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緑化協力事業の出発点 by 高見邦雄(GEN副代表)

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 中国の農村のことも、植物のことも、国際協力のことも、しっかり門外漢の私は、現場で少しずつ学びながら、協力プロジェクトを組み立ててきました。その根っこのところをこのたびのシンポジウムで話したいと思います。
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オンラインシンポジウム
「環境に国境はない! 相互理解と国際協力の出発点」
●日時:2023年5月13日(土)13時30分~16時
●パネリスト:染野憲治さん(早稲田大学現代中国研究所招聘研究員)
       宮崎猛志さん((特活)国際ボランティア学生協会理事)
       高見邦雄さん(緑の地球ネットワーク副代表)
●コーディネーター:原裕太さん(東北大学災害科学国際研究所助教)
●手段:Zoom
●参加費:無料(定員100名)
●申込:以下のいずれかの方法でお申し込みください。
1)Peatix(5月12日14時締切)
https://gensymposium2023.peatix.com/
2)メール(5月9日締切)
件名を「5月シンポジウム参加希望」とし、本文にお名前を記入してGEN事務所あてお送りください。
3)ウェブサイト(5月9日締切)
https://gen-tree.org/participate/
申込フォームをご利用ください。
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 緑の地球ネットワークは山西省大同市での緑化協力を1992年から2016年まで25年間継続しました。失敗続きでは維持できませんから、これだけ長く続いたことは、成功だったと言っていいでしょう。中国でも「国際協力の貴重な成功例」とまで評価されるようになりましたし。
 日本の私たちの出発点は地球環境問題でした。地球温暖化をなんとか止めたいのに、先進工業国と途上国とが対立し、効果的な対策がとれない。途上国の代表格であった中国とのあいだに、民衆どうしの相互理解を生み出したかったのです。
 「中国の環境問題はこれからたいへんだよ」と私がいうと、大同の青年からは「先に豊かになった日本人の勝手な言い分だ。中国は十数億人が食べていかなければならず、経済発展が欠かせない。発展のためには環境破壊も甘受する、汚染すらほしいのだ」という反発が返ってきました。議論だけじゃ溝は埋まらないのです。
 緑化協力が入り口でしたが、それも地元のニーズと結びつけることが重要だったと思います。黄土高原の農村でまず目についたのは、「耕して天に到る」あの段々畑です。1992年秋に一人で訪れて、収穫作業を手伝いながら、ポツリポツリと農民の話をききました。トウモロコシのように背が高く収量の多い作物は、土壌と水分に恵まれた低地の畑でしか栽培できず、上の畑ではアワ、キビ、ジャガイモになること。下のほうの村では飲み水に困らないけど、上の村では飲み水を買いに通うというのです。
 それからあの浸食谷。農村を回っているとき、泊まっている村がすぐ近くに見えているのに、深い谷がいくつもあって、大回りして帰らなければなりません。こんな谷が雨で刻まれるということは、畑の表土も流されるということです。農村のスローガンに見られる「水土流失」と、それによる土壌劣化と砂漠化が一つのこととして結びつきました。
 霊丘県で貧しい農村の小学校を訪ね、小学校を失学する子が多いことを知って、小学校に付属果樹園を建設し、そこからの収益の一部を教育支援にいかすことを構想しました。
 現地の農村が困っていること、必要としていることを理解し、それへの解決策をみつけることが大切なのです。言葉でいえば簡単ですが、現場でそれを捜し当て、それを解決策として地元の人と共有することが必要です。そしてそれが地球環境問題ともかかわることで意義の大きさを地元の人に訴える。
 解決策がみつかったら、あらゆる努力を傾けて、それを実現することです。口にしたことは必ず実行すること。相互の理解を深め、信頼を築くためには、これがいちばん大事なことです。資金を集めたり、専門家の協力をえたり、しなければいけないことはいくらでもあります。
 5月13日(土)にオンラインシンポジウム「環境に国境はない!~相互理解と国際協力の出発点」を開催します。私はパネリストの一人として、中国でも高く評価されるようになった国際協力の出発点=土台のところを話したいと思います。

 宮崎猛志さんからは、日本の青年たちと中国の人たちがどのように感情を深めてきたかお話しいただけるでしょう。
 染野憲治さんからはより広い視野で日中の環境協力の大切さと意義についてお話しいただけると思います。みなさんの積極的なご参加をお願いいたします。

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