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「World BOSAI Forum」(#03)インクルージョン×防災=? by 原裕太(GEN世話人、東北大学助教)

緑の地球ネットワーク

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 前回はSDGsと防災の関係に焦点を当てました。今回(#03)はそのSDGsの重要なキーワードである「インクルージョン」の考え方が、砂漠化や緑化とも深く関わる「防災」にとってどう重要なのか、お話しします。
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 GEN世話人の原裕太です。今回はインクルージョンの中身について考えたいと思います。そもそもインクルージョンとは? 漢字では「包摂」なのですが、これも結構難しい。簡単に言うと「みんなを包み込む」でしょうか。まさにSDGsの「誰一人取り残さない(Leave no one behind: LNOB)」を表す言葉です。しかしこれは取り残された人々がたくさんいる、ということでもあります。違いによる無理解や差別、障壁があり、必要な視点や配慮が政策・制度、商品開発等からこぼれ落ちています。
 「私たちのことを私たち抜きで決めないで(Nothing about us without us)」、これはSDGsや仙台防災枠組に大きな影響を与えた障害者権利条約のコンセプトです。生物多様性でいえば先住民や地域コミュニティの参画が挙げられます。よりよい社会、地域、組織にするためには当事者の多様な声をいかに反映させるかが重要です。GENもそこに問題意識をもち、現場で地域住民と膝を突き合わせて交流・協力し、女性や若手メンバーが意思決定に参画し、学生インターンも受け入れています。
 
 本題、防災に触れましょう。上述の障害者権利条約交渉に関わってきた方々の努力もあり、国連防災世界会議@仙台で「インクルーシブ防災」の概念が誕生しました。しかし、状況はまだ道半ばです。たとえば避難所の準備は十分でしょうか。妊娠中なのに何時間も立って並ばないと食べ物や水をもらえない、衛生環境が悪く乳児にあげるミルクがつくれない、これは命にかかわる問題です。被災ストレスで母乳が出ないかもしれないのに…。日本では同性カップルは法的に認められていないので、最近でも家族として仮設住宅に入居できない、亡くなったことを教えてもらえないといった問題が生じています。周りから見られる中で衣類をもらいに行かないといけない、強制的に公表させられた等の事例も報告されています。不安や恐怖で避難所に行けず被害が出る、これは避けられることです。
 お住いの地域にどんな方がいらっしゃるかご存じですか。LGBTQ+の方は日本で3~10%程度と推定され、国による大差はないことが分かってきています。最近、石川県で講演したので石川県を例にすると、障害者6%、高齢者30%、14歳未満の子ども12%、年間の出生数7~8千人、外国人住民1.4万人…となります。単純計算だと100人が集まる避難所の約30人は高齢者、小学生以下の子どもが10人くらい、3~10人が性的マイノリティ、6人が障害者、妊娠中の方も外国人も何人かいる、日本語がうまくなかったり宗教上の理由で食べられないものがあったりするかもしれない(※ANAの機内食の種類がすごい! https://www.ana.co.jp/ja/jp/guide/inflight/service/international/spmeal/)。平均的にはそんな環境になるはずなのです。身の回りにそういう人がいないなあと思われた方、もしかすると気づいていないだけかもしれません。地域の意思決定に多様な人が関与できていますか。経済活動のしわ寄せが、外部不経済としての環境問題のように、職場や家庭の女性、子ども、一部の方に集まっていないでしょうか。 
 
 まずは知ることから。熊本地震の経験を伝える冊子がこちらに掲載されていて(https://harmony-mimoza.org/news/2021/07/book.html)、とても参考になります。文化・芸術を通して楽しみながら学ぶのも良いですよね。木10ドラマ『silent』が話題ですが、今年アカデミー賞を受賞した『コーダ あいのうた』(※コーダ(CODA):Children of Deaf Adults=耳の聴こえない両親に育てられた子ども)や、NASAで初期の宇宙開発計画を支えた黒人女性数学者が主人公の映画『ドリーム』等もおすすめです。
 次回はWorld BOSAI Forum 2023のセッション講演者を続々公開予定。舞台芸術を通じて被災者の心の復興に取組んでこられた劇団四季の元プロデューサーや20代ユースにもご登壇頂く予定です。お楽しみに!


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