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2021年5月に読んだ本を振り返る

この記事では、自分が5月に読んだ本を振り返って、読んでよかった本をご紹介します。

5月に読んだ本

5月に読んだ本は10冊(小説が5冊、それ以外が5冊)でした。

FireShot Capture 008 - shikadaさんの5月読書まとめ - 読書メーター - bookmeter.com

上の画像には含まれてませんが、今月は漫画をたくさん消化しました。別記事を書いています。

読んで良かった本2冊

5月に読んだ本から、2冊ご紹介します。

1 つまらない住宅地のすべての家

津村記久子さんの新刊、長編小説です。全部ではないですが、津村さんの書いた小説やエッセイはだいたい読んでいて、津村ファンを名乗ってもよいかなと思ってます。そのうち津村作品の素晴らしさを褒め称える記事を書きたい。

さて本作は、簡単に言ってしまえば地方都市の住宅街に、脱獄犯が逃げ込んでくることで起きるあれこれを描いた群像劇です。登場人物が多いのですが、時間をおかずに読めばきちんと人間関係を把握して、終盤に起きる化学反応が楽しめるつくりになっています。

章ごとに視点が変わることで、人物が多面的に描かれているのが良かったですね。たとえば、本作には若い一人暮らしの男性が登場します。彼はご近所から見ればごく大人しい青年ですが、彼は上司から度重なる嫌がらせを受けており、内面には鬱屈としたものを抱え、それを晴らすために犯罪まがいの行為に及ぼうとします。

昔好きだった小説に「人間は単数ではない」というフレーズがあったのを思い出しました。人間は自分から見た自分自身としてだけでなく、他者から見られる人間としても存在します。それはどちらかが本物でどちらかが偽物ということではなく、両立しえる。人間を一面的で単純な記号として描くのではなく、多面的で複雑な奥行きとして描く小説が好きです。本作は間違いなく、そのことに成功しています。

ついでに津村作品の魅力を書いておけば、読者に媚びるようなところがまったくないですね。「こんなふうに書けば読者は喜ぶだろう」といった作為をまったく感じない。それでいて、非常に面白くまとまっている。まぁこれは自分がそう思い込んでいるだけで、津村さんの手のひらの上で転がされているのかもしれませんが。ただ、作家さんにうまく転がされるのは、それはそれで楽しいもんです。

2 仕事文脈

多様な働き方や、職業人の声を紹介する100ページほどの冊子です。最近このシリーズを知って、とても面白くてバックナンバーも含め読みました。社会人になって以来、人がどんな仕事で食っているのかとか、職場の人間模様やらローカルルールの話を聞くのはかなり好きです。

出版社のタバブックスは、個人的に要チェックの出版社です。自分が以前にハマった「くそつまらない未来を変えられるかもしれない投資の話」(下記記事で紹介しています)もタバブックスでした。

今回紹介されていた、IKEAの短時間正社員制度は始めて知りました。正社員だから社会保険完備で、バンドマンや劇団員、ボクサーが掛け持ちでIKEAで週20時間ほど働くそうです。言ってみれば、フルタイム正社員と非正規雇用の間を埋めるような制度ですね。バンドだけでは、劇だけでは食っていけない、けどフルタイムで働くのも…という人をうまく拾ってるのではないでしょうか。

あと海外の履歴書のフォーマットや採用事情が知れる「各国履歴書事情」も新鮮でした。日本的な履歴書に慣れてしまってますが、所変われば品変わるんだなと。こういう新鮮な企画が100ページに詰まっていて、非常に面白いです。次号もぜひ読みたい。

まとめ

毎月の振り返り記事で小説を紹介したのは久しぶりな気がします。小説を紹介するのはやはり難しい。そもそも経験値が足りないうえに、ネタバレしないように、と意識すると薄い薄いあらすじ紹介になってしまいます。漫画の紹介ならめちゃくちゃお手軽にできるんですが…この差はなんだろう。そのへんを上手く乗り越えて、小説をうまいこと紹介できる人になりたいです。

最後までお読み頂きありがとうございました!