最高にモテた日(13日目)
朝カサを出ると、昨日のステージが幻のように消えていた。嘘でしょ??
あんなに照明もスピーカーシステムも、ステージも一晩で!?
キューバってどうなっているのー!
今日は旧市街へ散策に行った。
ビエハ広場で読書していると、いきなり10人程に囲まれ、
写真撮って!
とお願いされる。
良いよ、とカメラを受け取ろうとするがおかしい。
みんな僕を中心にポーズを取り始める。
僕と撮りたいの!?
彼女らはどうやら日本が大好きな学生観光客グループ。
初めて日本人を見て、いてもたってもいられず声をかけたようだ。
アニメで覚えた日本語をたくさん披露してくれ、
僕に対してひたすらkawaiiを連呼する。
悪い気はしない。(普通に嬉しい)
ハグを要求され素直に応えた。
女子高生くらいの人と路上でハグ。
文化の違い。
日本だったら人生終わってしまうが、ここはキューバ。
人生幕開けの祝号がカンパナリオから聞こえてくるようだ。
不思議と彼女らにはこの後同じ日に2度会う。
縁を感じたので、持ってた飴ちゃんをみんなにあげた。
「は、ち、み、つ、レモン!」
読める!すげー!
さて、昨日までと何がちがうのか。
見栄もなく今日は最高にモテた日だ。
こちらを見て、サングラスの耳が掛かる部分をカミカミして、誘惑する人なんて初めてみた。
(映画でしか見たことないよ。)
上手い返しがわからない。
とりあえず手を挙げて
「¡Hola!」(やあ!)
と爽やかに挨拶し通りすぎた。
分からないけど
そういう駆け引きの遊びなのかも。
あと、忘れられない。忘れてはいけない。
真剣に口説かれた。男に。
練習してるといきなり現れ、隣に座り、「音を聞かせて」と言っている。
その時は気にせず練習してたが、どうやら隣の様子がおかしい。
「君のような美しい手を初めてみた。その手からこんな音が...もっと聞きたい。」
「信じられない。僕は君に夢中だ......」
とにかく、mi corazónとかte quieroとか書くのも恥ずかしくなるほどの積極的なアプローチを二時間程うけた。
その場所を離れると家までついてきそうなので、それは出来なかった。
ミュージシャン仲間も何故かその日は近づいてこない。
みんな、この人を知ってるな。
スペイン語はカタコトしか話せない。
日本語だが心を込めて丁寧に話すと大筋は理解してくれたのか、去っていった。
その後、
何故助けてくれなかったんだ!
と言いに行ったら、
「あいつはよく見るBorracho(酔っぱらい)だけど、今日は近づいたらハバナクラブで殴られそうだったよ。」
と笑っていた。
ここでは僕のエピソードとして、紹介しているが、キューバ人の真剣な口説きを目の当たりにして、思う。
これが女性だったらオチているかもしれない。
とにかく凄まじい。
周りを気にしない。
言葉の壁を簡単に乗り越えてくる。
彼は僕に1つも冗談を言わなかった。
キューバ人が本気になった証だったのだろうか。
彼の想いが酔って作り出したものか、本物か分からないが、彼は僕の音やパフォーマンスに魅かれて、やってきて、maestroとまで呼んでくれた。
(ついでにmi vidaとも言われたが)
初めての熱狂的ファンだ。
同じ場所で練習している以上、明日もまた会うかも知れない。
僕は彼の想いに応えることは出来ないが、どうか日々成長する音を聞いてほしい。
僕は褒められて伸びるタイプだから。
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