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2020年9月に読んだ本を振り返る

この記事では、自分が9月に読んだ本を振り返って、読んでよかったと思える本をご紹介します。

9月に読んだ本

9月に読んだ本は18冊(小説が4冊、それ以外が14冊)でした。特に意図したわけではなかったのですが、お金に関する本を集中的に読んだ月になりました。
・年金や保険、貯金といった名目で集められた何億、何兆というマクロなお金が世の中ではどう動いているのか
・自分の身の回りの数千、数万のミクロなお金をどう動かすべきか
このへんの考えを深められたのが収穫だったかなと思います。

FireShot Capture 041 - shikadaさんの9月読書まとめ - 読書メーター - bookmeter.com

読んで良かった本3冊

9月に読んだ本のなかから、3冊ご紹介します。

1 敗者のゲーム

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名著との噂は聞いていて、前から読みたいと思っていた本でした。文章はやや難しめなのですが、主張は至ってシンプルです。

・投資の専門家が集まった機関投資家に比べて、個人の投資家は、投資に費やせる知識も情報も時間も圧倒的に少ない。機関投資家と張り合って、タイミングよく株を売り買いして継続的に利益を得るのは、きわめて難しい。

・機関投資家ですら、長期的に市場平均を上回る利益を出し続けることは、ほとんど出来ていない。それくらい、市場平均を上回る利益を目指すアクティブ投資は難しい。長期的な株価や為替の値動きを予測することは不可能。

・個人の投資家が採用すべきは、市場平均と同様の利益を出すことを目指すインデックス投資である。インデックス投資は、低い手数料でリスクを分散できるメリットがある。長期保有すれば複利の効果も活かせる。

以上の内容を、データに基づいて解説していきます。特に、アクティブ投資を行うファンドは年間成績で約6割、10年で7割、20年で8割のマネージャーが市場平均に負けている、とのデータが印象的でした。

個人投資家への具体的なアドバイスも多く盛り込まれています。本書を読んで自身の投資の方針を見直し、またこれまでなんとなくでやっていたインデックス投資に、理論的な裏づけを得ることができました。

以下、印象的だった箇所の引用です


多数の専門スタッフを抱える機関投資家と異なり、個人投資家は、株式市場全体を見渡して銘柄を探すことができない。2、3社のことすらよく理解していない。投資する時には、その会社について意味ある情報を得たと思っているが、その情報は、間違っているか、関係ない場合が多い。アマチュアが耳よりの情報と思うものは、すでに専門家には知れ渡っていて、価格にも織り込まれているからだ
今日のマネーゲームは無数の相手との競争にさらされている。ヘッジファンド、投資信託、年金基金など、何干にも及ぶ機関投資家が一日も休むことなく激しい運用競争を繰り広げている。こうした最大手の機関投資家の50番目でさえ、証券会社に対して世界中で年間1億ドルもの注文を出している。市場で何か大事なニュースがあれば証券会社が真っ先に彼らに電話するのも当然だろう。 要するに、私たち個人投資家の売買相手とは、圧倒的な情報・知識・経験を備えた大機関投資家だということを忘れてはならない

2 プライベートバンカー

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資産総額が億を超える富裕層の資産を運用する、プライベートバンカーの実態を解説する一冊です。著者の方は野村證券→三井住友銀行→ソシエテ・ジェネラル信託銀行→シンガポールでプライベートバンカー、という経歴を持つ方で、富裕層の資産運用のノウハウを解説してくれています。富裕層は海外の金融商品を活用して、庶民が想像もつかない規模で運用と節税をしていることが分かります。なんというか、「富めるものはますます富み、貧しいものはますます貧しくなる」世界ですね…。

あとは、日本の国債の話が面白く、マクロなお金の動きを調べるモチベーションが上がりました。いわく、日本人が貯金や保険に回したお金は、間接的に国債を買うことに使われているとのことです。自分の勉強不足で、初めて知ることでした。以下、引用です

日本政府の借金は、2017年3月末時点の残高で約1071兆円だが、その借金の約9割を占める国債の保有比率をみると、個人が国債を直接保有するなどごくわずかであるのに対し、国内の民間金融機関(約5割)と中央銀行である日本銀行(約4割)が圧倒的多数を保有している。国民が個々に銀行に預けている預金や、加入している保険の積立金が金融機関を通じて国債に投資され、結局は国の借金に充てられているという構図なのだ。 

また、海外と日本の金融規制の違いも興味深かったです。著者の方の、日本人の金融リテラシーの低さに対する問題意識が伝わってきます。以下、引用です

海外には優れた金融商品やサービスが山ほどあるというのに、これらのほとんどは日本では知られていないし、日本人がアクセスすることもなかなかできない。 よく「日本人は金融リテラシーが低い」といわれるが、こうした規制の網こそが、日本人のリテラシーをいつまでたっても向上させない足柳になっているのではないだろうか。だからこそ私は本書を通じて、これまでは富裕層のみが知り、恩恵を受けていたスキー ムやソリューションの数々について、日本に住む富裕層ではない多くの人たちにも知ってもらいたいと考えている。これらのスキームやソリューションを共有してもらうことは 社会全体に「富の裾野」を広げていく効果が期待できるし、日本人全体の金融リテラシーの向上にも、確実に役立つだろうと考えているからだ。

自分も、お世辞にも金融リテラシーが高いとは言えない人間です。この本の著者のメッセージを読んで、もう少し金融に詳しくなろうとの思いを強くしました。金融リテラシーは、持っていて損のない、長く使える知識だと考えています。少なくとも自分の目の黒いうちは、資本主義社会が崩れることはないでしょうから。

3 保険業界の動向とカラクリがよくわかる本

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これはもう、タイトルそのまんまの本です。どちらかというと業界内にいる人が勉強用に読む本かな?という印象ですが、外部の素人が読んでも勉強になることが多かったです。福沢諭吉が日本に保険の概念を導入した話に始まり、戦後、バブル期を経て現在までの保険業界の規制や収益モデルを解説しています。日本は、世界の生命保険市場の約14%を占める生命保険大国だとのこと。

また保険会社の2つの収益モデルが説明されており、参考になりました。

・収益① 死差益
保険会社は、性別、年齢別の過去の死亡者数の統計から未来の死亡者数を予測し、将来の保険金支払いに必要な額を算出しています。ここで見込んだ死亡者数より、実際の死亡者数が少ない場合に生じる利益が死差益です。

逆に、予測より死亡者が多い場合は損失が発生しますが、そうした場合でも支払い不能にならないように、保険会社はかなりの余裕資金を保有しており、たとえば震災などの大災害で一時に多くの方が亡くなった場合でも保険金の支払いが可能だとのこと。

・収益② 利差益
保険会社は、集めた保険金を株や債券によって運用しており、あらかじめ一定の運用収益を見込み、そのぶん保険料を割り引いています。運用収益の見込み額より、実際の運用収入が多いときに生じる利益が利差益です。

 前述の「プライベートバンカー」でも触れましたが、本書によると日本の生命保険会社全社が保有する資産の約400兆円のうち、3割以上を国債が占めているそうです。

保険会社に払ったお金が、実は国の借金のために使われていたというのはなかなか驚きでした。このことは別に隠されているわけではなく、調べればすぐに分かることではあるのですが、自分が払ったお金がその後どう使われているか、は意識しないとなかなか分からないものですね。

まとめ

9月に読んだ本を振り返りました。

先月の記事では、本は知的好奇心を満たすエンターテインメントだ、と書きました。今月読んだ本は、知的好奇心を満たしつつ、自分のお金をどう使うべきか、方針を決めたりするためのツールとしても機能していたなと思います。世の中知らないことだらけだなー、という実感があります。本を読んだり、人の話を聞くことで少しでも埋めていければと思います。


最後までお読み頂きありがとうございました!