生きる事は呪いだと

 私は殺される運命だった。
酒を飲んでは暴れる父に
「お前のようなやつが産まれてこなければこんな暮らしをしないで済んだんだ。疫病神めが」
といつも言われて育ってきた。
元々裕福ではなかった我が家だが、父は日々残業を繰り返し私が産まれてきてからの事を考え、できる限りの貯金をしていたらしい。
しかし私は生まれつき病弱で、病院への入退院を繰り返し、すぐに貯金も尽きてしまったそうだ。
出産当日、私は母から取り上げられた直後から息をしていなかった。お医者さん達の懸命な措置で息を吹き返したがこのままだともって三日だと告げられたらしい。
でも今私はこの世界を生きている。

 私が十歳を迎えようかという頃、借金が嵩み返済の為昼夜問わず働かざるを得なくなった父の癇癪は年々酷くなり、最近では私や母に手を上げる事も珍しくなかった。
母がヤメてと泣き叫んで、父が母を突き飛ばす。私の髪の毛を引っ張り
「お前のせいだぞ」
と目を見ながら告げられる。母は
「大丈夫だからね、大丈夫だから」
と繰り返し泣いているだけで何もしてくれなかった。部屋の壁には日に日に穴や汚れが増えていった。
そんな毎日を耳を塞いだり、痛みに耐えたりしながら一年程過ごしていると急に乾燥したような臭いがして私は何も感じなくなってしまった。この生活が普通だと脳が麻痺してしまったのだと思う。
それからは父が癇癪を起こそうと、母が泣き叫んでいても私はただ見ているだけだった。
父に殴られ、髪を毟られ、蹴飛ばされようが、痛みも涙も苦しみも、全部どこかに置いてきて枯れ果ててしまっていた。

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