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映画『漂流ポスト』鑑賞

雪中梨世の佇まいに惹き込まれる映画


 映画開始4分頃からスタートする回想シーンの美しい風景描写と瑞々しい2人の姿が観られただけで、心が満たされていくのを感じた。主人公の若き日を演じていた中尾百合音と親友役神岡実希は生命力に溢れていて、魅入られてしまう。
 しかし、この物語の白眉はポスト前に立つ主人公の佇まいだろう。主演の雪中梨世は、若い2人の存在感を圧する程に恐ろしく美しかった。
「もしポストに投函してしまったら」。
 電話に出られず、折り返しかけ直すこともなかった主人公の胸に去来するのは、はかることも出来ない大きなものを喪失したことへの寂寞とした思いか、はたまた生き残ってしまったことへの罪の意識か。
 投函という行為で自分の中に起こるであろう変化を恐れ、あるいは忌避するのはごく自然な感情だと思う。言葉にし得ない想いに「区切り」がつき、「終わって」しまうのは、恐ろしい。
 それでも、ペンを手にとり、「儀式」としての投函に向かおうとする姿に、ただ胸を打たれる。
 映画監督、脚本家、スプリクトドクターの三宅隆太氏が2021年ベスト映画として紹介されていた作品。
 出会えてよかった作品だった。

※ 画像は公式Twitter(X)から。


鑑賞日:2024年7月[Amazon Prime Video]
評 価:☆☆☆☆☆☆☆☆★★(8/10)


#映画 #映画感想文 #漂流ポスト


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