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ウパシパス

 ランニングブームも手伝い北海道ではここ数年、雪のシーズンにも走るランナーが増えてきた。○○スノーマラソンとか○○スノーランニングという名称で大会も開催されるようになっている。そんな最中、私は北海道の雪のシーズンに相応しいランニングの呼び名を探していた。インターネットで検索しているうちに「アイヌ語とハワイ語の気象語彙に関する対照研究について(松名 隆・塩谷 亨、第44回大会プロシーディングズ pp. 12-17, 2004.室蘭認知科学研究会)」を見つけ、研究論文を読みはじめてすぐに雪にまつわる用語(表現)を見つけた。

 ウパ シ [upas]:雪  u(互いに)・pas(走る):アイヌの人々は、雪は天からアイヌの村に競争して遊びに来ると考えていたらしい。次のような例文が掲載されていた。ウパ シ アナ ク ネ リクンカント ワ アイヌモシルン ウホユッパレ ワ upas anakne rikun kanto wa aynu mosir un uhoyuppare wa. シノ ツ エエク ペ ネ ルウェ ウン。 sinot-e-ek pe ne ruwe un.(雪というものは、 天の国から人間の国土へ競争して、 遊びに来ているものなのだよ。)。自然に寄り添い、自然への感謝と畏敬を何より大切に生きてきたアイヌの人々らしい言葉ではないか。

 私は、これを引用して「雪と共に走る」というランニングを「ウパシパス」と呼ぶことにした。

 新型コロナウィルスが世界中へ感染を拡大して3年目を迎えた2022年1月、昨年はやむなく中止となった「新春開運マラニック」というウパシパスを、感染対策を講じて開催することにした。これまで仲間と共に走ることが禁じられてきたランナーは、「ウパ シ [upas]:雪  u(互いに)・pas(走る)」を楽しんだ。


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