ある日の旅路

 張り付いた瞼を剥がして外を見つめる。何もない一日も案外悪くないものだが、この外の世界で今日どんな事が起こり、自分が何に巻き込まれるのかが気になって少し胸が躍る。
 冷たい風が吹く朝はいつもより身が引き締まる。
 慌ただしく人が行き交う歩道を窓から眺めて、僕は家を出た。
 日が昇り消えた街灯。小鳥の囀り。高架下の騒音。
 僕はイヤホンで耳を塞ぎ、大音量でロックンロールを聴く。
 無作為な物音から身を守るのが日常になっていた。作られた空間で鼓膜を支配する方がどれ程心地良いかを知っているから。

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