1078_西加奈子「サラバ!」①
妻から、これ面白いよ。と手渡されたのが、西加奈子「サラバ!」だった。
妻は、よく本を買ってくる。子供の頃から読書家だったらしく、妻のお母さんからも「この子はいっつも本ばっかり読んでた」と言われていたらしい。
小学校のときに、いかにも本ばかり読んでいた本の虫的な女の子は確かにいたが、その娘と妻のイメージはまるで合致しない。
それに、大人になった妻本人は、そもそもそこまで読書に頓着している様子はない。「まあ、暇なら読むかなくらい」っといったスタンスで、根っから活字中毒であるような素振りも見せない。
ちなみに妻が、今まで読んだ本の中で一番面白かったのは、横溝正史の「犬神家の一族」ということらしく、その点は意外だった。(僕はいまだに読まずじまいだが。好物は最後に食べる主義なので)
いまだに妻のお父さんから誕生日には、毎年図書カードを贈ってもらうのだという。というわけで、僕はいつも妻が買ってくるお下がりの本を読むことにしているわけで、妻が、このことによって、夫婦で思想が偏るのではないか、と危惧していた。
だが、正直あまりその心配はいらないと思っている。妻と僕は底流では繋がってはいるが、思想面は大きく異なる人間だと言っていい。自分と異質な視点を持つ人間だからこそ、その意味で妻の視点を信用しているとも言える。
そして、この前も一万円分の図書カードで、何冊かは買ってきたものはそんなに、気に入らなかったようで、僕に薦めなかった。
最近、妻がハズレばっかりだったわと嘆いたあと、でも久しぶりのアタリっぽい本が届くのを待ってると呟いた。
どんな本?と聞いたら、なんか、サラバとかいう本という、わけのわからない答えが返ってきた。
ある日、マンションの一階のポストに妻宛にAmazonの小包が入っていたので、部屋まで持って帰った。妻に手渡してガサガサと開けると、途端に落胆した表情を見せた。
「下巻が先に届いちゃった」
そう、僕に見せた「サラバ!」というタイトルの本はどうやら上中下の3冊のうちの一冊の下巻だったらしい。
「もう。上巻が来るまで、読み始められないじゃん」
僕は笑った。
そして、小学校6年の時、僕は家にあった村上春樹の「ノルウェイの森」の下巻を先に読み始めたことを思い出した。
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