今の形が今の私の

 熱されたアスファルト、太陽が真上から私達を見下している。
 明日への切符の取り方はわからないけれど、きっと私達の明日への道は自動更新で、いつか来る " 期限 " ってやつを待っているのだと思う。
 履き古した何となく買ったサンダルを雑に脱いで遠くへ投げ捨てた。
 直に伝わるアスファルトの熱さと硬さに自分は何て弱く、柔らかな物体なのだろうと思い知らされる。
 一歩一歩、体重を前に移動させるように、捨て去った過去から遠ざかるように、無防備なこの身体ひとつで人生の点から移動する。
 私は私でいられる事に何も覚えた事がなかったけれど、これは私の人生、私の生き方なのだろう。
 だから、私は前へ進めるし、後ろを振り返る事もできる。
 生きる事も、死ぬ事も、きっと自分で決める事ができる。
 たったひとつ抗えないとするのならば、それは " 寿命 " ってやつなのだろう。

 甲状軟骨が倒れて、私の取り入れた酸素が声に変わった時、何かが変わったりはしないけれど、自分はここにいるのだと表現できるかもしれない。
 自分の出来る事に限りはあって、私如きが世界を変える事はできないかもしれないけれど、小さな事をやり始める事はできるんだって。

 靴を脱ぎ捨てて、走り出して、踏み潰した草や蟻。
 私の知らない世界の何かが何処かで壊れても、私が変わらないように。
 でも私は今日もこの世界の些細な変化を知らぬまま、気付かぬままに、何かしらをもたらして、少しずつ時間を消費していく。
 誰かが笑っている。
 誰かが泣いている。
 誰かがどこかでウマレて。
 誰かがどこかでシんでしまって。

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