君の痕跡の物語

 家のベッドで目を覚ます。カーテンの隙間から光が差し込んでいる。
 いつもと変わらない身体。昼過ぎ。
 少しの違和感と、肌寒さ。
 染み付いた香り、寝返りをうつスペース。
 昨日とも、一昨日とも何も変わらない。何も変わらない部屋。
 いつからか変わらなくなったこの生活。時計の針だけが進んでいく。何も変わらないいつもの毎日が今日も始まる。
 身体をゆっくり起こして、首を横にゆっくりと振りながら視線を動かす。
 昨日とも、一昨日とも、一週間前とも変わりのない部屋。
 いつまでも変わらない部屋。
 何も変わらない心境、しかし腹だけは空く。
 まだ僕が人間だという事。生きているという事。
 腹も減るし、眠気にも襲われる。
 だけれど、何も変わらない毎日。
 残された手紙、一枚ずつ捲って読み終えたまま。
 便箋の最後の一枚が重なる便箋の一番上に無機質に居座ったまま。
 " またね " なんて言葉で締め括られた、そんな嘘で締め括られた……そんな手紙。
 最後の優しさ。残酷な優しさ。
 それから変わらない日々。時間だけが過ぎていき、外の世界は変わっていっているというのに、この部屋だけが取り残されたかのように。
 僕だけが取り残されたかのように。

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