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2020年7月に読んだ本を振り返る

この記事では、自分が7月に読んだ本を振り返って、読んでよかったと思える本をご紹介します。本を読みっぱなしにせず、自分の考えを整理することを目的に、記事を書いていきます。

7月に読んだ本

7月に読んだ本は21冊(小説が8冊、それ以外が13冊)でした。興味のおもむくままに読んでいるので、規則性がまったくないラインナップになっていますね…。

FireShot Capture 023 - shikadaさんの7月読書まとめ - 読書メーター - bookmeter.com

7月は、ここ数ヶ月のなかでは、かなり充実した読書体験が得られました。資格試験が終わって読書時間が確保できるようになったり、読書家の方とオンラインで通話して、読書のモチベーションを高められたのが有り難かったです。

初めて読む作家さんの小説も多かったです。また、noteに記事を書く習慣がつき、インプットとアウトプットを回す機会が得られたのが大きいです。

また、いわゆる新しい生活様式の中で、いつ、どこで読書をするか、自分の考えを整理できてきたことも大きいと感じています。このことについてはまた別に記事を書きたいと思います。

読んでよかった本2冊+α

7月に読んだ本のなかから、良かった本を2冊+αご紹介します。7月は豊作だったので、正直言って、紹介したい本はもっとたくさんあるのですが、尺の都合で2冊にとどめておきます。

■測りすぎ ーーなぜパフォーマンス評価は失敗するのか?

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世の中には、測定できるものもある。測定するに値するものもある。だが測定できるものが必ずしも測定に値するものだとは限らない

数値目標を重要視しすぎることの弊害を述べた一冊です。

現代では、仕事や学習などのパフォーマンスを測定し、それをもとに組織や人物を評価し、それに見合った報酬を与えることが一般的に行われています。

測定され数値化されたパフォーマンスは、個人の成果を説明したり、組織が説明責任を果たしていることをアピールしたりするうえで非常に有効なツールです。ただし、そのツールは常に効果的なわけではありません。

本書では、個人や組織が「測定」そのものに執着した場合に起こる代償について、様々な例をあげて説明しています。

本書で紹介されている事例は、たとえば以下の2つです。

・生徒のテストの点数をアップさせた教師にボーナスを与える制度を作ると、教師は生徒の試験結果を改ざんし、学力の低い生徒を「障害児」として分類して、平均点を集計するときの対象から外す。

・入院患者の死亡率に応じて報酬や懲罰が与えられると、病院は高リスク患者を受け入れなくなる。

「生徒の点数を上げる」「患者の死亡率を減らす」こと自体は、なにも問題ではありません。教師や医師の方の能力やモラルに問題があるという訳でもありません。

問題なのは、数値目標と報酬・懲罰が関連付けられることによって、その数値目標を達成するために短期的・部分的には最適な方法(=長期的・全体的には誤っている方法)を取る動機づけがなされてしまう、という点です。

病院の例で言えば、高リスク患者を受け入れなければ、その病院の患者の死亡率は確かに下がるでしょう。死亡率を低下させたことによって、職員の報酬も上がるかもしれません。これは、短期的に、またその病院に限っては最適な方法です。

しかし長期的に見れば、その病院は、高リスク患者を受け入れるノウハウを失ってしまうかもしれません。また全ての病院が同じように、患者の死亡率を下げるために高リスク患者を受け入れなくなったら、高リスク患者は行き先がなくなってしまいます。患者の死亡率を測定して報酬や懲罰と結びつけることは、結果的に全体の損失を生み出しています。

こうした事例を紹介しつつ、本書では「なぜ成果の測定がこんなに流行しているのか」「測定した結果を有効に用いるためには」といったテーマを掘り下げていきます。

なお、本書で紹介される事例は、おもにアメリカの企業や学校や官公庁や病院を想定している内容なので、そのまま日本に適用することはできない内容です。

しかし本書は、組織や人物のあらゆる成果を測定することが、常に最適な方法になるわけではないことを教えてくれます。

・測定すること自体が目的化していないか?
・測定には、コストがかかる。測定したデータの保存や管理や利用にもコストがかかる。測定のコストは、測定することにより生まれるメリットを上回っていないだろうか?
・測定しても意味がないものを測定しようとしていないか?測定する必要がなくなったものを、惰性で測定していないか?

…などといった思考の物差しを、本書は提供してくれます。おすすめです。

■わたしの全てのわたしたち

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ひとりひとり、生きてる。なにもかもをわけあって、なにもかもを共有して、ここで、ひとりひとり、生きている

カーネギー賞を受賞している海外の作品を、翻訳したのが本書です。原作は、すでに亡くなった、もしくは生きている結合双生児について、著者が入念に調べて創作し、書いた詩だそうです。原作を、翻訳家の金原瑞人さんが訳し、その訳文を詩人の最果タヒさんが日本語の散文詩の小説に再翻訳したのが本作です。

この小説は、腰から下がつながった、二人の女の子(結合双生児)を描いた作品です。

語り手は、双子の片割れであるグレース。双子のもうひとりであるティッピと二人は体がつながっている(上半身は二人分、下半身が一人分)ので、常に行動を一緒にします。繋がりながら本を読んで、学校に行って、恋をします。奇異の目で見られたり、憐れまれたりすることもありますが、二人は生まれた時から一緒だから、むしろ一人きりで生きていくことにリアリティが見いだせません。

たった一人で生まれて、たった一人で生きるなんて、リアリティがなさすぎる。

読んでいて、この小説で描かれているのは「他者をどこまで受け入れられるか?」ということではないかと感じました。

どうやったって、人間は他者と干渉しあいながら生きていきます。学校でも職場でも家でもサークルでも、どこであろうと例外はありません。自分が誰かの行動を制限したり、逆に他者が自分の行動を制限することもあります。干渉がなさすぎると孤独感が生まれますし、干渉が過剰だとストレスが生じます。どこかで線を引いて、そこまでは他者を受け入れる必要があります。

このことが、ごく端的にこの作品で描かれています。たとえば、グレースがアップルパイを作るシーン。グレースはお菓子作りが好きですが、ティッピはお菓子作りが嫌いで、グレースのお菓子作りをまったく手伝いません。しかし、体がつながっているので、グレースが台所に立っている間は、ティッピは別の場所に行くことはできません。

それから、二人がインフルエンザにかかるシーン。二人は別々の内蔵を持っているので、治るタイミングは同時ではありません。一人が治っても、もう一人が治らないとベッドから出れません。

お互いがしたい行動は違っていて、お互いの行動を制限しあっている。この状況を、二人は喧嘩したりぶつくさ言ったりしつつも、受け入れています。自分が相手の行動を縛っていることも、相手が自分の行動を縛っていることも、まるごと受け入れているから、お互いを愛すことができているように見えます。

もちろんこれは、文字通り運命共同体であり、別行動を取り得ない結合双生児だからこそできることかもしれません。しかし、結合していない一人の人間であっても、大なり小なり自分と他者が互いに制限しあうことはあります。

自分が他者にどこまで踏み込むか、また他者の自分に対する干渉をどこまで受け入れるか。そうした問いかけをはらんだ一冊になっています。

番外編 想定外に面白かった1冊

■転生したらスプレッドシートだった件

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『Googleスプレッドシートは燃え尽きたExcel職人の魂で動いているんだ』

最近個人的に、グーグルスプレッドシート(Googleが提供する、WEB上で利用できるExcelのようなサービス)を使う機会があったため、この本を手に取りました。

職場でExcelを多用し、Excelに精通した「Excel職人」がグーグルスプレッドシートの中に転生し、各種の関数たちと戦いながら、グーグルスプレッドシートを動かしていく…という筋の小説です。馬鹿馬鹿しい設定に笑いながら、グーグルスプレッドシートの機能について学べる一冊になっています。

タイトルは、おそらく某ライトノベルのパロディと思われます。技術評論社という、ゴリゴリの技術書を多く出版している出版社から、こうしたラノベ風の本が出たことが面白いです。

まとめ

7月に読んだ本を振り返りました。文章にすることで、読んだ本に対する考えがより整理されるのが良いですね。

1ヶ月間、本を読みながら、考えていたことをそれを文章にしておけば、後になって自分が読み返して、この時期の自分が何を考えていたのか、思いだすことができます。1ヶ月というのは、ちょうどいいスパンだと思います。

今後も定期的に振り返りをしていきたいです。

最後までお読み頂きありがとうございました!