コロナワクチンへのアレルギー、気管支喘息、食物アレルギーなど
最近の報告を中心に総合アレルギー診療関連の論文要旨をお届けします。
今回は気管支喘息9本、食物アレルギー3本、薬物アレルギー9本(うちコロナワクチン関連4本)、EGPA・好酸球増多症5本です。
<気管支喘息>
KACJ-60a:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32442646/
IL33のSNPと喘息表現型、ヒト気管支上皮細胞(HBEC):IL33領域の161のSNPが関連し、rs992969、rs4008366は好酸球性喘息と関連。両シグナルは肺機能、発症年齢とは関連なし。IL33をin vitroで過剰発現させるとHBECの生存率が低下(英国)
J Allergy Clin Immunol. 2021 Jan
KACJ-60b:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34080210/
COVID-19の重症化と関連する喘息フェノタイプの検討:5596人のCOVID-19患者が対象.アレルギー性喘息患者は喘息でない患者と比べ入院や重症化のリスクが低い.COVID-19重症化患者の入院時の血中好酸球レベルは、軽症および無症状患者と比べて低い(米国)
Allergy. 2021 Jun 3
KACJ-60c:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34029510/
軽症~中等症の小児喘息(5~12歳)における、青年期後期(17〜19歳)と成人期初期(21〜23歳)の重症化因子として、小児期の低肺機能と妊娠中の母親の喫煙が同定された(米国)
Am J Respir Crit Care Med. 2021 May 24
KACJ-60d:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34302758/
抗IL-33抗体itepekimabの中等症・重症COPDに対するPhase 2a試験:itepekimab 300mgとプラセボに1:1に割り付け。年間急性増悪頻度は対照群で1.61、介入群で1.30(RR 0.81, 0.61-1.07)、p=0.13) 元喫煙者ではRR 0.58 (0.39-0.85、p=0.0061)。主な有害事象は,鼻咽頭炎(介入群16%,対照群17%),気管支炎(10%,8%),頭痛(8%,13%),上気道感染症(8%,19%)。元喫煙者のCOPD患者におけるitepekimabの有効性と安全性のプロファイル検証目的の2つの第3相臨床試験が進行中。(サノフィ社、リジェネロン社)
Lancet Respir Med. 2021 Jul 21
KACJ-60e:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34300670/
スマホの内蔵マイクを用いた肺聴診のフィージビリティ評価:3次病院の134人を対象とし、4カ所(気管、右前胸部、左右の肺底部)でアナログ聴診器での聴診とスマートフォンでの録音を記録したところ、一致率は85%(k=0.35)(ポルトガル)
Sensors (Basel). 2021 Jul 20
KACJ-60f:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33962067/
喘息増悪予測因子の実臨床研究:心理的苦痛(OR 1.91)、喫煙(OR 3.72),%1秒量50%未満(OR 4.1)は,喘息がコントロールされていないことに関連する有意な因子として現れた。治療アドヒアランスは、喘息増悪にかかわらず4割前後と非常に低かった(カナダ)
J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Jul
KACJ-60g:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33991705/
IgEの変動係数(CV)と喘息増悪の関係の解析:340人をIgE CV高値群と低値群に半々に分けると、前者は後者よりも喘息のコントロールや肺機能が悪く、喘息増悪が多かった(中国)
J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Jul
KACJ-60h:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33744476/
成人重症喘息患者のバイオマーカーの検討:北米,欧州,アジアの10ヵ国の1,175人のデータを解析。女性64%、53歳、BMI 30、%FEV1 72%。59%がIgE陽性、57%が好酸球陽性、58%がFeNO陽性であり、59%が複数のバイオマーカー陽性。バイオマーカー陽性の閾値:血清IgE≧75 kU/L、血中好酸球≧300 cells/μL、FeNO≧25 ppb
クラスター1(61%、バイオマーカーが低~中程度):症状が強く、BMIが高く、増悪が多い高齢女性
クラスター2(18%、好酸球とFeNOが上昇):BMIが低く、増悪が多い高齢女性
クラスター3(14%、FeNOが極めて高い):高齢で症状が強く、BMIが低く、肺機能が保たれている
クラスター4(6%、IgEが極めて高い):若年で喘息の罹患期間が長く、BMIが高く、肺機能が低い
クラスター5(1. 2%, 極端に高い好酸球):若年男性、低BMI、肺機能低下、副鼻腔疾患と鼻ポリープ合併
J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Jul
KACJ-60i:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34282031/
軽症喘息に対する必要時のみのブデソニド/ホルモテロールの有用性を検証する試験のシステマティックレビュー:6研究・9657人が対象。同処方戦略は増悪、入院または予定外医療機関受診、全身性ステロイドの減少効果として、標準治療であるICS単剤と同等の効果があり、安全性も許容される(英国)
BMJ Evid Based Med. 2021 Jul 19
<食物アレルギー>
KACJ-60j:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33727108/
果物アレルギーの評価:年齢中央値10歳、男性49%.キウイ(16%),バナナ(11%),マンゴー(9%).重度の反応は春季および湿疹のある人に起こりやすかった(カナダ)
J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Jul
KACJ-60k:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33677077/
食物アレルギー(FA)は米国の成人2,500万人以上が罹患ておりQOL低下につながる、食物アレルギー独立測定法(FAIM)で6207人の心理的負担を評価したところ、世帯収入が低く、年齢が低く、学歴が高いほど心理負担が大きかった。
J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Jun
KACJ-60l:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34033980/
食物アレルギー患者で二相性反応の発生率は16.4%(CI:15.3-17.7)。女性、黒人/アフリカ系米国人、反応年齢5~12歳および26~66歳などが二相性反応の発生確率の上昇と関連
J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 May 22
<薬物アレルギー>
KACJ-60m:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7997158/pdf/main.pdf
COVID-19ワクチンへのアレルギー反応と、ワクチン接種前のPEGまたはポリソルベートのアレルギーの有無の両方を評価するための皮膚テストをの有用性や限界を考察したパイロット研究。今後も要検討(米国)
Ann Allergy Asthma Immunol. 2021 Jun
KACJ-60n:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34028041/
コロナワクチンの1回目接種で即時型アレルギー反応があっても2回目の接種はあきらめないでよいのではないか(米国)
Allergy. 2021 May 24
KACJ-60o:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34309623/
初回のmRNAコロナワクチン接種でアナフィラキシーを起こした19人を含む159人の患者に2回目接種をしたところ、32人(20%)が2回目接種時の即時型アレルギー症状(疑い含む)を報告した。しかしその症状は軽度でありH1拮抗薬のみで回復した(米国)
JAMA Intern Med. 2021 Jul 26
KACJ-60p:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33657292/
モデルナ製コロナワクチン接種後1週間での局所の腫脹:モデルナアーム(米国)
N Engl J Med. 2021 Apr 1
KACJ-60q:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33729459/
77件の研究(患者6,000人超)でセファゾリンとペニシリンの両方に対するアレルギーの頻度を評価:セファゾリンアレルギーの頻度は、ペニシリンアレルギーを報告した患者では0.6%で、アレルギーが確認された患者(皮膚、in vitro、in vivo検査により確認)では3%であった
JAMA Surg. 2021 Apr 1
KACJ-60r:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31000444/
DIHSの原因薬剤としては抗痙攣薬、サルファ剤、ミノサイクリンの頻度が高い(杏林大学)
Allergol Int. 2019 Jul
KACJ-60s:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31826341/
病歴聴取で確認したペニシリンアレルギーの既往歴のある方の9割以上では、現在はペニシリンアレルギーはない(米国)
N Engl J Med. 2019 Dec 12
KACJ-60t:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33500632/
ペニシリンアレルギーと代替βラクタムの選択についての総説:・ペニシリンアレルギーといわれている人のうち95%以上が、適切に評価するとペニシリンを使用できる(イタリア)
J Asthma Allergy 2021 Jan 18
KACJ-60u:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3242095/
術前のペニシリン(βラクタム)アレルギー検査により、手術部位創部感染予防に対するセファゾリンの使用率が38%から92%に増加する可能性(米国)
Clin Infect Dis. 2020 Nov 26
<EGPA・好酸球増多症>
KACJ-60v:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34045202/
喘息と鼻炎を併発し,進行性の好酸球増多を認めた33歳男性の症例報告:FIP1L1-PDGFRA融合遺伝子による好酸球のクローン性増殖と診断されてイマチニブによる治療が成功。同融合遺伝子が難治性メカニズムの背景にある可能性がある(日本生命病院)
BMJ Case Rep. 2021 May 27
KACJ-60w:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33789679/
EGPAにおける中枢神経系関与の臨床的特徴および関連因子の後方視的解析:虚血性病変(63.2%)が最も多く、年齢・疾患期間・発熱は、独立した関連因子(中国)
Orphanet J Rare Dis. 2021 Mar 31
KACJ-60u:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33109625/
EGPA患者45例の血清IL-5値と病態の解析:ANCAは血管炎の発症と関連し、好酸球による組織障害はIL-5によって誘発される(名古屋大学)
Neurology. 2021 Feb 2
KACJ-60x:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33512787/
EGPAの薬物療法についてのシステマティックレビュー
ACR Open Rhumatol. 2021 Feb
KACJ-60y:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31423623/
好酸球増多症候群の中にはT細胞クローン活性化や慢性好酸球性白血病によるものがあり、特発性と区別される(米国)
Am J Hematol. 2019 Oct
KACJ-60z:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34326107/
オマリズマブ投与後3ヶ月で好酸球性多発血管炎を発症した症例報告(英国)
BMJ Case Rep. 2021 Jul 29
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