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経営に活かしたい先人の知恵…その7

◆人材が育たなければ、100年企業に成り得ない◆


 孔子より100年近く前に生きた管仲の言葉をまとめたとされる『管子』に、「1年の計画を立てるとしたら、その年内に収穫のある穀物を植えるがよい。10年の計画をたてるというのなら、木を植えるがよい。一生涯(100年)の計画を立てるのなら、人材を育てることだ」とある。

 穀物は、苗を植えると1年以内に収穫できる。木を植えれば、何年か経つと一定期間果物を収穫できるし、木材として活用できるものもある。しかし、長い将来を考えるのなら人材を育てることが一番、との教えだ。

 では、どうすれば人は育つのか?

 私が一番実践的だと思うのは小林一三の教えだ。小林一三は阪急電鉄を手始めに次々と会社を起こしたが、そのほとんどの後継社長に、自ら育てた人材を登用している。また、後継社長が育っていなくて苦労したこともないという。

 小林は、自著の中で、人材育成について次のように書いている。「責任を持たせて、どしどし仕事をさせることが一番だ。無理に尻ぺたを叩いて追い使うことだ。ときどき、小言を言いつつ、使い回すうちには、大概の若い人には何でも出来るようになるものと信じて、その主義を実行している」

 仕事を与え任せることで人は活き、さらには育つとする小林の人材活用・育成法は実践的だ。

 ところが、多くの経営者は、自ら育てる努力をしないままに、人材がいないと嘆く。それでは育つものも育たない。どの企業もそうだが、創業時に豊富に人材がいるわけがない。小林も、創業時は寄せ集め世帯で、烏合の衆だったと述懐している。そんな状況の中で、小林は自宅に人材育成の場をつくり、そのうえで仕事を任せることで、人材を活かし育てることに成功したのだ。

 人材育成については、山本五十六の次の言葉も参考になる。「やってみせ 言って聞かせてさせてみて 褒めてやらねば人は動かじ。話し合い 耳を傾け承認し 任せてやらねば人は育たず。やっている姿を感謝で見守って 信頼せねば 人は実らず」

 まさに名言だと思う。
 
 また、関東大震災後、東京の復興に尽力した後藤新平の次の言葉も印象深い。「財を遺すは下 事業を遺すは中 人を遺すは大なり されぞ財なくんば事業保ち難く 事業なくんば人育ち難し」

 創業は、企業家個人の力がものをいうが、継続・発展するのに必要な財を蓄えないといけない。しかし、いくら財があっても、人が育たなければ、100年企業には成り得ないと考えたい。

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