規制緩和などを除けば主として「結果」として現れるものなので、まずは「専門知識人材を活用した高付加価値ビジネス」に注目すべき。現状、この活用のアイディアが圧倒的に足りないことが問題なのではないか。

「アメリカは博士号保持者やエンジニアなどの専門知識人材を重用しているから日本もそうすべきだ」という規範論だけではやはり弱くて、最も学ぶべきなのは、アメリカがどのようなアイディアで専門知識人材を活用して高付加価値ビジネスを実現しているか、という点だと思う。

では、企業にそのような人材活用とビジネスを行わせるにはどうすればよいか。単に企業に努力せよというだけでは永遠に実現しないだろうし、仮に採用に努力義務を設けたところで「高付加価値ビジネス」を行えない企業が専門知識人材を抱え込むことは、むしろ社会的損失であり反公共的とすら言える。

だとするとやはり、前述の「人材活用のアイディア」を大量に社会に供給するのが最も良い。典型的には「大学発ベンチャー」だが、近年増えているとは言えカバーしうる人材ボリュームや事業ドメインは限定的であり、やはり既存企業にインパクトを与えたい。そのための要件は三点。

一点目は、教育機関等での専門知識人材の育成において、学習者が知識や技能を「習得した文脈以外の文脈、とりわけビジネス文脈で活用できるような形で」習得できるような教授法を開発すること(=四枚カード問題の文脈依存性を参照)。

二点目は、企業に対して専門知識人材の知識や技能を活用した高付加価値ビジネスを行うための提案やコンサルテーションを行うこと。

三点目は、そういった試みの成功事例を少数で構わないのでできるだけはやく確立し、アナウンスしていくこと。

これらの施策は「学生は商品ではない」「学校(大学)はそのようなことを行う場ではない」といった批判を招くだろうが、学生を人として尊重し、学校の自律性を守ることと、社会、とりわけ産業界に対して人材活用の機会拡大のためのアイディアを提供することは全く矛盾せず、両立する課題である。

むしろそれを十分行わずに手をこまねいているうちに外部から的はずれな改革を押し付けられ続け、疲弊してきたのが今日の学校の姿ではないだろうか。逆説的だが、外部からの自律・自立のためにこそ外部に向けて有用性を証明しなければならない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?