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大スターを語る話

「語りたくなるのがスター」
昨年11月、TBS系日曜22時で放送されている番組『日曜日の初耳学』のインタビュアー林修というコーナーで、秋元康さんがゲスト出演された際におっしゃった言葉。

スターという概念が、はじめて僕の中で明確になった。
世間でスターと呼ばれている方々が、インタビューやトーク番組に出た際、僕は「なぜこの方々は皆、人に話せるほどの逸話やエピソードトークをいくつも持っているんだ」と、思っていた。

「原形がないほど、話を盛ってるんじゃないか?」、「チーフマネージャーが売り込む為に考えた嘘なんじゃないか?」と思っていたが、違った。

スターだから、そのようなエピソードを持っているのだ。
語れるほどのエピソードがその人からいくつも生まれるからこそ、その人はスターなのだ。
エピソードがある⇔スターと呼ばれるの循環。
僕は先週からこれを、スター・エピソードの循環と呼んでいる。


『ぴったんこカン・カン』で大泉洋さんが福山雅治さんのスター話をしていた。
福山さんと大泉さんが長崎でロケをしていた際、福山さんが通る道が全て青信号になったという。そんな現象、常識ではありえない。

だがこれは福山さんが立ち止まったら、観衆が殺到したり、パニックにならない為に、警察が福山さんの通る信号を青にコントールしていたという実話だ。

また福山さんと大泉さんがロケ後、長崎空港のVIPルームで待っていると(この時点でスター話なのだが)、福山さんが大泉さんと話している最中に「名産の五島うどんを食べて欲しい」と言ったという。
すると直後、VIPルームにいる大泉さんの目の前に五島うどんが運ばれてきた。
言ったそばから、すぐ出てきた五島うどんに驚く大泉さんに福山さんは「洋ちゃん、スター稼業も悪くないでしょ」と言い、その瞬間、VIPルームのガラス張りの窓から福山さんに向けて後光が射したという。

後光の真偽はさておき、なんというスターエピソード…。
また大泉さんも大スターであるのに、もはや大スターが大スターを語るという現象…。


また僕の身近な人でスターを出すなら、中学時代の部活の同級生だ。
彼はあるスポーツの日本代表選手で、全国大会も優勝。
競技だけでなく、人望もあり、学校では常に周りに人が集まってくる存在。
また大会で彼が試合をしてると他校のいわゆる黄色い声援のギャラリーが殺到する。ファンクラブもあったという。
僕がファンクラブという言葉を肉声で聴いたのは、この時がはじめてだ。

地元スーパーの七夕の短冊には「彼とお話できますように」や「彼と付き合えますように」という事が書かれるなど、それ以外にも彼には語りたくなる事が山ほどある。

だが彼は入学して1週間で生徒手帳をズボンと一緒に洗濯してしまい、再発行する。
このギャップと言うか、隙があるところも、彼がより多くの人を惹きつける所以なのだと思った。


そして俳優という仕事をはじめてからも、僕らの士気やモチベーションを促す際などに先輩俳優さんや監督、スタッフさんが、誰もが知ってるスターの伝説話を語って下さる時がある。

ドラマ・映画主演は勿論、大河ドラマ主演、そしてハリウッド出演までしている、日本を代表するある俳優さんとスタッフさんの、ある映画撮影現場での出来事。
その俳優さんは、ワンシーンのみの出演であり、セリフも多いわけではない。いわゆる「そこで出てくるの!?」というような超贅沢な配役。
その現場はあるビルの一室での撮影で、トイレが一つしかなく、スタッフさんが順番待ちをしていた。

すると、中からぶつぶつと声が聴こえてきたという。耳を澄ませたわけではないが、同じ事を何度も呟いていたので、耳に入ってきたという。
よく聞くとセリフを呟いてるのだ。そのセリフは、上記で述べた俳優さんのセリフだった。

案の定、トイレから出てきたのはその方。
「あ、待たせてすいません!」と言って現場に戻られたという。
そして本番。当然完璧に仕事をこなし、且つ他の演者、スタッフさんへの気遣いは勿論、どの人にも分け隔てなく話しかけ、さらに差し入れも豪華で、現場の士気をさらに上げ、帰られたという。

セリフは当然覚えている。おそらく何日も前にはすでに完璧に。
それでもさらに徹底し、しかもトイレをされている際にも呟いているというこのプロフェッショナルさ。
日本トップのキャリアとポジションなのに、セリフをここまで丁寧に、台本に書かれた一言一句大事にしてるエピソードを聞き、僕は自身をとても反省した。


またシリアスからコメディまでこなせ、以前は世間で独身大物俳優四天王の1人と言われていたある俳優さんは、1つのセリフに対して、最低でも10パターンの感情や言い方を準備するという。

「これくらい用意しておかないと、不安で現場には行けない」とおっしゃっていたという。
多く見積もって3パターン考えるのも大変なのに対して、10はとんでもない数だ…。
現場に来るまでのものすごい準備と思考数…。そしてここまで活躍されている方でも、ここまでしないと不安を払拭できないという事。
むしろここまでするから、何十年も活躍されているのだと知った。


また主演も助演もシリアスもコメディエンヌもバラエティーでのトークも出来る俳優さんは、その当時は無名だったらしいが、芝居力が噂を呼んで、飛び交っていたという。

ある監督さんはオーディションの募集役柄と該当してはいなかったが、どうしてもそのお芝居を観てみたく、オーディションに呼んだという。
案の定、とんでもなく桁違いだったらしい…。
かなりの俳優を見られている監督さんなのに、当時からそう思わせる芝居力…。なのに当時はほぼ無名でメインキャストでの映像出演歴はない…。

ただ数年後、ある作品を見ていた超大物俳優さんもほぼワンシーンのみのその方の芝居力に驚愕し、この人と仕事をしてみたいと現場に呼んだという。
そして今や実力、認知度、人柄含め、現在の人気に至る。
昨年末、舞台でその方の生の芝居を観たのだが、ほんと凄かった…。
存在力も、セリフを発する姿も、滲み出る雰囲気も、何もかも確かに段違いだった…。その方のラストシーンは鳥肌がたった…。
立ち姿だけで役の内面が滲み出るというか、お客さん側がさらに深堀というか、解釈したくなるというか、あと艶が凄い…。
どう役に対して取り組めば、また日常を過ごせばあれは出てくるんだ…



やはりスターは、思わず周囲に語りたくなってしまう諸々を持っているのだ。

じゃあお前はどうなんだ?そういうのあるのか?
ふと自分には人から語ってもらう事があるのか。振り返ってみた。

  • 大学受験の時期、どうしてもごはん後の眠気を無くしたくて(特に昼に二郎系ラーメンを食べた時)、食後は給湯室でこっそり直で歯磨き粉を噛んで食べてあの‘スースーさ‘で眠気を飛ばそうとしていたら、予備校のスタッフさんに見られてめちゃくちゃ引かれたこと。
    (あと歯磨き粉は最初は効果抜群だが数日で慣れる。眠い時は短くても時間をちゃんと決めて仮眠することがいちばんだと思う)

  • 高校の公欠(公的な理由の欠席)は通常、部活の大会や試験であったりが大抵だが、僕の最初の公欠は全国大会でも全国模試でもなかった。
    学校内の健康診断の尿検査では検査しきれなく、3時間目から早退して直行した市内施設での尿検査三次検査だった。
    (今でも僕の高校で尿検査で公欠した人の記録は塗り替えられていないと思う)

  • 大学時代、ステーキレストランのブロンコビリーに高校からの友達と行った際、ドリンクバーで「カフェラテ持ってきて」と言われて、取りに行った。だが僕が持ってきたのはカフェラテではなくカフェオレだったらしく、「その違いも分からないのか」と言われたことに対して、僕は「日本人全員がその違い分かると思うな。それ国民的飲み物じゃねえから」と言い返し、喧嘩になり約2時間最後まで言い争いで終わった。
    そしてなぜかその数週間後、その出来事で何かの縁を感じ、ちょうどバイトを探していた僕は面接を受け、ブロンコビリーでバイトする事になった事。

  • 先月、北千住で脚本ワークショップの帰り道、歩いていたら警官の方3人がかりで職質された。しかも走行中のパトカーからわざわざ降りてきて…。
    ただradikoでオードリーのオールナイトニッポンを聴いてて、ニヤニヤしてしまっていただけなのに…。
    しかもその際、ワークショップで僕の前の席だった女性の方にその姿を見られた。足早に去っていった。
    多分その方は、僕が指名手配犯か、いけない何かを所持していて逮捕されたと思っていると思う。いつか誤解を本当に解きたい。解かせて下さい…。

これが僕の語れるエピソード。
違う。これは学生時代の友人と居酒屋でする身内の笑い話。または何度も擦る思い出話。もしくは恥ずかしエピソード。最後に至っては直近の職質話。

スターとは程遠かった。

だがまだ諦めきれない。どこかにスター要素はあるかもしれない。
例えば高校卒業アルバムの写真。
よくスターは高校時代から「かっこいい」、「オーラがある」、「すでに出来上がってる」みたいな反応があり、高校時代の卒業アルバムの写真がバラエティー番組などで出ると、他の出演者がキャーキャーする光景をよく目にする。
それかもしれない。見てみよう。





かっこよくない。
もちろんオーラもない。当然全く出来上がってもいない。
しいて言えば、目が細い。あと小学校の卒業アルバムみたいな表情。(写真は高3の時)
スターとは程遠かった。3月半ばもよろしくお願いします。


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