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真面目ゆえのユルさ~アニメ『ぽんのみち』感想~


■俺は硬派な男


 即ち、美少女が群れをなしてオタクの趣味に興ずる……そんな目玉焼きのせハンバーグカレーみたいなアニメには元より食指が動かないタイプの男だ。目玉焼きのせハンバーグカレーは好きだけどね。

 なので、麻雀をテーマに取りあげたアニメ『ぽんのみち』が始まると聞いても、当初はあまり関心が無かったというのが正直な所であった。

 


 とはいえ、かなりんことMリーグ・BEAST japanextの中田花奈プロがOPテーマを歌っているとなると、少々話が変わってくる。なんせ俺は「ニブイチでひろかなが当たるなら引き得っしょ!!」とMリーグおみくじを1回引いたところ、見事D介さんをパッツモする程度にはBEASTなのだ。チクショウなぜこんなことに……。

 というわけで、俺は久々にネトフリを開いたのであった。


■デカパイすぎる……どうなってんだ?


 視聴を開始した俺がまず引っ掛かったのは、その圧倒的巨乳率である。

 メインキャラが5人居て、その全員の乳がデカい……
 そんなことがあっていいのか? 

 なんなら俺は当初、「最初に集まる4人はみんな巨乳だが、最後に加わる跳だけは貧乳」だと思い込むことによって眼前のディスプレイで展開されているのが秩序ある世界だと納得しようとしていた。それだけオール巨乳の”圧”は硬派な男の脳にかける負担がスゴイということだ。

 なお、俺の脳が築いた幻想の秩序は第5話で無事崩壊した。


 これが全て、キャラデザを担当している春場ねぎ先生の仕業によるものだと俺が知ったのはだいぶ後になってからだった。俺は硬派な男なので『五等分の花嫁』はまったく知らないが、メインヒロインが5人もいる作品において、「全員巨乳!! なぜなら俺が好きだから!!!!!!!!!!!」の一点で押し通せるのは、真の男の所業といえよう。

(※↑なお、キャラデザ云々の話については知り合い 知人 月1で一緒に山登ってるおっちゃんであるししょー氏の動画で知った。『ぽんのみち』に限らず毎シーズン全部のアニメについて感想を上げているので、良かったらみんなも見てあげてほしい)


■大丈夫、美少女しかいないアニメだよ!


 とはいえ、真の男がキャラデザをしているということと、面白いアニメであるということはまた別の問題である。場合によっちゃあ1話で切って、後はドスケベ画像の検索候補行きだ。まぁそれも行って来いだな。

 第1話、廃業した雀荘を父から溜まり場として提供されたなしこたち。ちなみにこの父親はかなり重要な役割であるにも拘らず、スマホの向こうの存在としてしか登場しない。ネスのパパかお前は。その一方、なしこの母は薄い本で役割持てそうな感じのデザインで登場する。

 まぁ、画面に女性キャラしか現れないのは美少女アニメのテンプレということで理解できる。視聴者だって登場人物の人相悪いオッサン率が90%超『むこうぶち』のようなアニメを期待しているわけではないのだ。

 雀荘の片づけをあらかた終え、ついに全自動卓で麻雀を始めるなしこたち3人。待ちに待った目玉焼きのせハンバーグタイムである。美少女×麻雀、美味しいものに美味しいものを掛け合わせた、至福の時が始まる……

 ……かと思いきや。


「狂気の沙汰ほど面白い……」(鋭利に尖る鼻)


「倍プッシュだ……」(鋭利に尖るアゴ)


 突然福本伸行タッチになってざわ…ざわ…し始める女子高生たち。
 い、今まで観ていた美少女アニメは一体……!?


 ……そして極めつけは


「明日は、雨かなぁ……」

(顔面が突如オッサンになる美少女……美少女!?)




 ……いや、房州さんの顔芸をする美少女は完全に一線ジャンライン 越えてるだろ!? バグかと思ったわ本気で。


 次々と繰り出される麻雀漫画パロ。しかも完全に絵柄までパロっているので言い逃れができないヤツである。『3年B組一八先生』で無法の他社作品パロをやり散らかしていた竹書房はともかく、他の出版社はこれオッケーなんだろうか……コミカライズは『なかよし』連載だから、講談社方面に関しては全然大丈夫なのか……? いやまぁそれにしたって『なかよし』連載のアニメが1話からぶち込むネタにしちゃあ濃すぎるだろ!!!

 ……とにかく、デカパイ美少女アニメかと舐めてかかってたら1話から麻雀漫画おじさんも大満足の内容をぶつけられる形となった。素直に脱帽だ。


■ざわざわしてるだけじゃない


 麻雀漫画おじさんも大満足とは言ったが、『アカギ』パロは麻雀漫画に詳しくないオタクにも広く知られている、人口に膾炙したネタである。言ってしまえばネットのオタクに優しい麻雀漫画ネタだ。

「麻雀アニメでアカギパロされて大満足? お前、”浅い”わ……」

 そんな幻聴も聞こえてくる。 

 麻雀漫画といえば『アカギ』、確かにその発想はベタだ。鼻を尖らせたりアゴを尖らせたりざわざわしたり、そんなことで喜ぶのはいかにもインターネット。安直である。恥の感情とかないのか。だいたい制作陣は、麻雀漫画を扱うならまず誰にリスペクトを捧げるべきか理解していないのk……

 


 ……そう、『ぽんのみち』制作陣は理解している。

 日本における「漫画の神」が手塚治虫なら、「麻雀漫画の神」は誰か?


 片山まさゆき先生だ。


 その片山先生に、第1話のエンドカードを任せる……完璧に理解わかってる奴の振る舞いだ。本編でも、麻雀未経験のなしこが最初に手に取った本が『片山まさゆきの麻雀教室』である。この本の背表紙が画面に大きく映され、そこからめくるめく麻雀漫画パロのシーンが始まるのだ……なんだ、リスペクトしかないぞ。


 だから、『ぽんのみち』は「巨乳の美少女たちに麻雀牌いじらせてぇ~、『アカギ』ネタとかやっちゃったらぁ~、マジウケルっしょ~~~」なんてあっさいノリで作られているアニメではない。むしろ、真面目なのだ。俺から言わせれば真面目過ぎるほどに真面目だ


(※↑なお福本先生もやはりリスペクトされるべき存在なので、2話のエンドカードを担当されている。というか麻雀漫画なんてニッチな作品を世に出している先生は全員リスペクトすべきだという当たり前の話であった)

■♪何もないよ、役がないよ


♪それでいいよ「リーチ!リーチだ!」


 これはかなりんが歌うOP曲「ポンポポポン」の中で、俺が好きな一節だ。このフレーズは、ある意味で『ぽんのみち』という作品を一番よくあらわしていると俺は思う。


 主人公のなしこがまったくの麻雀初心者だということもあって、『ぽんのみち』では基本的にガチガチの闘牌が繰り広げられることはない。むしろ対局とは無関係にネタに走ったり、漫画で読んだ玄人バイニン技の真似をしようとして山を崩したり……ガチの雀士からしたら言語道断なことばかりをやっている。

 だが、本来気心の知れた友人たちを卓を囲む麻雀というのは、こういうもので良かったのではないか。


 牌効率なんて知らない、点数計算もできない、危険牌もわからない……

 でも、役なんてなくたってリーチをかければ良いし、点数なんて安くたってアガれたら楽しい


 ……こう言っている俺にも、雀魂の友人戦でアガラスを決めた初心者の友人に軽くキレてしまった結果、しばらく麻雀を打てなくさせてしまったという苦い経験がある。幸いにして今は一緒に打ってくれるようになってはいるものの、恥ずかしい話だ。


 Mリーグが始まって6年。自身で打たなくても麻雀を観戦する層も現れ始め、確実に「麻雀」という文化は広がっていっている。その中でもなかよし』のふろくにカード麻雀が付く、というのは一つの到達点といって良いだろう。

 そんな時代に求められる麻雀アニメは何か? それはガッチガチの真剣勝負でなければいけないということはない。むしろ、ルールをしっかり覚えてなくてもいい、友達とふざけあいながらユルく楽しんで打ってもいい、ということを、まだ牌に触れたこともない層に伝えるアニメこそが必要なのだ。


 『ぽんのみち』でなしこたちは、回を重ねるごとに麻雀と関係のないアクティビティにも興じるようになる。麻雀アニメとしては極限のユルさだ。

 しかし、これは真面目さゆえのユルさだと、俺はそう思う。


■林リーチェ……一体何沢さんなんだ……?


 最後に、蛇足かもしれないがMリーグファン視点で気になっていることについて言及しておきたい。

 ずばり、「林リーチェ=黒沢咲説」である。

 本編を視聴しながら薄々感づいていた人も多いだろうが、改めてその根拠を以下に列挙してみたい。


  • 実家が裕福なお嬢様→黒沢さんももちろんセレブ

  • 名前に「リーチ」が入っている→黒沢咲と言えばリーチ

  • 意外とすぐ泣く→あれ、黒沢さんは鳴かないけど……?

  • 西単騎に放銃→……。




内川さんじゃねーか!!!!!!!!!!!!



正直に言う、これが描きたくてこの記事を書いた。

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