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2020年10月に読んだ本を振り返る

この記事では、自分が10月に読んだ本を振り返って、読んでよかったと思える本をご紹介します。

10月に読んだ本

10月に読んだ本は25冊(小説が7冊、それ以外が18冊)でした。
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FireShot Capture 044 - shikadaさんの10月読書まとめ - 読書メーター - bookmeter.com

だいぶ積ん読が崩せましたね。ただ「積ん読を早く消化しないとなー」ってテンションになってしまうと、「読まなきゃ」って義務感が生まれて、本をななめ読みするような本末転倒なことになりがちです。幸い今月はそうならずに、一冊一冊きちんと読めたと思います。

読んで良かった本3冊

10月に読んだ本のなかから、3冊ご紹介します。

1 ブラック・スワン

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人間の持つ認知の歪みに焦点を当てて、不確実性とリスクについて語る一冊です。タイトルの「ブラック・スワン」は、技術革新や大災害のたぐいを指す造語です。

・ブラック・スワンの定義
1 異常で、予想の範囲外にあること。
2 非常に大きな衝撃があること。
3 異常であるにかかわらず、それが起こってから適当な説明をでっち上げて筋道をつけたり、予測が可能だったことにしてしまったりすること。

本書では、たとえば9.11の同時多発テロやインターネットの台頭がブラック・スワンの具体例だとしています。それらは、起きる以前に正確に予測されることはありませんでした。私見ですが、最近の感染拡大もブラック・スワンの一つとして考えても良いのかなと。

こうしたブラック・スワンが起きるのは、事前に予測できなかったからです。予測できたなら、未然に防がれて、ブラック・スワンは生じません。では、これだけ知識や技術が発達したのに、人間はなぜブラック・スワンを予測ができないのか?

著者の答えは「人間の認識や思考が歪んでいるから」というものです。以下はその歪みの例です。

・人間は、ごちゃごちゃして扱いにくいものより、きれいで理解しやすいモデルや枠組みを好む(プラトン性)。ただ、そのきれいなモデルは特定の場面で間違い、深刻な副作用をもたらす。一部の極端な例、不確実性の源を無視することになるからだ。起こる可能性は低いが影響の大きい出来事も無視される。 
・人間の頭は、非常にうまく説明を作り出す。なんでもつじつまを合わせるし、ありとあらゆる現象に山ほど説明をつける。
・人間の予測能力は低い。コロンブスはインドを探しに行ってアメリカ大陸を見つけた。身の回りの発明はたいていセレンディピティ(偶然良い目を見る能力)のたまものだ。何かを発明する計画を立て、工程表通りに発明されたものなんてほとんどない。

文章がやや冗長で読みにくい本ではあるのですが、過去の自分が未来を予測して意思決定したときに、認知の歪みは起きていなかったか?と当てはめて考えると、なかなか面白い一冊でした。

2 ブループリント

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クローン人間を扱った近未来小説です。

不治の病にかかった若き天才ピアニストが、自分の才能を永遠のものとするためにクローンの娘を産むところから、物語は始まります。母であるイーリスIRISと、娘であるスーリイSIRI。スーリイはイーリスの体細胞クローンであるため、二人は母娘であると同時に双子でもあります。

スーリイはピアノの才能を受け継いでおり母を喜ばせます。30歳ほど年齢の離れた双子である二人は蜜月の時を過ごすのですが、やがてスーリイは「私は誰なのか?」との問いに直面し、母娘の間には徐々に不協和音が流れるようになります…。

物語は、産み落とされたクローン、スーリイの視点で語られます。一般的には、「自分は何者か」とか「何がやって生きていきたいか」といった疑問は、何年も生きていくなかで自然と生じて、そのたびに解決したり逃避したりするものです。ところが本書のスーリイの場合は、「母親の代替ピアニスト」との役割を望まれて生まれてきました。この、当事者不在の意思決定が、やがて悲劇を産むことになります。

主人公のほかにも、作中にはクローンを求めるさまざまな人々が登場します。自分の遺産を継がせるための息子を欲する独身の大富豪、子どもを強く望むが子どもを得る手段がなかったレズビアン、幼い息子が交通事故で植物状態になってしまった母親。なかには、自分の臓器が破損したときのスペアとしてクローンを作っておきたい、なんて人も。

本書はクローン人間を題材に、人間のアイデンティティの核心を、端的にえぐり出すことに成功している小説だと思います。

3 すばらしい新世界

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いわゆるディストピアを描いたSF小説です。いや、1930年代に書かれたとは思えない新鮮な面白さでした。自分が以前にハマったアニメーション作品「PSYCHO-PASS」にも影響を与えた小説と聞いていて、前からずっと読んでみたかった作品でした。

作中の社会では、生殖は完全に管理され、セックスは生殖ではなく娯楽になり、あらゆる人間は工場の流れ作業の中で生まれてきます。条件付け教育によってそれぞれの階級に相応しい価値観を持つようになった人間たちは、ドラッグの配給とエンタメの供給によって不満の原因を排除され、誰もが幸せな、合理的で安定した清潔な社会が実現しています。

この小説が行っているのは、現代社会を相対化して見る試みだと思います。現代の親子関係と恋愛は感情を不安定にし、生老病死の苦しみから逃れるために宗教が必要とされます。本書で描かれる未来には、親子関係も恋愛関係も、そして宗教も存在しません。すべて必要がないからです。そうして感情の安定した幸福を手に入れた未来人から見れば、現代人は野人そのものでしょう。

自分は、現代をそこまで悪い時代だとは思っていません。本書に描かれたようなディストピアを「おぞましい」と批判するのは簡単です。ただ、一方で、自分自身で幸福を探す必要がない、すべて最適に管理された世界を魅力的だと感じてしまったのは否定できません。そう感じてしまうのは、自分が根っこから怠惰な人間だからかもしれませんね。

まとめ

10月に読んだ本を振り返りました。

今月読んだ本は、新しい知識をたくさん得るというよりは、自分自身がすでに持っている考えを引き出されるものが多かったです。普段ぼやっと考えていることに、明確なテーマを与えて言語化を促す。それもまた本の持つ機能の一つだと思います。

あと10月は、映画を数本見ました。

・アイ・アム・レジェンド
・メン・イン・ブラック
・ヴァイオレット・エヴァーガーデン
・インセプション

普段は本ばっかり読んでるのですが、久しぶりに映画を見てみると、あらためて映画の映像と音響が訴えかける力、起承転結の分かりやすさはすごいなと。

積ん読も少なくなったので、11月は映像作品ばかり見る月になるかもしれません。まぁそれはそれで良いかなと考えています。読書も映画も、仕事ではなく趣味なので、自分が読みたいもの、観たいものを追いかけていきたいと思っています。それでは、また次回の記事で。

最後までお読み頂きありがとうございました!