コロナ禍2020〜2021随想⑥
無駄はない
ランニングの世界に関わらせて頂いたのは、34歳から始めたランニングを通じて自分なりの世界観を形成しつつあった2006年。ホノルルマラソンで偶然お会いした山西先生から本誌への投稿を薦めて頂いたことがきっかけだった。前述したように病気を境に走ることができなくなったことで、仕事をはじめ本誌との関わりや私が創設した湘南ホノルルマラソン倶楽部の代表からも退くことも含め、今後の人生とどう向き合って生きていくのか入院期間中にいろいろ考えた。
「失われたものを数えるな。残っているものを最大限に生かせ。」これは、第二次世界大戦における戦闘で障害を持つことになった傷痍軍人たちの治療を通じて、その身体的・精神的なリハビリテーションにスポーツが最適であると唱えたグットマン卿の名言だ。グッドマン卿は、1948年に英国のストーク・マンデビル病院の入院患者を対象とした競技大会を始め「障害者スポーツの父」と呼ばれるユダヤ系ドイツ人の医師である。パラリンピックは、このグッドマン卿の功績に端を発する。大学卒業後に20年間ほどリハビリテーションとパラスポーツに携わり、退職したのちは関わりがなかったのだが、走る機能を失った20年後にその時の経験が自分に生かされることになるとは思いも依らなかった。コロナ禍も然り、人生における様々な経験は決して無駄にはならない。
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