秋山|国語科教員

私立の大学附属高校教員です。教職大学院(修士課程)修了。

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最近の記事

『山月記』を読み直す――潜在的で捏造された「語り」

1.はじめに 人がこの世界を生きるとは、未決定性と予測不可能性そのものを生きることである。ところが可能性とは、そういう多様な生成変化のプロセスにあらかじめ決定性や予測可能性を持ち込み、この世界を貧しくする。ある出来事に対する別の可能性(「……という可能性もあり得た」という語り)を、小説の解釈に導入するとき、『山月記』の李徴の語る自己物語をどのように捉え直すことができるだろうか。「語り」は、つねに事後的に見いだされ、語られるに過ぎず、ゆえに「捏造」でしかない、というドゥルーズ

    • 「岡田斗司夫の頭が良くなる教育論」を拝聴して

      評論家でもある岡田斗司夫が、2014年に東京学芸大学で行った講演を拝聴した。講演を踏まえて感じたことを書いておきたい(実は私の母校)。 講演の概要  岡田は、はじめに「べき論ではない」教育について語ると切り出す。つまり、教育はどうあるべきかではなく、どういった社会的背景があって、その時代の教育は求められ、社会的に構築されたのか(いるのか)について語ります、と宣言することから始める。また、岡田は教育を「子どもを鋳型にはめる」ことと定義をする。その鋳型はどういった型をしている

      • 東大現代文(2023)解説

        勤務校で実際に解説したものを、こちらにも載せておきます。勤務校の高3生には約31,000字の原稿を冊子にして渡しました。本稿はそのうちの約13,000字を公開します。以下、提示する解答はあくまで例であり絶対的なものではありません。むろん大学側も公式の解答を公開しているわけではありません。各予備校のものは解答速報を参照しています。 1.はじめに  東京大学が発表している「高等学校段階までの学習で身につけてほしいこと」では、総合的な国語力の中心となるのは、(1)文章を筋道立て

        • 現代文学習に対する応答

          1.生徒目線での現代文という科目の実情  現代文という科目について、よくある誤解と言いますか、迷信のようなものについて、まずは確認したいと思います。こういうところから話を始めなければならないということ自体が、現代文という科目のおかれた特殊な状況を表しているとも言えます。たとえば、英語や数学が苦手だという生徒はいくらでもいますが、そのような生徒でも英語や数学は努力して取り組んでも伸びないなどとは決して思っていないでしょう。ところが、よく生徒からの「現代文は伸びにくい」とか「過

        『山月記』を読み直す――潜在的で捏造された「語り」

          国語授業の目標論

          1.はじめに  僕にとって書くことは、基本的に辛い営みで、体力も精神も消費してしまう。仕事をしながら書くことは、この先もあまり期待できないだろうな、と思っています。毎日の授業準備はもちろんだけど、担任業務と課外授業の準備、そして分掌の仕事をしつつ、国語科のなかでも仕事がある。  こんな感じで、いまの僕にとっては毎日の仕事をこなすのが精一杯な状況で、読書をする時間や自分の勉強をする時間すら、まともに取ることが難しい。研究論文を書く体力と時間も欲しい。覚悟を決めてこの業界に入っ

          国語授業の目標論

          国語授業の形態論

          1.はじめに  学校現場で盛んにアクティブラーニングの名称があらわれるのは、大学教育の是正策を説いた溝上慎一(2014)の研究(1)に遡る。以降、2016年の中央教育審議会答申では高等学校における講義伝達型授業の問題が槍玉に挙がり、「これまでの授業観」を脱却することが喫緊の課題であるとされた。    このような潮流の中で学生生活を送った私は、着任当初とにかくアクティブラーニング型の授業をしようと躍起になっていた。その方が生徒同士で意思疎通が図れるし、そして時には完全に教師な

          国語授業の形態論

          はじめに――自己紹介と方針

          自己紹介思い付きでブログを立ち上げてみました。国立大学の大学院生です(追記:現在は高校の国語科教員)。 大学1年次から塾業界(個別・集団・家庭教師)でアルバイトを始め、院生のときは定時制の高校・都内中高一貫校・予備校で経験を積ませていただきました。しかし、まだまだ未熟な部分が多く、目の前にいる生徒のために、謙虚に学んでいかなければならないと反省の毎日です。 書きたいこと書きたいことは大別すると3つです。 1.国語科教育に関する話 国語科教育について書きます。書籍・論文

          はじめに――自己紹介と方針