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2020年11月に読んだ本を振り返る

この記事では、自分が11月に読んだ本を振り返って、読んでよかったと思える本をご紹介します。

11月に読んだ本

11月に読んだ本は14冊(小説が7冊、それ以外が7冊)でした。
本の個別の感想はこちらから→
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FireShot Capture 047 - shikadaさんの11月読書まとめ - 読書メーター - bookmeter.com

ノンフィクションを読むことが多い自覚があるのですが、今月は小説が多めでしたね。

読んで良かった本3冊

11月に読んだ本のなかから、3冊ご紹介します。

1 最小の結婚

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現代の結婚制度と、その背景にある思想に疑問を投げかける一冊です。アメリカの大学教授が書いた本ですが、日本に当てはめて読んでも得るものが多い本でした。

いわく、現代の結婚制度は、税制や相続面などで一夫一妻制だけを不当に特権化しており、その他の関係を相対的に冷遇している、とのことです。その他の関係というのは、たとえば独身者の共同生活や、LGBTQやポリアモリー(複数愛者)といったものを指しています。

たとえば日本の制度で言えば、結婚すれば配偶者控除や扶養控除といった税負担の軽減を受けられますし、配偶者による生命保険の受け取りや遺産の相続も可能です。子どもに対する共同親権も行使できます。逆に言うと、制度に沿った結婚をしていなければ、こうしたメリットは受けられません。このへんが本書で言う、相対的な冷遇ということかと思います。私見ですが、おそらくこのへんの制度は、生涯未婚率が1~2%だった昭和時代に設計された制度の残骸なんでしょうね。

また現代の結婚制度は排他的な恋愛関係を是とし、友情やその他コミュニティとのケア関係よりも夫婦関係を優先させる強制力を持っている、とのことです。確かに日本でも、結婚したら「家庭が最優先」「友人と遊ぶことや、趣味の集まりへの参加は二の次」という雰囲気を感じないでもないですね。

その上で、本書は国家による規制が少なく、当事者が互いにケアをしあう「最小結婚」を提案しています。哲学的な用語も多く、著者の主張を完全に理解できたとは言い難いのですが、現代の結婚制度が硬直したパッケージだという主張には同意できる部分が多かったです。

結婚制度の成り立ち、歴史の部分も参考になりました。

現代の結婚の主流は、一夫一妻制、恋愛・愛情関係、夫が妻よりも収入が多く、家計を支える、というモデルです。しかしこれは、歴史的に見れば、現在偶然成立しているものにすぎないそうです。過去に同性同士の婚姻関係や、父親が家族に組み込まれない社会も存在していました。

また現在の結婚は愛情をベースにしていますが、歴史的には世帯と家計の維持のために行われてきた、とのことです。結婚は資源や協働、親族の絆を維持するために主に行われていました。男性を主な稼ぎ手とする結婚も、相対的に新しいものです。産業革命前では、女性は家内労働での不可欠な労働力でした。

本書に登場するアーバン・トライブという概念も興味深いものでした。  アーバン・トライブは、直訳すると「都市部族」で、要は都市部で共通の文化や趣味を共有する少数グループのこと。読書会もアーバン・トライブのひとつだと考えてよさそうです。この言葉を造った「小集団の時代」という本が参考文献に載っており、そちらも読んでみたいと思います。


2 響け!ユーフォニアム

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京都を舞台に、北宇治高校(架空の高校です)の吹奏楽部が全国大会出場を目指す文化系スポ根小説です。京都アニメーションが作成した劇場版を見てめちゃくちゃ感動したので、原作にも手を出しました。

特筆すべきは、部活のレギュラー争いや、実力の差を描写するリアリティの凄まじさでしょうね。本作には、先輩より上手い1年生がレギュラーをとってギスギスするとか、上手い人はたいてい物凄い練習量だったりとか、そういった描写があります。

ベースはスポ根なのですが、高校から吹奏楽を始めた人がいきなり活躍したりすることはほとんどありません。正しい方法で、長年努力を積み上げてきた人との実力差は、たいていは埋めがたいものです。残酷な話ですが。「高校からはじめて、他の部員をごぼう抜きにしてめちゃくちゃ活躍した」系の話が武勇伝になり得るのは、そもそもそれが非常に困難で、成功した事例がごく少ないからでしょう。

体育会系の部活に所属していた自分としては、そのへんのリアリティある描写が、非常に納得しながら読めるものでした。

もちろん、それだけの小説ではなく、進路に悩む高校生の姿や、大会の緊張感、部員同士の友情もきっちり描かれています。特に先輩と後輩が信頼関係を築いていく過程がすばらしく、本作を傑作たらしめています。

未読の方置いてきぼりな内容になってしまうのであんまり詳しく書きませんが、夏紀みたいな優しい先輩と、奏みたいな小賢しい後輩に囲まれて高校時代を過ごしたいだけの人生だった…。

3 ウォール街のランダム・ウォーカー

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「インデックス投資のすゝめ」とでも言うべき一冊です。

過去に起きたバブルと暴落の教訓を語るところから始まり、個人投資家がとるべき選択肢を解説しています。その主張はシンプルです。いわく、株価はランダム・ウォークし、過去の値動きから、将来の動きや方向を予測することは不可能である、とのことです。

株価の長期的・安定的な予測が困難であることは、リーマンショックや、今年の株価の乱高下を見ていると、経験則としても理解できますね。投資の専門家ですら予測できないものを、素人投資家が予測できるはずがありません。

値動きが予測できない状況下で、個人投資家がとるべき選択肢は何か?との問いに対し、本書は「インデックス投資を行うべきだ」と答えます。インデックス投資というのは、非常に多くの会社(銘柄)の株が入った投資商品です。特定の会社だけに集中投資をしていると、その会社の業績が悪くなって株価が下落したり、倒産して株が紙くずになるリスクが非常に高くなります。分散投資によりそうしたリスクを低減させられるという点で、インデックス投資が推奨されています。

以前に読んだ「敗者のゲーム」と合わせて本書を読んだことで、インデックス投資をする理論的な裏付けを得られたように感じます。現代には、インデックス投資以外にも一見魅力的な投資商品があふれていますが、どれも高コストだったり、投機、ギャンブルの側面が強いものが多かったりします。また、年がら年中株価の値動きを見ているような投資はしたくありません。かかる手間が少ないのも、インデックスの良い点です。情報収集は定期的に行っていくつもりですが、当面の投資の方針を決められたという点で、良書でした。

過去に起きたバブルの歴史も、読んでいて面白かったです。たとえば17世紀のオランダで起きた「チューリップ・バブル」。簡単に要約しますが、非常に面白い事件なので検索してみてください。

当時、一部の珍しいチューリップが徐々に高値で売買されるようになったことをきっかけに、チューリップの球根の価格が異常に上昇するバブルが起きました。コール・オプション(少ない元手でレバレッジをかける投資法)の存在も、バブル形成に拍車をかけました。ある時点で「高くなりすぎている。このへんで売るのが賢明」と考えた一部の人々が球根を売り始めて、パニックが起こり、チューリップの価値は暴落しました。

あとは、18世紀のイギリスで起きたバブル。バブル後の暴落で、かのアイザック・ニュートンも大きな損失をこうむり「私は天体の動きは計算できるのだが、人間の狂気ばかりは測りきれなかった」と嘆いた、なんてエピソードも。

この手のエピソードを今見ると「馬鹿だなぁ」と思いますが、きっと当時、バブルの渦中にいたらそんなことは考えられなかったでしょうね。周りの人が皆その商品を買って、その価値がどんどん値上がりしていたら、自分は「悔しい」「出し抜かれた」という気がするでしょう。人間は非合理的な感情で動く生き物ですから。

ただ、バブルに乗って株を買ってしまったとしたら、そのとき「自分は将来の予測ができる」「この株は今後も上がり続ける」と錯覚してしまっていることになります。自分にそんな予測能力はない、ときちんと自覚して冷静でいられれば、暴落のリスクは回避できるでしょう。

もちろん、リスクとリターンは表裏です。バブルに乗っかって億り人を目指すのも一つの生き方だと思います。それを否定するつもりはありません。

長くなってしまいました。投資理論の話は難解な部分もありましたが、本書からは「株価は自分の力で変えられないから、自分で変えられる部分に注力しなさい」とのメッセージが伝わってきました。なお、本書にはアメリカの金融商品の話が多いので、日本の制度に読み替える必要があります。

まとめ

11月に読んだ本を振り返りました。いつもに比べてやたらと長文になってしまったのはなぜだろう。

まぁ熱量を持って語れる本があるのは良いことですね。「何読んでもつまらん」ってメンタルになってしまったら人生つまんなくなってしまいそうです。と言うか「何読んでもつまらん」というのは、本がつまらんのではなく単純に鬱になってしまっている可能性が大ですね。

ところで11月は、文学フリマで頒布する同人誌の原稿を書いたり、noteに記事を7本投稿したり、読書が自分にもたらす意義について整理した記事を、お世話になっている読書会のサイトに投稿したりしました。

これまでは「文章を読む」一辺倒だったのが、徐々に「文章を書く」ことにも興味が出てきていますね。ただ、なまじ本を読んで、上手い文章に触れているせいか、自分の文章を読みかえすと「下手くそか?」などと感じることもしばしば。まぁいきなり物書きのプロになれるわけはないので、気長に文章を書いていこうと思っています。

今回の記事は以上です。インドア生活をしているうちに、いつの間にか1年が終わりそうだ…。

最後までお読み頂きありがとうございました!