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Jリーグのサッカーチームと一緒の寮に住んでいた話

社会人になりたての頃、某プロサッカー選手たちと一緒の寮に入っていたことがありました。自分はサッカー業界にまったく関係ない普通のサラリーマンで、その寮に入ったのは偶然の産物です。

再現性のない話だと思いますが、体験した人が少なそうな話題でもあるので、どんな寮生活だったのか、記事に書いてみます。

※この記事には以下の内容は含まれていません
・サッカー選手との心温まる交流
 (生活リズムが違うこともあり、ほとんど会話したことがありませんでした)
・女性が登場するエピソード
 (男性向けの独身寮でした)

経緯

新社会人になった時、初めての職場は大学から数百km離れた場所にありました。家探しと引っ越しが必要になったのですが、なにせ遠いので物件探しも大変です。

そのとき、社員向けの独身寮があるという話が耳に入ります。入寮手続きが簡単で、家探しをする手間もなく、何より家賃があほみたいに安い。家賃は1万円/月でした。「とりあえずこの寮に入るか」と思い、入寮を決めました。この時はまだ、寮に住んでいる人々について自分は詳しく知りませんでした。

入寮

寮に入る初日、鍵を受け取り、寮の管理人さんに寮を案内してもらいました。そのとき、寮の入り口あたりに大量のサッカーボールが転がっていて「寮の住人が異様にサッカーが好きなのか??」と感じたことを覚えています。

それだけでは終わらず、寮の奥に入るにつれ違和感は膨らむばかりでした。大量のスパイク、筋トレ器具、サッカーチームのポスター、無造作に干されたサッカーのユニフォーム(スポンサー企業のロゴがたくさん入っていました)。「なんなんだこの寮は」と思い「この寮って…?」と管理人さんに聞き、その寮に数十人のプロサッカー選手が住んでいる事実を知ることになります。どうりで寮がサッカーグッズで溢れてるわけだ。

どうも、大人の事情で自分の会社が、サッカーチームの寮の空き部屋を間借りしていたそうです。「そんなことあるのか?」と当時は思い、どういう経緯でそんなことになったのか、昔からいる管理人さんに聞いたことがありましたが、管理人さんも詳しくは知らない、とのことでした。結局この謎は、退寮するまで謎のままでした。

寮の建物構造

寮は、4階建ての建物でした。1階にはエントランスと大浴場とゲストルームがあり、2~4階に住民が住む個室がありました。水回りはすべて共用でした。風呂もトイレも洗面台もキッチンも全部です。

風呂は大浴場でした。夜はいつでも湯が湧いていて、温かい湯船に浸かれるのは良かったですね。まぁちょくちょくサッカー軍団が風呂場でプロテイン飲みながら筋トレしたりしていたので、静かに風呂に入れる時はあまりありませんでしたが…。

個室は唯一のプライベートスペースでした。広さは4~5畳くらいで、備品のベッドと机とクローゼットが置かれていたので、ほとんどスペースの余裕はありませんでした。寮の住民たちは、その狭い部屋で暮らす自分たちを囚人になぞらえ、若干の自嘲と愛着を込めて、寮のことを「監獄」、寮から民間のアパートに移ることを「娑婆に出る」なんて表現したりしました。

印象的だった出来事

普通のアパートでは見聞きしないであろうエピソードを、いくつか書いていきます。

・筋トレにいそしむ選手たち

彼らはとにかく筋トレ熱心でした。プロ選手なので、それが仕事の一部なのでしょうが、それにしてもしょっちゅう筋トレをしていました。きっとこういう地味な積み重ねが、彼らのパフォーマンスを支えてるんだろうなと。

寮の共用スペースには筋トレ用のグッズがごろごろ転がっていて、選手たちは大音量で洋楽を流しながら筋トレをするのが常でした。最初は「やかましいな?」と思っていましたが、やがて慣れました。

・深夜の風呂で行われる人生相談

これも頻繁に見かけました。たいてい相談するのは若い選手で、先輩に向かって深刻な表情で「俺、自分がサッカーを続ける理由が分かんなくなってしまって…」と相談を持ちかけ、先輩が「うむ、それは誰もが通る道なんだ」式の回答をしていました。相談の趣旨は分かるんですが、これ、なんで風呂でやる必要があったんでしょうね。裸じゃないと本音を出せないとか?

・近所のラブホがリニューアルされてぶち上がる選手たち

若干アレな内容なので割愛します

・ユース選手たちの言動

寮には大人の選手たちだけではなく、いわゆるジュニアユースの、高校生くらいの子たちもたくさん住んでいました。

彼らは厳しく指導されていたのか、廊下で人とすれ違うときは必ず「お疲れ様ですッ」とハキハキしたあいさつをしていました。最初にあいさつされた時には「礼儀正しい子たちだな~」なんて思ったのですが、大浴場の湯船で泳ぎまくる彼らの姿を見て、その印象はだいぶ中和されました。彼らはサッカーが上手いという点を除けば、ごく普通の男子高校生でしたね。

・カタコト外国人選手

たまーに見かけました。ごっつい体格で肌が黒いのですぐわかります。その体で仏頂面なのでけっこう怖かったのですが、大浴場で話しかけられたことが一度だけありました。彼は風呂いすに腰掛け、シャンプーのボトルを手に「コレ シャンプー?」と聞いてきました。唐突に声をかけられたこともあり、若干動揺しながら「い、いえす」と返すと、彼は無言で頷いて洗髪をはじめました。自分で識別できないなら、毎回誰かに聞いてるんだろうか。異国の地で暮らしていながら、シャンプーが分からない不便さはどんなものだろう。

・大量に届くファンレター

最初はびっくりしましたね、これ。ファンたちがチームの事務所に送りつけたファンレターが、定期的に寮に転送されてきました。ポストに投函ではなく、寮の玄関に置かれてる宅配ボックス的な箱にどさっと詰め込まれ、丸見えの状態でした。ファンレターはたいてい、ファンシーな封筒にちまちました女子の文字が並んでいる可愛らしいものでした。一部の選手たちが、毎月届くファンレターの枚数で勝負していたのを記憶しています。

ファンレターはいつも物凄い量で、「あぁ、彼らは本当にプロ選手なんだな」と感じたのを覚えています。自分はサッカーファンでもなんでもなく、彼らが活躍する姿をほとんど見たことがなかったため、ファンレターは彼らの知名度を実感する数少ない機会でした。

まとめ

なんか読み返すと風呂の話ばっかだな…。今振り返ってみると、あまり良い住環境だったとは思えないですね。ただ「住めば都」のことわざ通り、当時はなんだかんだ適応してしまい、すぐに退寮することはありませんでした。

退寮して民間の賃貸に入ったときは、しばらく一人暮らしの素晴らしさに感動してました。「自分専用の風呂とトイレがある!」とか「風呂場で筋トレしてる人がいない!」とか、当たり前のことにいちいち喜んでましたね。 寮生活には、住環境のハードルを下げる効果がありそうです。

思うに、寮の共同生活は気心の知れた人がたくさんいるなら、極めて楽しい生活になるはずです。この時の自分の寮生活は、知人友人が少ないアウェーの環境であったために、単にプライベートスペースが狭いだけの暮らしになってしまいましたね。

まぁ自分はサッカーファンではありませんでしたが、プロ選手たちの生態を間近で見れたのは、今思うとなかなかレアな体験でした。一人暮らしのありがたみを日々噛みしめるためにも、記事として残しておきます。

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