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眠れない夜には
「今日はいったいどうしたって言うの?」
不機嫌そうな女が扉の前で腕組みをしてこちらを睨んでいる。奥に見える時計に目をやると今は夜中の三時過ぎらしい。
「こんな時間にいきなり押しかけてどういうつもり?」
「ごめん……これには訳があって」
「……はあ。とりあえず入って」
女は大きなため息をつきながら眠そうな目を擦って僕を部屋の中へ招き入れてくれた。
彼女は昔からそうだった。僕が困っているといつでも助けてくれる。話を聞いてくれたり、アドバイスをしてくれたり。本当にいつもいつも助けてもらっている。
「それで今日はいったいどうしたの? ていうか今何時だと思ってるの? このツケは高くつくから」
そう言いながらも珈琲を淹れてくれているのかとても良い香りが部屋を漂っている。
「ごめん……」
僕はいつもの定位置のソファにゆっくりと腰掛ける。
彼女の部屋はこざっぱりとしていて全ての家具は白で統一されている。小さめの間接照明が至る所に置いてあり、部屋を優しくオレンジ色に染めていて何だかとても心が落ち着く。それに棒のようなものが刺さった瓶からとても良い匂いがする。それが何なのかはよくわからないが見た目だけでもお洒落だ。
「いつも急に訪ねてきてはごめんって言ったきり私が話をしてと言うまでそこでジッとしてるの、そろそろやめてくれない?」
そう言って淹れたての珈琲を僕に手渡すと彼女はいつものようにすぐ隣に腰をおろした。
「で? 何があったの?」
「えっと……それが……眠れない」
「なんで?」
「なんでかな……怖いんだ」
「何が?」
「目を閉じると白い煙のようなものが見えてきて……その煙が少しずつ色々な形に変わっていくのだけれど、人の形になったと思ったら凄い形相でこっちにどんどん迫ってきたり……」
僕は思い返して怖くなり、息をグッと堪えたが彼女が隣でこちらを気にしているのを感じたので、ゆっくりと深呼吸をし、湯気の立ちのぼる珈琲を少し啜った。
「──大丈夫だよ」
そう言って彼女が微笑みながら手を握ってくれたので、僕は体験した事をゆっくりではあるが全て話す事にした。
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短編の詩集です。
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