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1024_格好

年は自分と同じくらいだろうか、かなり気合の入ったモヒカンでパンクファッションを身を包んだ男が前を歩いていた。確かに惚れ惚れするほど、かっこいい。かっこいいが、どうなんだろうと考えてしまう自分がいる。

今、自分があの格好をしたいか、と問われれば残念ながらNOである。だが昔はああいうパンクファッションが、格好いいなあと思っていたのは事実だ。高校の同級生がハードコアパンクバンドを組んでいて、スタッズだらけにした革ジャンに髪の毛をウニのようにツンツンにしていたのを遠目に見ていた。

だが今の自分の格好は全身ノースフェイスかデサントである。コロナ禍の在宅勤務などを経て、働くにも日常を過ごすにおいても、楽で動きやすく実用的な服が一番、という結論に至っている。

思春期とかって、自分も古着とかパンクっぽい格好をしていたし、とかわざと汚らしかったりギラついた格好をしたりして、周りの大人から白い目で見られたりしていたが、それを良しとしていた節がある。

若いけれど、自信もお金もない。そういう時代に、自分を押し通し外部にアイデンティティを主張する手っ取り早い手段は、ファッションだったに違いない。誰に求めているかわからない承認欲求の矛先が表すとおり、若い頃はトレンドを追い求めたり一貫性のないファッションをしていたなと改めて思う。

結局のところ、30代を過ぎてから、自分を表現する手段としてのファッションからは自分は「降りた」形になる。いや、「ふるいにかけられた」という言い方の方が正しいのかもしれない。あの尖ったモヒカン頭の同世代のごとく、誰の目に触れようとも臆せず、自分を主張し貫き通すことができなかったのだ。

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