唯美なダンスを踊ろう

 ここは世界の終わり。
 残された私達は唯々いずれ来る死を待つのみ。
 崩れたビルに積もる塵……光のない街、ここは東京。
 あの日見えた雲の隙間の青空も、スモッグが隠して離さない。
 壊れた身体と精神を補う偽造の部品パーツが私達の今を物語っている。
 いつか現れるであろう終わりの使者。黒い翼を広げて、私達を影で隠して攫ってしまうのだろう。
 キラキラした鱗粉を撒きながら、終わりを待つこの絶望の時間じんせいを一瞬にして無かった事にしてくれるのだろう。
 痛みとも快楽とも似つかない、人間の最期おわりの感覚を与えにやってくるのだろう。

 時間が進めど進めど私達は常に退廃的で、いずれ来る終わりを考えるばかり。
 そこに救いはなかったはずなのに、終わりに救いを求めてしまう。
 けれども自ら死を選ぶ決断は下せず、妄想の、空想の、唯美な終わりを望んでしまっている。
 痛みも苦しみもなく、そこに無があるように願ってしまう。
 それが私達の、人間の弱さなのかもしれない。
 弱くなってしまった心の最後の拠り所なのかもしれない。
 衰弱していく身体と脳が織り成す終着点という名の幻想。
 自分が自分で或るという事を認識する事を放棄し、拒絶した成れの果て……
 それが私達。今生きている人類だ。
 
 人類……という事ももうどうでも良いのだけれど。

 苦しみの中で思考をする事を拒絶した結果、歪んだ世界が視えてくる。
 雨が降っている中、それを聖水だとくるくると舞う……靴下なおす裸の少女。
 これは夢か真か、救いの手は未だ来ず。

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560字
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