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仮説:何故ジェンダー平等がノルウェーで進んだのか

現時点での私の考察です。

1.労働力不足

戦後の福祉国家拡大路線に伴い、労働力不足に陥ったノルウェー。圧倒的な人不足で女性を労働力として活用するほかなかったからという見方があります。福祉国家として公共サービスを提供する公務員を増やす必要があったのですね。その中でケア労働(教師、保育士、看護師、介護士など)は需要もあり、比較的女性でも参入障壁が低く、進出しやすかったということで一気に進んだのでしょう。その名残が前述したとおり、公共部門で働く人の70%が女性ということなのでしょう。

2.バイキングの末裔だから

これは、私も本を読むまで気づかなかったのですが、読めば読むほど確かに!と思えてきて、かなり信憑性が高いと思っています。ご存じの通り、ノルウェー含む北欧の方々はバイキング(海賊)の末裔です。あんなに穏やかそうで真面目そうに見えるスカンジナビア人ですがw、過去はヨーロッパを荒らす海賊だったのです。船に乗り込み、荒波の中、新しい土地へと向かい侵略、開拓した人たちなのです。

海賊といえば、「荒くれ者」のイメージが強いですが、内情はとても民主的なカルチャーだったそうです。

参考文献:肩書を減らすと業績が急改善する 北欧流小さくて最強の組織づくり (講談社+α新書)

フラットな組織集団

あらゆる意思決定はトップダウンで行うのではなく、全メンバーのコンセンサスが必要だったといわれています。反対意見があればとことん議論をし、最終的には投票で決めていたようです。現代においてもノルウェー人は「自分のことは自分で決める」という姿勢が強く、会社組織においてもトップダウンで決定がおりてくるのは好まず、意見をいえる場を求めます。意思決定には時間はかかりますが、一度決まった方針については文句をいわず、従う文化てす。海賊時代は男性中心の組織でしたが、民主的な考え方が育まれていたので、「女性の意見も聞く」という考え方が浸透しやすかったのではないかと思いました。

平等・公平性を重んじる文化

戦利品はリーダーが独り占めするのではなく、メンバー全員で公平に分配するルールが徹底していたそうです。行き過ぎた競争はチームを崩壊に導くと経験則的に理解していたバイキングたちは(行き過ぎた成果主義)、お互いを家族のように思い、助け合う文化を築いていったそうです。それがバイキングの強みでもあったのでしょう。北欧といえば、福祉国家のイメージが強いですが、その根底にある思想はもしかしたらバイキング時代から脈々と受け継がれてきたものなのかもしれないと思うようになりました。

競争よりも国民全体で利益を平等に分かち合おうとする「平等」への意識がもともと高いため、ジェンダー平等についても、他国よりも急速に進んだのではないでしょうか。学校教育でも「競争」よりも「個性」、無償化による「機会の平等」を重視していることを感じています。

3.国への信頼度が高いから

大きな政府と小さな政府という言い方がありますが、福祉国家である北欧諸国は間違いなく大きな政府でしょう。自分が働いたお金の多くを税金として国に納め、その見返りに無償で公共サービスを得るというシステムだからなのか、ノルウェー人の国家への信頼度は総じて高いと感じます。(別の観点にはなりますが、デンマークやスウェーデンに支配されていた期間も長いので愛国心もとても強いです。)国に自分の運命を委ねるようなものだからでしょうか。国が決めたことには忠実に従うイメージです。

先述したように、民主主義の考え方が浸透しているので、国が決めたこと=民意=自分たちで決めたことと処理されるのではと思います。イギリスの調査機関エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が毎年発表する民主主義指数でもノルウェーは堂々の1位です。

The Economist Intelligence Unit, Democracy Index 2022

国政選挙、地方選挙は4年ごとにありますが、投票率は毎回80%以上を越えることもそれを象徴しているように感じます。ジェンダー平等の施策についても「国が決めたこと」=「自分たちで決めたこと」と転換され、遵守しようとする意識が高いのではないでしょうか。

そこから考えたこと

民主主義が根付いた福祉国家で、フラットで平等な感覚を持ったノルウェー人において、ジェンダー平等が浸透したのは必然のことだったように感じます。ノルウェーに限らず北欧諸国が軒並み上位にランクインする理由もきっと同じでしょう。日本人からすると、北欧諸国はもともとアドバンテージがあったように見えてしまいます(現代社会が西欧化しているともいえますね)。政府への信頼度が相対的に低く、サムライ文化で、縦社会で、男尊女卑の思想が根強い我が国において、なかなかジェンダー平等が進まない訳ですよね。

さて、日本においてはどうやって進めていけばいいのか、じっくり考えていきたいと思います。

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