見出し画像

人々がめぐらす想像の明暗を考える、11月前半のカフェイベントをまとめました!

こんにちは! ゲンロンのアルバイトスタッフの青山俊之です。文章が読まれない時代となっていると感じる今日この頃。それはサブスクをはじめとしたビジネスモデルによるメディアコンテンツの飽和というよりも、人々のことばがますます信頼できなくなっている、どことない閉塞感が生み出している現象のような気もします。先日行われた、 安達真×桂大介×東浩紀「シラスはウェブのなにをやりなおすのか──エンジニアが語る開発の舞台裏2」を視聴しながらそんなことをぼんやりと考えていました。

いやはや、のっけから少し暗い話をしてしまいました。とはいえ、現実を見つめてこそ、理想に向けて前進する意味ある一歩となる。くるりと自らのまなざしをめぐらせ、色濃い社会の影に光を指す、そんな想像力を生み出していくことがいま大事なことだと思っています。

11月前半のゲンロンカフェには、現実と虚構をめぐる人々の想像を考えるイベントが集いました。各イベントの概要と魅力をご紹介いたします!

11月前半のゲンロンカフェ

11月4日 (金) 19:00〜
藤原学思 × 石戸諭
あなたの隣の陰謀論──『Qを追う』刊行記念

配信のみのイベントです

陰謀論がひろがっています。

ことアメリカにおいては、2021年1月の連邦議会議事堂襲撃事件も記憶に新しいですが、この事件は、アメリカ・極右の陰謀論集団「Qアノン」の行いによるものです。同年行われた世論調査では、あわせて16%の市民が「Qアノン」の主張について「完全に同意する」「ほぼ同意する」と答えたといいます。
日本もまた例外ではありません。陰謀論としか思えない言説を信じているような人たちはSNSでもかんたんに見つけることもできるし、2022年4月にワクチン接種会場への不法侵入という刑事事件も発生しました。このとき逮捕された4人は「Qアノン」が日本に派生した組織という反ワクチン団体「神真都(やまと)Q会」のメンバーだとみられています。

そんな陰謀論集団「Qアノン」の取材を続けてきたのが朝日新聞記者・藤原学思さん。その内容をまとめたルポルタージュ『Qを追う』(朝日新聞出版)が2022年9月末に刊行されました。本書の中で藤原さんは、「Q」の正体を追いかけるとともに、Qアノンを信じる人たちとそうでない人たちの果てしない距離こそあれ地続きではあるという実情、そして同じ社会に暮らしているという現実の中で、自分になにができるのかを模索されています。

おなじく陰謀論に関する取材に積極的に取り組まれているのが、ゲンロンでもおなじみ、ノンフィクションライターの石戸諭さん。自身のシラスチャンネル「石戸諭の<ニュース>の未来」の番組(「日本社会とファクトチェックでは消えない陰謀論〜もっとも広がった陰謀言説から見る危機と現実〜」)などにおいても、陰謀論はある種の依存症ではないか、ともお話しされていますが、その真意はどこにあるのでしょうか。

おふたりの取材を通して見えてきたこと、「事実」をめぐる報道のありかた、そしてわたしたちの隣人でもある「陰謀論を信じる人たち」の心理や付き合い方を考えます。

11月9日 (水) 19:00〜
中村佑介 × さやわか
線と色のイリュージョン──時代を彩るイラストレーターの20年とこれから

会場観覧受付中です!

イラストレーターの中村佑介さん、物語評論家のさやわかさんの対談イベントを開催します。

今回ゲンロンカフェ初登壇となる中村さんは、ロックバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」など様々なアーティストのCDジャケットをはじめ、小説『謎解きはディナーのあとで』『夜は短し歩けよ乙女』など数多くの書籍カバー・装画を手がけ、そのほかメディア出演など多岐にわたる表現活動で知られています。今年はイラストレーター活動20周年の節目にあたり、本イベントが行われる11月9日からは、東京ドームシティ Gallery AaMoにて「中村佑介20周年展」が開催されます(会期は2023年1月9日まで)。

幅広いカルチャーに精通するさやわかさんも、中村さんのお仕事に長年注目し続けているそうです。2010年に発売された雑誌「ユリイカ」の中村さんの特集号では、中村さんの活動年表の作成も行いました。中村さんは関西を拠点にお仕事をされていますが、さやわかさんも長く関西に住んでいた時期があり、中村さんと関西文化のつながりにも関心を寄せているそうです。

今回のイベントでは、いま日本でもっとも活躍するイラストレーターのひとりとして知られる中村さんのこれまでのお仕事を振り返りながら、イラストレーションとはなにか、絵画やマンガとの違いはなんなのか、中村さんの線と色が生み出すイリュージョンの秘密について探っていきます。

じつは中村さんは、以前からゲンロンカフェのイベントやシラスの配信を好んでご覧になっているそうです。中村さんが思うゲンロンカフェやシラスの魅力についてのお話もうかがえるかも……? どうぞご期待ください!

11月15日 (木) 19:00〜
島薗進 × 辻田真佐憲
なぜ古代の神々への信仰は続くのか──神道と天皇、あるいは君が代

日本では古代の神々への信仰やアニミズム的な祭祀が「神道」として生きのびています。そういった原初的な信仰は世界各地に見られたはずですが、いまでは多くが消え去り、現存するほとんども社会に対する影響力は大きくはありません。

東京大学名誉教授で宗教学者の島薗進さんが今年5月に上梓した『教養としての神道──生きのびる神々』(東洋経済新報社)では「なぜ日本では神道が生きのびてきたのか」という視点から、日本人の精神文化に密接に結びつく「神道」について解き明かしています。この度ゲンロンカフェでは、島薗氏と近現代史研究者の辻田真佐憲さんをお招きし、同書をきっかけにして神道と日本のあり方について考えていきます。

辻田氏は11月刊行の『ゲンロン13』掲載の三浦瑠麗さんとの対談「令和の国体」のなかで、「国のかたち」に関わる歴史観や天皇について議論しています。「国体」の概念は明治以降の「国家神道」と不可分であり、いまも天皇は神道行事に深く関与する存在です。また辻田さんは著書『ふしぎな君が代』など国家と儀礼の関係にも詳しい。

本イベントでは、そもそも「神道」とはなにかから、天皇や国家と神道の関係、さらには「君が代」についてまで、幅広く議論していただく予定です。

ゲンロンカフェでおふたりが相まみえるのは3度目。今年7月に緊急開催した「あらためて統一教会を考える」では、辻田さんが多角的な観点から投げかける質問と、島薗さんによる丁寧な応答と分かりやすい解説が好評を博しました。予備知識がなく神道に詳しくないという方も、ぜひ奮ってご参加ください。


批評誌『ゲンロン13』、まもなく(11/4)発売!

10月下旬、批評誌『ゲンロン13』の実物がオフィスに到着いたしました! 『ゲンロン13』は、11月4日(金)からゲンロン友の会の会員のみなさまや弊社サイトから直接購入されたお客様に発送されます。10月31日(月)の予定からさらに遅れた配送となってしまったこと、お待ちいただいているみなさまにお詫び申し上げます。

『ゲンロン13』の注目記事は、まずは東浩紀による書き下ろし「訂正可能性の哲学2、あるいは新しい一般意志について(部分)」でしょう!

人間は統計の一部ではなく、固有の生を生きている。
ひとは一回しか生きることができないし、
一回しか死ぬことができない。

訂正可能性の哲学2、あるいは新しい一般意志について(部分) | 東浩紀

そのほかにも、現代社会と政治文化をめぐる論考が寄せられています。下記の特設サイトから、『ゲンロン13』の目次とwebゲンロン上で一部公開中の記事をぜひご覧ください。

また、『ゲンロン13』は、Amazonでも発売日が11月4日となっています。もうしばらく発売までお待ちください!

それでは11月もゲンロンカフェで、そしてシラスでお会いしましょう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?