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「COMITIA142」イベント現地レポート――ゲンロン ひらめき☆マンガ教室が目指すビジョンとは

マンガ好きと言っても所詮はにわか。どうも、これまで同人誌即売会に一度も参加したことがなかったゲンロンの青山俊之です。11月27日(日)、ついに東京ビッグサイトで開催された「COMITIA142」に〈ゲンロン ひらめき☆マンガ教室〉のスタッフとして参加してきました。ひらめき☆マンガ教室の主任講師・さやわかさん(物語評論家・マンガ原作者)をはじめとした講師陣による特別授業、現役スクール受講生による同人誌売上レースやその講評の様子、にわかマンガ好きがコミティアをどう見たのか、写真とともにイベント現地レポートをお届けします。

ひらめき☆マンガ教室の試み:「対話」

ゲンロン ひらめき☆マンガ教室は、通年講座として2017年4月から開講し、現在は第5期(2022年4月〜)に当たります。ひらめき☆マンガ教室のキーワードは対話

マンガを描く上で、そして表現者としてその活動を続けていく上で、絶対に必要な能力があります。それは「対話する力」です。
マンガを描くことは、孤独な行為ではありません。創作の際には、常に、誰かとの対話があります。
ひらめき☆マンガ教室を受講すると、その強力な「対話する力」が身につきます。

ABOUT マンガで対話しよう。 | ゲンロン ひらめき☆マンガ教室 

今回、COMITIA142では、いわゆるひらめき☆マンガ教室スクール生同士の「バトルロワイヤル」、同人誌売上レースが催されました。今回で実に4度目の企画。同人誌制作は、スクール生からランダムで3チームに分かれて取り組むそうです。COMITIA142の販売時間は4時間。その制限時間内にどれだけ数ある販売者のなかからお客さんに自分たちの作品を買ってもらえるか。まさに、思いがけない人たちと「対話」せざるを得ない仕組みがこの同人誌売上レースには仕組まれています。

一般入場前の緊張ただよう販売ブース

スクール的なコミュニティは往々にして内に閉じてしまう。けれども、大きな即売会に参加することでスクール生の目線を外へと開く。こうした取り組みは、「対話」に加えて、ひらめき☆マンガ教室のもうひとつのキーコンセプトとも深く結びついています。

ひらめき☆マンガ教室 特別授業2022:「マンガ家になる」

もうひとつのキーコンセプトは、トークショー「ゲンロン ひらめき☆マンガ教室 お試し版!」で語られる「マンガ家になる」ことです。「ひらめき☆マンガ教室は、マンガを描くことだけではなく、『マンガ家になる方法』を学ぶスクールだ!」と主任講師・さやわかさんとマンガ家・大井昌和さんが力強く語る様子に、マンガ家志望の人々の心がつかまれているように感じました。

講師のさやわかと大井
ほぼ満員となる客席

個人的に印象的だったのは、具体的に学べることとひらめき☆マンガ教室で目指すビジョン、さらにその背後にある問題意識が明確だったことです。

ひらめき☆マンガ教室で学べること

「マンガ独自の文法やメディア特性があまり理解されていない」「新しく生まれてきたマンガを描くいろんなやり方が重視されていない」など、ひらめき☆マンガ教室の実施・継続を通じて持ち合わせる明確な問題意識が語られる様子はYouTube動画で公開中、詳しくはそちらで!

個性が光る3チーム

「マンガ家になる方法」、いわゆる自己プロデュース(ひらめき)力が発揮されるのが同人誌売上レース。ランダムに集ったスクール生でどのようなコンセプトで雑誌をデザインするか、そのなかで個々人のマンガ的センスをどのように発揮するか、チームとして一目に付くようにブースを設営するかなどなど。販売ブースの設営からお客さんに見本誌をお見せする些細なやりとりに至るまで、これまでの積み重ねや売上レースに向けた緊張感が伝わってきました。

販売の様子

3チームとも、ランダムに集まったスクール生で組まれているにも関わらず、しっかり個性のあるデザインコンセプトで雑誌が作成されています。詳細はこちらのページにまとまっており、以下、表紙絵と概要を抜粋してご紹介!

TEAM-A: ぼくたち、秘めてます。

「秘密」がなければ物語は始まらない!9人の作家が紡ぐ「秘密」にまつわる作品集。
日常モノから、アングラやファンタジーまで、
個性をぎゅっと凝縮させた総計156ページの合同マンガ誌。
少年ジャンプ+に連載中「マリッジトキシン」の原作者 静脈のインタビューも掲載。

TEAM-B: DEADLINEs

“デッドライン”に魅入られた作家たちのコミックアンソロジー。
果たして越えるのは死線か、友情か、はたまたコンプライアンスか、まさか締め切りか―?
様々な“デッドライン”を漫画の力で面白く伝えます。

TEAM-C: POWER

はじける活力が、あなたの明日を輝かせる――。
最強の”かわいい”を取りそろえた、
全力☆ヒロインアンソロジー『POWER』ここに爆誕!
あふれる”かわいい”をお楽しみください!

受講生作品の講評/同人誌売上レース結果発表!

受講生作品の講評をする講師陣

講師人による受講生3チームの作品に対する講評の後、最後には同人誌売上レースの結果が発表されます。講師陣は、さやわかさんと大井さんに加えて、マンガ家の米代恭さん(『往生際の意味を知れ!』『あげくの果てのカノン』)と武富健治さん(『鈴木先生』『古代戦士ハニワット』)が参戦!

米代恭さんは、さやわかさんがマンガ家の西島大介さんとともに講談社の主催で開催していた「ひらめき☆マンガ学校」の一期生です。大井さんや武富さんをはじめ、現役の漫画家が審査員として講評するだけでなく、米代恭さんといったマンガ家さんの存在には連綿と続いてきた「ひらめき☆マンガ教室」の歴史を感じさせられました。

作品に対する各々の意見を出し合う講評の様子

審査員から一様にあがった「今年はどれもちゃんとしている」という言葉通り、甲乙つけがたいのが投票数にも現れていました。売上レースの投票数は、どれも僅差。COMITIA142、コロナ禍が続き、4時間弱という短い時間で最も売り上げたチームは、、、。


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優勝は、実販売数「92」のTEAM-Cでしたッ! おめでとうございます!!

TEAM-Aの販売数は「84」、TEAM-Bは「78」といずれも僅差。接戦でした。ちなみに、発表時間は14時半で販売終了時間となる15時にはいずれのチームももう少し売上を増やしています。最終的な売上でも優勝はTEAM-Cでした。

受講生作品の講評、同人誌売上レース結果発表の模様もYouTubeで公開中です。ぜひご覧ください!

また、ゲンロンショップでは各チームの同人誌を販売開始。在庫限りの限定販売です。手に取れなかった方は、ぜひこの機会に買い求めください!

おわりに―開かれた対話力と同人誌販売

ひらめき☆マンガ教室のバトルロワイヤルこと、同人誌販売レースは以上で無事に幕を下ろしました。講師陣のみならず、スクール生からも語られていることに、今回の売上のみで今後のマンガ家人生が決まるわけではないということです。あくまで、仲間でありライバルに、講師に、そして実際にお金を出すお客さんに開かれた対話をする機会としてこの同人誌レースの力学は生じていました。それぞれに考え、学び、今後の布石となることが生まれているのだと思います。

いち読者として、こうしたマンガ家のたまごが集う場所あってこそ、日本社会でマンガ作品も市場も力強く生まれ続けるであろう一端をかいま見ました。以上、ゲンロンのアルバイト面接で「どんな芸術が好き?」と聞かれ、「マンガ、特にジョジョが好きです!」と答えたところ、「何部好きなの?」とも聞かれ、後に質問者はジョジョを読んでいなかったことに衝撃を受けた青山俊之がお送りしました。

今後も、「おれたちにできない事を平然とやってのけるッ!」。そんな作品にいつか出会い、シビれ憧れる日を楽しみにしています。


ひらめき☆マンガ教室 第6期の開講が決定!

2023年春からひらめき☆マンガ教室 第6期の開講が決定しました! 受講生の募集開始は1月中旬ごろを予定しています。最新情報は、ひらめき☆マンガ教室の公式HPまたはゲンロンスクールのTwitter(@genronschool)をチェックしてください。

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