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なぜ、お酒を飲まないのか~IVS2023レポートその2~

 小田玄紀です
 
 IVS2023のファイナルセッションに登壇をしてきました。「障害者支援におけるWeb3/AI技術実装の現在地と未来」というタイトルで、暗号資産が社会課題の解決にどのように活用されるかということを考えるテーマでした。

 シンガポールで日本人学校中学部の特別支援級を設置に尽力した徳沢理絵さん、そして、障害者の就労支援をWeb3を活用して展開する近藤貴司さんとのセッションで、モデレーターはCoinpost原口さんによるものでした。

 なぜ、このセッションにパネリストとして呼ばれたのか、おそらく理由は2つあります。

 1つ目の理由は社会起業家支援を私自身が2002年から20年以上に渡り取り組んでいるためです。2002年にまだ日本で「社会起業家」「ソーシャルアントレプレナー」という言葉が定着していなかった際に、この概念の普及に努めていました。

 ただ、当時は中々この概念が受けいられずに、NPOの人たちからは「稼ぐという概念なんて間違っている」と罵倒され企業経営者の人たちからは「社会性があるから顧客は対価を払うんだ。だから全ての企業が社会起業家だから、社会起業家という概念なんて間違っている」と否定されました。

 それでも、社会起業家という概念が定着すべきだと信じ、その事例を創り出していったり、海外から様々な社会起業家支援団体をもってきたりとして、6~8年程の取組みをした結果として2010年頃から段々と社会起業家という概念が日本でも受けいられるようになりました。時間はかかりましたが、今では職業選択の1つに社会起業家が選ばれるようになり、また、SDGsという言葉で企業が社会貢献をすることも当たり前になりました。

 もう1つの理由が暗号資産に絡んだところです。2019年に私が世界経済フォーラムよりYoung Global Leaderに選んで頂き、YGLとしての活動も行っていますが、世界経済フォーラムもCryptoおよびBlockchainは社会課題を解決する方法として非常に有効であるということを認識しています。

 実際にBeyond Bitcoinという取組みも国連開発計画が行っており、海外ではCryptoそしてBlockchainの社会的有用性は認知されています。このあたりは以前もNoteで書いたので、参考までに共有をしておきます。

 また、本日も一緒に登壇した方達は皆、DEA社のDEPを活用していましたが、このDEPはビットポイントが日本初銘柄として取扱いを開始しました。その際に書いたNoteが以下のようにPlay for Charityの可能性です。

 当時から Play to Earnという概念が非常に注目をされていましたが、個人的にはこの言葉にあまり共感を覚えませんでした。それは、Earnという自分の利益のためだけだと、価格が下がったらそのモチベーションが下がり、継続性が無いのではないかということからくる問題意識でした。

 人が長続きするのは、「自分のため」だけではなく「他人のため」に動くからこそ、継続した取り組みができるのではないかという思いから、この「Play for Charity」という表現を敢えてしました。

 今回、一緒に登壇をした徳沢さん、近藤さんも同じような問題意識を持たれた方です。

 海外にある日本人学校の中で特別支援学級のある小学校は1割程度であり、中学校では実質的に無いというのが現状でした。

 特別支援級が無いと、障害を持った子供は中学校に進学が出来ず行き場を失ってしまいます。シンガポールに移住して、この現状を変えたいと思った徳沢さんは多くの仲間と一緒に行動に出ます。

 2022年4月に官邸を訪問して森まさこ総理大臣補佐官に陳情をしたところ、翌月に森補佐官がシンガポールに現地視察に来てくれることになり、課題認識を強くもって頂きました。さらにシンガポールで現地の進んだ障害者向け教育の高さを感じて、日本人学校も同様の措置をすることの必要性を痛感し、7月には文部科学省調査団を派遣することになりました。

 様々な人がこの取組みに共感をして頂き、2022年10月には世界初となる中学部特別支援学級がシンガポール日本人学校に設立されることになりました。多くの人の協力・共感の上に支援級は設立され、徳沢さんはこの実現に尽力しました。

 また、シンガポールにてMGG VERSEというゲームギルドにも携わり、ゲームを通じて社会貢献活動が出来るような取組みも行っています。

 実際に1年弱で飢餓に苦しむ子供たち2万3250名の給食支援をゲームを通じて行っています。

 近藤さんも同様にWeb3ゲームを活用した障害者就労支援を行っています。

 近藤さんはWAVE3という障害者就労支援センターを日本で運営しています。上記がその写真なのですが、従来の障害者就労施設とは一線を画するオシャレなセンターであり、障害者にも誇りをもって働けるように配慮されています。

 実際にここでは従来のような単純作業ではなく、障害者の方がWeb3ゲームを行い、そのゲームを通じて暗号資産を得ていく体験をしています。

 日本では何らかの障害を持った人たちが960万人以上いて、これは人口の約8%です。

 そして、障害者に支払われる月額平均工賃は15000~16000円程度であり、これでは自立ができません。

 インターネットの力、Web3を活用して障害福祉を変えることがWAVE3のミッションです。従来の障害福祉は単純作業のみが仕事となっていましたが、それでは給料も増えません。実際に稼ぐことに繋がる取組みをすることで、障害福祉のあり方は変わっていく可能性があります。

 このようなメンバーで本日はWeb3の社会性について討議をしていました。セッションでも一部触れましたが、このWeb3の社会性というのはWeb3業界にとっても極めて重要なテーマです。

 昨年より、暗号資産に関わる税制改正の気運が高まってきました。しかし、個人の申告分離課税については未だハードルが高い状況です。この理由で最大の要因は、実は暗号資産の社会的有用性が認知されていないためなのです。

 税制の優遇措置をするためには、そのことが社会にとってどのような意義があるかを疎明していく必要があります。未だに多くの人が暗号資産については投機的なものと思ってしまっており、社会的価値が高くないとみなされてしまっています。

 実際には、海外でも様々な社会問題解決に暗号資産やブロックチェーン技術が使われていますし、今日のセッションでもありましたが、暗号資産の社会性は極めて高いのですが、これが中々伝わりません。

 暗号資産交換業者も税制改正のために様々な取り組みをしていますが、本質的にやるべきことは、この暗号資産の社会性を正しく理解し、また、発信していくことだと考えています。

 本日も徳沢さん、近藤さんから暗号資産を活用した障害者就労支援や飢餓対策の話がありましたが、まさに、こういう事例がこれから増えていくことが、暗号資産の社会的有用性を認知させることに繋がってくると思います。

 冒頭でも触れましたが、社会起業家の概念が浸透されるまでに8年程かかりました。暗号資産についても同様に、その社会的有用性が浸透していくまでには時間がかかります。ただ、これは時間をかけてでも正しく認知されるべきことなので、私としてもなるべく今回のようなセッションに登壇し、その可能性を議論していきたいと改めて思いました。

 ここまで読んで、なぜ今回のNoteのタイトルが「なぜ、お酒を飲まないのか」ということに疑問を覚えた人もいるのではないかと思います。これ、実は私にとっては今回のテーマに非常に関係があることのため、敢えて今回のタイトルをこれにしてみました。

 食事をご一緒させて頂いた人は知っていると思いますが、私はお酒を飲みません。初めての方には大体、「飲めないんですか?飲まないんですか?」と聞かれます。いつも「飲まないんです」と回答し、たまにそこから「飲んだらどうなるんですか?」という質問が続きます。

 10年以上関係がある人には自分がお酒を飲まない理由を伝えていましたが、そういえば最近はその理由を言っていなかったなと思ったので、ここでその理由を改めてお伝えします。

 まさに、2002年から社会起業家支援をしていた際にいくつかのNPOの支援もしていました。NPOのサポートの一環として、NPOへの寄付集めもサポートしていました。

 ある時、某大手企業の経営者に10万円程の寄付の依頼に行った際に「すいません。そういう予算はないんですよ」と言われて断られました。ただ、その人が「小田さんとは仲良くなりたいから食事に行きましょう!」と言われて3人程で夕食に行きました。そこで、その方が結構高いお酒を頼まれていて会計が15万円程になりました。

 その会計はその経営者の方が支払われたのですが、何か個人的にモヤモヤした思いが残りました。

 NPOへの寄付として10万円は払えないのに、飲食代としては15万円使うことが出来る。このお金の違いって何なんだろう。というものです。

 結論、このモヤモヤの解消は今でも出来ていません。ある人によっては1万円が非常に大きな価値を持ちますが、ある人にとっては1万円はそこまで大きな価値を持たない時もあります。

 人によって、また、同じ人でも使うシーンによってお金の重みは変わってきます。

 ただ、このモヤモヤが残っている間は、自分はお酒を飲むのをやめようということを決めました。そして、自分がお酒に使うお金の代わりにNPOへ寄付したり、起業家を支援したり、アーティストやアスリート、そして政治家の方を寄付しようと決めて、ずっとそこにお金を使っています。

 今でも大体週5は会食が入っていて、もちろん一緒に会食をする人がお酒を飲むことは全く気にならないですし、むしろお酒の果たす価値は非常に大きいと思っています。アルコール産業の経済に与える価値も高いと思っていますし、周りの人がお酒を飲むこと、また、その雰囲気に自分が一緒にいることは大好きです。20年間、これをやってきているので、酒を飲まなくても酒飲みに付き合う技術はかなり高い方だと思っています。

 ただ、1つお願いがあるとすれば、少しでもいいので、NPOであったり、チャレンジをする人に、寄附をしたり投資をしたり、誰かのために自分の時間を使ったりすることを回りの人がしてくれると、さらにいいなと思っています。

 寄附をしたり、支援をすることで、こちらも多くの学びがあります。若者の貧困支援をしているD×Pという活動を通じて、日本人でも多くの若者が貧困に苦しんでいるということを知ることが出来ましたし、NPO法人かものはしプロジェクトを通じて、海外の性差別の実態を知ることが出来ました。世界は広く、自分の価値観や自分の周りだけが世界じゃないということを、学ことが出来ます。

 幸いにも、今一緒に時間を使っている人の多くは、こうした取り組みを自発的に行って頂いています。だからこそ、自然と一緒にいるようになるんだと思います。

 Life for Charity
 
 誰かのために自分の時間や自分の資産を活用することが、結果的に自身の幸せに繋がってくると考えています。

 そんなことに気づくことが出来た本日のセッションでした。

 2023年6月30日 小田玄紀



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