弐零弐壱

 今年が始まった。
冷たい風が吹いているが毎年決まって元旦は見つめる事ができない程に光り輝く太陽が昇っている。
今年の正月は家から出る事はないだろう。
一年で世界は真っ逆さまに落ちてゆくように変わってしまったから。

太陽に彩られる大地は、あの頃と変わってはいないし
あの頃と比べて自分自身という人間が変わった訳ではない。
毎年決まって皆で金色のビールを喉へ流し込む事が恒例になっていたけれど、今年はそんな事もありそうにない。
家族とも会わず、家で一人テレビでも見て過ごすのだろう。

この時期になると辞めた煙草を思い出す。
オーガニックの葉っぱだけで作られた、火のつき難い硬い煙草だ。
昔自分は黄緑色のものを吸っていたのだが、この時期に思い返すのは黄色い箱のものだった。
いつも以上に眩しい太陽と、正月特有の風の匂い、人々が行き交う街の喫煙所で、はしゃぐ子供達を横目に燻らす煙草の煙
何だかとても幻想的で、いつもとは違う香りと味を感じたものだった。
旨い空気の中吸う煙草は格別だったな。
今年も
これからも
そんな事は一生ないのだけれど。

そう。
僕にとって人生初めての一年が始まるからだ。

ここから先は

1,309字
一話完結(たまに前後等でリンクするお話有り)のお話を毎週金曜日20時に配信しています。 一度ご購入頂ければ、現在配信中の全てのお話を読む事ができます。

THE CONNECTIVES

¥1,500 / 月

短編の詩集です。

いつも応援有難う御座います。竹渕はいつも皆様に支えられています。これからも生きる。