見出し画像

ワンクリックで世界中の媒体が買える。コロナ禍で進化する空港OOH。

2020年の訪日客が411万人減少した。というニュースが流れてきました。これは、前年比87%減という事のようなのですが、コロナ拡大前の数字も含まれており、4月から12月で考えると99%減少していることになるそうです。

外国人入国者の減少は当然ながら日本だけではなく、世界中で起きています。イギリスのヒースロー空港は4-12月で前年比82%減、5600万人ほどの外国人の入国が減ったことになります。

OOHに関連した話をすると、空港利用者の低下に伴い、世界中の主要な空港OOH媒体の需要の低下も感じています。

厳しい状況にある空港媒体は、コロナ終息後に空港利用者が戻れば、媒体の需要も一定程度回復するとは思っておりますが、本日のnoteでは、世界一のOOH媒体社JCDecauxの動きを中心に、

空港媒体をより効率的に売買するためにインプレッションをベースとしたProgrammatic取引への実現への取り組みが世界では進んでいて、これまで個別に各国に問い合わせをして買っていた空港媒体が、一元管理されるようになりそうだ。といった少し先にありそうな将来の話を書いていくことにします。

世界の空港OOHを束ねるJCDecaux

以前も取り上げていますが、グローバルOOH市場では、OOH媒体の管理は地権者が自社で行う、またはグループ会社に依頼するわけではなく、数年単位で行われる入札によって、媒体社が決定されることが一般的です。

この入札に勝ち続け、空港媒体の売り上げ・面数において世界一位のシェアを持つのが、本日の話のメインプレイヤーとなるJCDecaux社になるのですが、JCDecaux社は現在、ロンドンヒースロー、ドバイ、ロサンゼルスなどを中心に、40ヶ国160ヶ所の空港の媒体販売を行っています。

JCDecaux社は、ビジネスを円滑進めるための資金や人脈を確保するべく、現地企業とJVを組んだり、既存事業者を買収したりしながら世界各国に拠点を持ち、媒体のネットワークを広げています。

例えば、日本の場合三菱商事さんと共にMCDecauxという名の会社を作っていますし、イタリアではまた別の枠組みで、「IGPDecaux」という名前でやっていたりします。

(関西国際空港の媒体もJCDecaux社のネットワークですね)

OOH業界で働いている人は、旅行の際にOOH広告が気になって見てしまうかと思うのですが、”Decaux”という名前を旅先のどこかで見たことがあるのではないでしょうか。

空港媒体もDOOH化が進む

コロナ以前の数年における旅行人口の急拡大の影響もあり、需要の高まっていた空港媒体においてJCDecaux社は世界の空港で積極的なデジタルサイネージへの投資(DOOH化)を進めてます

バッゲージクレイムや空港ロビーといった滞在時間の長い場所には複数面のDOOHを連続して設置し、免税店エリアなど、広いスペースがある場所には、大型のサイネージを設置。プライベートジェット用のターミナルにまで、DOOHを導入しています。

画像1

(免税店周辺のDOOH媒体)

画像2

(ドバイでは曲がったサイネージなんかも出ています)

画像3

(プライベートジェット用のカウンターにもDOOH)

コロナ前に決裁された投資の影響もあるのか、今も世界各地の空港では、新たなDOOHが続々と誕生している状態です。

長期から短期へ、変化する空港媒体の販売方法

DOOH化が進む前の空港媒体は、基本の販売期間が半年や1年といった長期に渡るものが多く、企業のブランディング広告として使われるのが主流だった印象です。

長期販売が主流だったので、媒体の指標となる視認者数のデータは、日別や時間帯別など細かく細分化されたものは必要とされていなかったように見えます。(飛行機の予約システムなどは、ネットワークに繋がっていなかったようで、技術的にも細かく出すことは難しかったのだと思います)

一方で、ここ数年~コロナ前にかけて、旅行人口の急拡大で広告主からの空港媒体への興味・関心が高まり、媒体社も収益拡大を狙うべくデジタル化と合わせて媒体枠の短期販売(1週間~2週間)を取り入れるようになってきました。

また、オンラインでのチェックインや予約情報の管理が当たり前になったことで、細分化されたデータも整い始めています。

例えば、イギリスにあるForward Keysという会社は、GDSと呼ばれる航空会社の旅券予約システムから直接データを吸い上げ、1日当たり1700万件の座席予約情報を数年間分保持しており、過去数年~現在までの空港ごとの離発着のデータをデイリーかつ、時間帯別でリアルタイムに提供しています。

Programmatic 取引を実現する取引指標

JCDecaux社はこうしたトレンドの中で、既に多くの媒体を短期(1週間から2週間)で販売していますが、更に一歩先を見ています。

それが、空港媒体におけるProgrammatic OOH 取引(インプレッションによる取引)です。

その具体的な第一歩として2019年、JCDecaux社はターゲットのリーチ/フリークエンシー/インプレッションを計測可能にした媒体指標、Airpot Audience Measurement(通称AAM)を発表しました。

このAAMは、空港に設置された媒体の1面ごとのインプレッションを推計することを可能としています。

実際の方法はもう少し細かいのですが、大まかに言いますと以下のデータを掛け合わせることで、インプレッションの推計をしています。

・日別の空港利用者数
・利用者の空港内の移動経路調査
・空港利用者の平均移動スピード
・空港利用者のエリア別滞在時間
・DOOHの媒体放映時間(ロール)

推計されたインプレッションにはデモグラデータも付与されていて、
1つの媒体面で20代女性のインプレッションは○○インプレッション取れる。といった数値を出すことが可能となっており、インプレッションをベースにした売買が実現できる状態となっています。

世界の空港媒体のバイイングは一元化される

現在、このAAMはJCDecaux社が媒体社となっている、ロンドンや香港、シンガポール、パリなどで指標として導入されていて、香港国際空港では、先日初のProgrammaticによる売買が成立したことが発表されています。

この取引には、JCDecaux社が自社で開発しているDSP/SSPプラットフォームのVIOOHが使われています。

このVIOOHは、香港だけでなくJCDecaux社が管理する他国の空港媒体とも接続を行っています。

VIOOHを使うことで、これまで空港ごと(媒体ごと)に空きの問い合わせ/購入しなければいけなかった広告枠が、場所に関係なく、ターゲットを絞ってインプレッションをベースに網羅的に購入されるようになることを意味します。

もちろん、すべての広告枠がProgrammaticでの取引にはなりとは思いませんが、VIOOHが成長を続ければ、空港媒体の売買の効率化が一気に進むのは明らかでしょう。

日本の空港媒体への期待

最後に、、、

ロンドンで様々な広告主さんと働かせて頂く中で、日本の空港媒体への期待を強く感じています。

アジアの空港でプロモーションを検討する際には、シンガポールか日本のどちらかの媒体を購入したい。という事が非常に多いです。

一方で、その販売方法の複雑さやデジタルOOHの少なさもあって、日本での実施を見送られてしまうこともあります。

日本でも空港媒体を活用した新たな動きや取り組みを感じるニュースも増えているのを拝見しておりますが、データ/媒体の整備が進んでいき、よ。わかりやすい販売方法を掲示することができれば、まだ空港媒体の出稿をしたことのない広告主の扱いも手に入れるチャンスがありそうです。

世界の動き、JCDecaux社の動きが必ずしも正しいわけではありませんが、何が起きているかを知った上で、どう動くかを考えることが大事だな。と思っていますので、このnoteやTwitterでの発信が皆さんの参考になれば幸いです!




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?