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第15話 海も、月も、心も、満ちてゆく

映画『四月になれば彼女は』が公開初日を迎えた。

好調なスタートのようで、佐藤健の誕生日とあわせて、スタッフ、キャストと皆でお祝いできたことが、なにより嬉しかった。

映画がきっかけで原作小説を読んでくれた方も多く、感想をいただくことも増えた。

小説を書いたきっかけはこちら(第5話 四月になれば彼と彼女は)に綴った。映画を観る前でも観た後でも、読んでもらえたら嬉しい。

そして映画や小説の感想はこちらから。次の創作の糧とさせてもらいます。

今回印象的なのは、小説を読んだり映画を観たりした方々が物語以上に、自分の恋愛観について語ってくれることだ。それぞれの感想が、それぞれの記憶と感情と相まって心に残る。

常々、物語を作るときは、その中だけで終わりたくないと思っている。
その物語が、忘れていた思い出や、隠していた気持ちを呼び起こす。
そうして読者や観客の、記憶や感情と混じり合って完成する物語を作りたいと思っている。

今回の映画作りも、そういうものだった。
監督やスタッフたちの記憶、俳優たちの感情、そういう目に見えないものたちが溢れ出して、フィルムに焼き付いている気がした。
その最後のピースを埋めてくれたのは”彼”だった。

彼と初めて話したのは、去年のこと。
さいたまスーパーアリーナでの圧巻のライブを目の当たりにした後だったので、どんなスーパースターが来るのかと緊張しながらユニバーサルミュージックで対面した。
けれども打ち合わせに現れたのは、寝癖をつけたままの素朴な青年で、僕はその姿を見てすぐさま心を溶かされてしまった。

彼に会うたびに思う。
圧倒的な存在感があるにもかかわらず、その場に元から在ったかのように馴染んでしまう。
本当に「風」のような人だなと思う。

「どんな歌にしましょうか?」
漠然としたところから、話し合いは始まった。

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